Official髭男dism「Same Blue」レビュー:変拍子を駆使した大胆アレンジで“爽やかさ”を演出するヒゲダン流のギミック

 一方で、矛盾するような思いに引き裂かれる心情を季節と空のメタファーに託した詞から眺めてみると、こうした変拍子を駆使する凝ったアレンジにも必然性があるように感じられる。「Same Blue」は、移り変わる季節のような感情に翻弄されながらも、そんな世界を駆け抜けることのよろこびを歌う曲だ。ぱっとその様子が目に浮かぶようなすごく平易でユーモラスな比喩を通して、身近さと壮大さがぴったりと重なり合う深みのある世界を描き出す。そんな藤原聡のストーリーテリングがこの曲でも活かされている。そして、やりすぎなくらい複雑にリズムを展開させつつ、それでもなお疾走感あふれるアレンジは、そうした複雑なニュアンスに富んだよろこびを体現するかのようだ。

 改めていえば、ヒゲダンの強みは、高い演奏力と歌唱力を存分にいかし、凝った楽曲構成に加えて、転調やバラエティ豊かなサウンドで楽曲のドラマを巧みに演出してきたところにある。「Same Blue」はそうしたヒゲダンの楽曲のなかでも、リズムを使った演出に深く踏み込んだ曲だと言える。いたずらに複雑なことをやってみせるのではなく、一つひとつのギミックが、楽曲の、ひいてはタイアップする作品の世界により豊かな手触りを加えている。それが計算づくなのかどうかはおいておくとしても、実際に届けられる楽曲にはたしかな説得力がある――この説得力がヒゲダンをこれほど引っ張りだこの存在にしているのだろう。

Official髭男dism - Same Blue [Official Video]

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