ハンブレッダーズは“ロックバンド”として青春を歌い続ける 結成15周年で初の日本武道館ワンマン
「スクールカーストの最底辺から青春を歌いに来ました、ハンブレッダーズです。日の丸背負って、日本武道館にギター鳴らしに来ました!」
結成15周年を迎えるハンブレッダーズが、初の日本武道館公演『ハンブレッダーズ ワンマンライブ 放課後Bタイム ~15th Special~』を開催した。ハンブレッダーズは、ムツムロ アキラ(Vo/Gt)、木島(Dr)が高校1年生の頃、文化祭に出演するために大阪で結成されたバンド。3月にライブ(『ハンブレッダーズ ワンマンライブ 放課後Jタイム ~15th Special~』)を行った大阪城ホールのある大阪は、いわばハンブレッダーズという人生の始まりの地だった。対して日本武道館のある東京は、メンバー揃って上京して以降、バンドの拠点になっている地。酸いも甘いも嚙み分けてバンド人生を歩む自分たちと同じく、日々生活を営み、音楽を拠り所に戦っているリスナーと歌い、笑い、未来を描くライブとなった。
開場中には、『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)のとーやま校長こと遠山大輔(グランジ) による前説的な影アナが流れるサプライズも。ラジオやテレビ番組での共演を通じて彼らの虜になってしまったという遠山によるハンブレッダーズ愛溢れるメッセージで会場が温められると、いよいよメンバーたちがステージに登場。1曲目は「DAY DREAM BEAT」だ。メンバーのいる舞台には赤い緞帳が吊られ、床面は木目調になっており、学校の体育館、文化祭のステージを彷彿とさせた。歪んだ音色で、泣きのフレーズを奏でるギター。上物が主役なんて誰が決めた? と言わんばかりに躍り出るベース。疾走感をたたえつつも、芯を確実に捉えるドラム。こういう音にどうしたって胸が高鳴るのは、あの頃からずっと変わらない。変わったのは、武道館が満杯になるほどのオーディエンスが目の前にいるということだ。〈ひとり 登下校中 ヘッドフォンの中は宇宙/唇だけで歌う 自分の歌だとハッキリわかったんだ〉というフレーズに「これは私の歌だ」と思った人たちが、今、ひとところに集まり、唇だけではなく喉も震わせて、バンドとともに大きな声で歌っている。シンガロングに対し、ムツムロが「ありがとう!」と伝えると、メンバーも笑顔で思いっきりコーラス。喜びが溢れる幕開けとなった。
爆音のバンドサウンドに負けじと炎がバンバン上がる中での「ギター」。でらし(Ba/Cho)のスラップをフィーチャーした曲間セッション。ukicaster(Gt)が“ド派手なエレキギター”を炸裂させる「ワールドイズマイン」など走り出しから熱い場面の連続。さらに、廃盤CDに収録されている初期曲「席替え」、リリース時のツアーでも披露されなかった「AI LOVE YOU」とレア曲も披露され、客席にはざわめきや歓声が広がった。
「見開きページ」でのメンバーを捉えた映像は、ページをめくるようにカットが切り替わる編集になっている。バンドに憧れ、音楽に夢中になったかつての少年たちが、ロックの殿堂・日本武道館のステージに立っているなんて、まるで少年漫画みたいだ。そう思った人も多かったはずだ。これまでのバンド人生についてムツムロは「楽しくないと思ったことはなかったです」と言っていたが、楽しい気持ちを持続させるのは簡単なことではない。大人になるほど考えることが増えたり、物事が複雑になったりするもので、10代の頃の自分のままではいられなくなる瞬間だって出てくるはずだ。それなのに、ハンブレッダーズの音楽が純粋性を失わないのはなぜか。じゃれ合うように楽しく音楽を鳴らす感覚と、「大切な場所を守るために、真面目に」という意識、両方を持ちながらバンド活動を重ねてきたからではないだろうか。新曲「フィードバックを鳴らして」→木島のドラムソロ→「弱者の為の騒音を」と展開した中盤セクションは、演奏前の「じゃ、後半~」という挨拶とは裏腹にストイック。両輪を回して歴史を重ねてきた、バンドの生き様がリアルに感じられた。
そして、16曲目には「東京」。ムツムロの「明日も学校やったり仕事やったりある人が多いと思うし、遠征してくれた人もいると思います。無茶して来てくれてありがとうございます」という言葉からはいち生活者としての目線が、続く「曲だけじゃなくて、ハンブレッダーズという人生を見せて、共感してもらえたり、“これは違うな”と思ってもらえたりしたら最高です」という言葉からはバンドマンとしての目線が感じられた。そんなMCを経ての演奏はいつになく温かく、観客もぐっと聴き入っている。バンドが人生を賭けてアウトプットした楽曲と、そこに何かを感じて集まったリスナー。両者が相対して、改めて音楽が紡がれるライブという場所は、ある意味、全ての楽曲がラブソングに変わる場所と言えるかもしれない。この曲も、そして〈ベイビー ベイビー 思い出してくれ/こんなに愛してるってこと/君が涙を流さなきゃダメなんてクソ食らえだ〉と歌う「CRYING BABY」も、明確に、リスナーに宛てたラブソングとして響いていた。ロックの行き着く先はやはりラブ&ピースだということだろう。