Official髭男dism「Same Blue」レビュー:変拍子を駆使した大胆アレンジで“爽やかさ”を演出するヒゲダン流のギミック

 今年7月に最新アルバム『Rejoice』をリリースしたばかりのOfficial髭男dismがニューシングル「Same Blue」をデジタルリリースした。このシングルはTVアニメ『アオのハコ』(TBS系)のオープニング主題歌でもある。これまでも数々のアニメ、映画、ドラマ等々にタイアップ楽曲を提供し、作品の魅力をひきたてつつ強力なバンドの個性を放ってきたが、「Same Blue」でもヒゲダンは自分たちの「らしさ」を怯むことなく発揮。リスナーをぐいぐいと物語に引き込んだうえで驚くような仕掛けを盛り込んだアクの強いアレンジで感情を揺さぶる楽曲に仕上がっている。

 一聴してインパクトを残すのは、変拍子を駆使しためまぐるしいアレンジだ。ともすればプログレッシブでこれみよがしなギミックになりかねないほどの大胆さだが、全体の印象はむしろ爽やかだ。しばらく、この変拍子についてちょっと詳しく見ていこう。

 「Same Blue」は、五拍子のギターリフから始まり、イントロからAメロに入ると六拍子に変化。八分音符でリズムを刻む疾走感のあるエイトビートで展開していく。かと思えば、Bメロに入ると拍を刻むスピードはそのままに、リズムパターンやアクセントの位置を置きなおすことで、三連の四拍子へとグルーヴが変化する。ここでは、一定の拍をキープしつつテンポ感を大きく変化させる、いわゆるメトリックモジュレーションが駆使されている。そしてサビでは五拍子を主軸に、頻繁に五拍子と六拍子が交代する怒涛の変拍子が登場。変拍子だと思って律儀にカウントしているとときどき足元をすくわれそうになるけれど、実際には演奏もボーカルもそんな複雑さをまったく感じさせない。

 さて、この曲を聴いてなにより惹きつけられるのは、五拍子がもつ優雅さと勢いが同居する独特のグルーヴだ。イントロから登場するギターリフも、ストリングスも、あるいはドラムのパターンも、八分音符を基準にした場合、3+3+2+2のグルーピングで一小節を分割している。すると、前半三拍はややゆるやかに弾むような印象を与えるのに対して、後半二拍はむしろテンポを上げて駆け出すように感じられる。五拍子と六拍子が頻繁に入れ替わる(Aメロでは一小節だけ五拍子が挟まれたり、あるいはサビでは五拍子を繰り返したあと六拍子が続いたりする)ことよりも、五拍子のなかにふくまれるこの緩急のニュアンスこそがこの曲の肝といえるだろう。大股で歩いたあとに駆け出すような、逆に足踏みしたあと前に進み出すような、解釈はさまざまだろうけれども、そんなちょっといびつで矛盾した運動がこの曲の五拍子にはある。

 一小節のなかに生まれる緩急といえば、少し前に注目されたジャージークラブのリズムパターンも似たような効果を持っている。キックドラムが一小節に5回鳴らされる、クラーベを反転させたようなリズムパターンが鍵となるジャージークラブでは、小節の前半と後半で緩急がうまれて、独特のタメをもつグルーヴが奏でられる。ジャンルとしては似ても似つかないものの、変拍子を取り入れつつも自然とノルことができる「Same Blue」の五拍子は、意外とCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」と通じるところがあるのかもしれない。というのはさすがに言い過ぎだろうが、心も体も踊らせる、うねるように緩急がついたリズムに没頭していると、そんな連想もわいてくる。

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