木梨憲武が音楽に向ける“最後”の覚悟とは? 松本孝弘や横山剣、松下洸平らとのコラボも語る

木梨憲武、音楽に向ける“最後”の覚悟

 木梨憲武がニューアルバム『木梨ソウル』をリリースした。1stアルバム『木梨ファンク ザ・ベスト』を彷彿とさせるソウル、ファンク、HIPHOP、R&B、レゲエなどバラエティに富んだ全10曲を収録。松本孝弘、横山剣(クレイジーケンバンド)、HAN-KUN(湘南乃風)、AI、Crystal Kay、AK-69、林 和希、松下洸平など、作詞曲やフィーチャリングにはオールスターが勢揃いしている。とんねるずとして、役者として、アーティストとして、そしてシンガーとして……いろいろなことにチャレンジし、それぞれの道を突き詰める木梨は、「常にこれが最後というつもり」で日々を過ごしているという。その言葉の真意について、アルバムを巡る物語を聞かせてもらった。(編集部)

“最後のアルバム”としての覚悟「結果が関係ないなら、やりたいことを突き詰めるだけ」

木梨憲武(撮影=池村隆司)

――3作目となるニューアルバム『木梨ソウル』が完成しました。前作『木梨ミュージック コネクション最終章 〜御年60周年記念盤〜』から、約2年4カ月ぶりのリリースということになりますね。

木梨憲武(以下、木梨):僕はミュージシャン一本でやってるわけじゃないんでね。隙間を見つけながらクリエイター一人ひとりに順番にお願いしに行って。そんなふうにして、2年半ぐらいかけて一個一個形にしていった作品です。最後のアルバムとしてね。

――最後のアルバムとして、ですか。

木梨:毎回そう言うようにしてるんです。常にこれが最後というつもりでね。なんでかって言ったら、もうジジイだから! それに、ほかにもいろんなことをしているし、果たしてこの先やりたい音楽が出てくるのか、気持ちが燃えてくるのかも含めて確証はないわけですよ。そうやって先のことも見据えながら、「今後は役者一本で、映画の世界でやっていきます」とか――それは全然思ってないですけど(笑)。でも、先のことはわかんないんだよね。

――なるほど。

木梨:今は展覧会(『木梨アート大サーカス展』)に向けての準備も進めているタイミングで、その取材もやっていたりするから、記事によって言うことが食い違ったりもすると思うんだけど。そっちでは「アート一本でやっていこうと思ってます!」とか言ってるかもしれない(笑)。

――(笑)。ただ、ノリさんは一貫して「これ一本でやっていきます」という生き方を避けてきた人ではありますよね。テレビタレントもやれば音楽もやって、アートもやるし、自転車屋さんもやるし。

木梨:なんでもやらせてもらってきたからね。みんな、なんでもはやらないじゃないですか。やればいいのに!

――「やればいいのに」(笑)。

木梨:毎日違う仕事してるから飽きたことないし、楽しいんですよ。僕の場合は、プロたちが遊んでくれるからこそ成立している部分もあるのでね。今回も音楽のプロたちがミュージシャンだけじゃなく裏方も含めて、プロフェッショナルの仲間たちが一緒に遊んでくれたことで、こうしてアルバムという形になった。あとはどういう結果が望ましいのかっていう話になってくるんだけど、CDが売れればいいのか、配信数が伸びればいいのか……でも、もう最後のアルバムだからね! 結果は関係ないんですよ! 結果が関係ないなら、やりたいことを突き詰めるだけじゃないですか。『木梨ソウル』は、そういうマインドで作ったアルバムです。

――一曲一曲を仲間たちと作り上げていくうえで、アルバムの完成形は当初から頭にありましたか?

木梨:大枠として、「前に『木梨ファンク』(ソロデビューEP『木梨ファンク 〜NORI NORI NO-RI〜』および1stソロアルバム『木梨ファンク ザ・ベスト』)を作ったから、今度はもっと幅を広げて“ソウル”にしちゃおう!」というのはあったかな。「やる側がソウルだと思えばすべてソウルだ!」というのが今回のコンセプトなんです。R&BやHIPHOPが中心のアルバムではあるけど、松本さん(松本孝弘/B'z)が作ってくれた「感情8号線」なんてほとんど演歌だしね。

――たしかにそうですね。

木梨:演歌はソウルだから。僕はもともと演歌や歌謡曲も昔から大好きだから、「絶対にR&BとHIPHOPだけで作ろう!」と決め込まなくてよかったな、と。「感情8号線」は、「松本さんが思う、木梨に似合う感じで作って」ってお願いしたの。そうしたら「こういう演歌みたいな歌を歌い上げてほしい」って、あのメロディとギターを入れてくれて。

木梨憲武(撮影=池村隆司)

――演歌のなかでもブルース歌謡寄りですよね。それでいてイントロや間奏はほぼフュージョンなので、ムード歌謡的でもあるという。

木梨:そこに、たまたま歌番組で会った剣さん(横山剣/クレイジーケンバンド)に作詞をお願いして、僕の地元・祖師谷と剣さんの地元・横浜の中華街を結ぶような歌詞を書いてもらったわけです。さらにそれをグラミー賞を獲ったことのあるチームがミックスしてくれたり、もうトップ中のトップがよってたかって作ってくれた曲なんですよ。

――まさに「プロたちが一緒に遊んでくれた」構図ですね。

木梨:ナオト(・インティライミ)もそうよ。「もしFIFAワールドカップの日本版テーマソングを担当することになったら?」という設定で作ってくれたのが、「ジャイアントキリング」。でも、どの局でもいいからワールドカップ中継に使ってもらおうと思ったら、すでに全部すごく売れている人たちの曲に決まってた(笑)。「だよなあ〜」なんて言いながら、サッカーに限らない応援歌として仕上げていったっていう。

――もともと「ジャイアントキリング」は、いかにもサッカーアンセム的な雰囲気のサンバ系ナンバーでしたよね。アルバムにはジャージークラブのリズムパターンを取り入れたEDMリミックスが収録されています。

木梨:「No Limit」を作ってくれたAK-69も、「No Pain No Gain」のCHEHONも、みんな仲間なんですよ。AK-69は、「人生で最初に買ったCDが『ガラガラヘビがやってくる』だった」って言うんで、「え、そうなの? だったら俺がHIPHOPやってもいいでしょ?」というよくわからない理屈で(笑)。でも、ラップは字数が多すぎてできないから、自分はメロディだけでいいやと思って、「ラップは本業のそっちがやってね」ってお願いして。

木梨憲武 「No Limit feat. AK-69」Music Video

――せっかく一緒にやるなら、AK-69さんのラップは聴きたいですもんね。

木梨:そうそう! CHEHONもそうで、僕はもともとレゲエが好きなんだけど、「No Pain No Gain」みたいなリズムの曲もレゲエと呼ぶとは知らなかったんですよね。

――この曲のビートはダブステップ以降のレゲエって感じですね。

木梨:で、AK-69の時と同じように「字数多いから、俺はメロディだけね!」なんて言って(笑)。そんなふうに若いアニキたちとも遊んでもらって、酒飲んだりして、毎日楽しくてしょうがないですよ。

木梨憲武(撮影=池村隆司)

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