木梨憲武が音楽に向ける“最後”の覚悟とは? 松本孝弘や横山剣、松下洸平らとのコラボも語る

木梨憲武、音楽に向ける“最後”の覚悟

AI、Crystal Kay、松下洸平らとのコラボ歌唱「このメンツで歌番組にも行きたいね」

木梨憲武(撮影=池村隆司)

――ラストナンバーの「伝えなくちゃ」は、かなりゴスペル風味ですよね。今作のなかではいわゆるソウルミュージックにいちばん近いというか。

木梨:この曲を作ってくれたAIとはずっと仲良しで、彼女が17歳の時から知ってるから、今回曲をお願いしに行ったら「え〜また来た〜」とか言われましたよ(笑)。最初はスローで入って、途中からヘーイ! という感じで行きたくて、そのイメージを伝えて、ゴスペル調の曲を作ってもらいました。で、「メンバー集めはAI、よろしくね」ってお願いして。

――AIさんに丸投げして(笑)。

木梨:「出たー!」とか言われながら(笑)。でも、本当にすごいメンバーが集まってくれて。ケイちゃん(Crystal Kay)は知っていたんだけど、ほとんどの方が初対面で。DOUBLE、福原みほちゃん、松下洸平くんたちが「はじめまして!」なんて順番にスタジオに入ってくるわけですよ。レコーディングが始まると、プロのスゴ技合戦に突入していくんですよね。誰かがブースで歌ってると、それを見ているほかのみんなが「うわー! 出たー!」なんて盛り上がり始めるんだけど、僕は何が「出た」のかがわからない(笑)。

――やってることが一流すぎて、ってことですよね。

木梨:すごいということだけはわかるんだけどね。だから、隣の人にこっそり「ど、どのへんが……?」って聞いたり(笑)。そうやってみんなが高度なことを話してるのを、横で「へえ!」なんて探り探り聞いてるのが面白かった。「このメンツで歌番組にも行きたいね」なんて話もしてました。

――おお! それは楽しみです。

木梨:とんねるずの武道館(11月8日、9日に東京・日本武道館で行われる約29年ぶりのとんねるず単独ライブ)も入っちゃってるし。記念写真だけは撮ったんだけど、あとは何もしてない。

――そうなんですか? もう当日まで1カ月を切ってますが……。(取材は10月中旬に実施)。

木梨:来週あたりからリハーサル始まるんじゃない? 知らないけど(笑)。

木梨憲武(撮影=池村隆司)

――さすがです(笑)。でも、ノリさんのボーカルスタイルは、ゲストで集まった一流シンガーたちに負けず劣らず、独自のカラーをお持ちですよね。

木梨:え、そう? 本当に? 嬉しい! どのへんが?

――いちばん特徴的なのは、やはり発音ですよね。歌詞の言葉通りに発音しないところがあったり――。

木梨:えー、マジで? どこどこ? 直すようにする!

――いや、そこは直さないでほしいんですけど(笑)。たとえば「MNSM (MoonNightStarMagic)」の〈バカなふりして 踊らされていよう〉を「踊らされていびょーう」という感じに歌っていますよね。いわば“ノリダー節”と言いますか。

木梨:ああ! 『仮面ノリダー』の「赤いマフリャーオ」みたいな。それを欲しがるヤツらがいるのよ(笑)。どんな感じで歌ったらいいのかは、レコーディングスタジオに行ってから決めていくから。エンジニアを含めた2、3人で話し合いながら、突発的なアイデアを採用したりもするんですよ。やってて面白いです。

――「この曲はこう歌おう」とイメージしてから臨むのではなく、その場のアドリブ感、ライブ感を大事にしているんですね。

木梨:とんねるずの番組とかでも、ずっとそうしてきたからね。その場で生まれるものがやっぱり面白い。「MNSM」の場合で言ったら、「こういうファンクっぽい曲は久保田くん(久保田利伸)のモノマネから入ったほうがいいのかな?」とかいって録り始めた気がする。前に「OTONA feat. 久保田利伸」で久保田くんに手伝ってもらったことがあるんだけど、あの時のレコーディングで“久保田節”をバーンと出してくれるのを見て「いいなあ、自分の“節”を持ってるのは」と思ったんだよね。「じゃあ俺の“節”って何?」とあらためて考えると、「ビヨーン」って言うくらいしかないわけ。

――(笑)。

木梨:演歌で言ったらコブシとか、R&Bならフェイクの仕方とか、その道の人たちには長年培ってきた“感じ”っていうものがあるじゃない? 「どうやったらその“感じ”が出るんだ?」と思いながらやってましたよ。自分の色を出しながらプロの技を使ってくるから、みんなすごいなって。昔、北島三郎さんにも言われたことあるんだよ。「歌っていうのは、どれだけ多くの人に聴いてもらえるかじゃないんだよ。届くか届かないかなんだよ」って。

――至言ですね。

木梨:北島さんは酒場で流しをやって1曲100円とかで歌ってきた人だからさ、目の前の人に“届ける”ための術を磨いて、あの独自のスタイルを築き上げてきた。北島さんだけじゃなく、山本譲二さんも細川たかしさんも吉幾三さんも、みんなそれぞれ独自の武器を持ってるわけじゃない? 唯一、鳥羽一郎さんだけはこうなんだけどさ(おもむろに立ち上がり、直立不動で鳥羽の顔マネをし始める)。

――めちゃくちゃ面白いんですけど、文字にしづらいです(笑)。

木梨:あははははは! でも、これだけは書いておいて。演歌にはソウルミュージックと同じパワーがあるんですよ。僕、本当はジェームズ・ブラウンと北島さんをマジで会わせたかったの。あのふたりは同じに見える。きっと並んで歌ったら何かが通じ合うんじゃないかなと、本気で思ってたんだよね。

――ああ、なんとなくわかります。生き物として同種の感じがしますよね。

木梨:そうなんですよ! あとは、ペレとハナ肇さんもね。以前ニューヨークでペレとPK対決をした時、向こうから歩いてくる姿を途中までハナ肇さんだと思ってたから(笑)。

木梨憲武(撮影=池村隆司)

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