小田和奏が新作に込めたメッセージ 音楽を続けてきた理由、「成功と失敗で判別しない」あり方を語る

小田和奏、成功と失敗で判別しないあり方

Codaとしての活動は“特殊ビザ”? これまでの音楽キャリアと歩みを語る

――表現したいものによってサウンドやスタイルを自在に選択できるようになったのが、現代ですよね。

小田:そうですね。ギター弾き語りの延長上ってことだけではなくて、色んな曲を書くし、色んなシーンで音楽に関わってたりするんだけど、自分の作品が一番オーセンティックというか、そういうスタイルになってるのかなって。ライブが好きだし、今も弾き語りでツアーを回ってる道中ですけど、どういう音で作ったとしても、自分で表現するというところにちゃんと着地できるような親和性が曲にあればいいのかなって。

――そういう意味でソロでは自分に近い音楽を常にされていると思うんですけど、一方で、和奏くんの音楽キャリアの中でCodaとしての活動も非常に大きなものになっていると思います。海外公演でもご自身の歌をファンに求められていることを体感されたと思いますが、どんな経験でしたか。

小田:今年の2月にチリに行って、この秋にもまたエクアドル、チリ、スペインに行くんです。中には単独公演もあって、ありがたい話だなと思います。海外での日本の文化やアニメのファンの方たちがすごく熱狂的で「よくぞ来てくれた!」って感じで歓迎してくれます。関わらせてもらっている作品自体がすごく強いものだということ、声を聴いて選んでもらったことは光栄ですし、ラッキーだなっていうところに尽きるんですけどね。どうやったらチリの方たちが喜んでくれるかなと考えて、僕が歌ってない『ジョジョ』シリーズのオープニング曲とかもセルフカバーで歌わせてもらったんですけど。イントロが流れた瞬間、「え、それやるの!?」ってなった後に「ウワーッ!」と歓声が起きて、みんな嬉しそうでしたね。

小田和奏(撮影=林将平)

ーーやっぱり海外ではアニメソングの人気がすごいんですね。

小田:そうですね。僕は幸運なことにバンド時代に『NARUTO-ナルト-』のエンディング曲を1曲やらせてもらっていて。この「失くした言葉」という曲も、どの国で歌っても喜ばれるし、知ってくれてるんだなって。ライブの後で「あれは君の曲だったんだね」と言われたりして、嬉しいですね。アニメをあまり観ない人とかだとわかりにくいと思うんですけど、やっぱり日本のカルチャーとしてのアニメって海外ではすごく大きいもので。それは、僕らが思うイギリスやアメリカのロックミュージックやヒップホップに対するものと同じような目線で海外の方たちは日本のアニメを見つめてる気がするんですね。そこに付随してくる音楽は、言葉がわからなくても口ずさめたりするし、そういう意味でCodaとしての活動は特殊ビザを持ってるようなものなので、その音楽の国境の越え方は僕にとってありがたいものです。

――12月にスペイン・バルセロナで行われる『MANGA BARCELONA』にも出演されるということですが。

小田:はい、これは漫画をメインにしたバルセロナで4日間開催される、動員約17万人規模のイベントだそうで。浦沢直樹さんら漫画家の先生も行かれるみたいです。こういう日本のコンベンションって色んな国で開催されているので、せっかくだから全大陸行きたいなと思っています。僕はCodaという役割を与えられたと思っているし、その作品のファンとライブやイベントでコミュニケーションを取ることで、その作品が熱を帯びたまま愛され続けるんだと思います。なので僕はその音楽部門ってことで、いつどこから呼ばれても行けるような姿勢で常にいたいなと。実は飛行機が苦手なんですけど(笑)、現地の熱気を体験すると何度でも行こうって思えます。海外で街を歩いてて「ヘイ、Coda!」って声かけられますから。

――和奏くんの音楽キャリアは、大学時代から組んでいたバンドでメジャーデビューして解散後に、ソロとしてどんな歩みをしていくかというひとつの理想形でもあると思います。バンド解散後から今までの歩みの中で大切にしてきたことはどんなことですか。

小田:「こうなればいいな」っていうイメージや理想は常に持ちながら活動してきたつもりだけど、10年前にバンドが解散して、10年後の自分を想像してたものと今が同じかというと、全然違っていて。上手くいったものもいかなかったものもやっぱりある。ただ、バンドが解散したときに漠然と決めていたのは、“音楽を止めない”、それだけで。それは意地のようなものでもあったし、音楽を手放したら僕に何が残るんだろうっていう恐怖もあった。でも、これは最近思うんだけど、自分がやってることを成功と失敗で判別しないほうがいいなって。意外と上手くいかなかったことのほうが、今までの人生を振り返ったときに肥やしになってることが多い気がするんですよね。そこから何かに気づいて新しいアイデアが出たり、試行錯誤が始まってきたんだなと思うから。成功か失敗かで判断しないようにすれば、ずっとブレずに自分が今どうありたいか、というところに向かって行けるんじゃないかと思っています。

――自分がやってきたことに成功も失敗もない、と。

小田:そう。僕、スポーツ選手やミュージシャンが「悔しいから次でリベンジします」って言ったりする時の「リベンジ」って言葉が苦手なんだよね。恨みつらみの話じゃないんだから、「リトライ」とかでいいじゃんって。音楽にしても、僕はずっとトライして、挑戦し続けていこうと思っていて。それは壮大なことじゃなくてもよくて、今日はこれをやろうとか、何か小さなことをひとつずつでいいんじゃないかなと思っています。人は失敗を怖がってだんだんトライしなくなることもあると思うけど、でも意外と失敗したことって笑い話になるか覚えてないかのどっちかなんですよ。周りを気にしてるのはそれに執着してる自分だけなんだから、とにかく動き続けることが大事。それが上手くいったらいいよね、上手くいかなかったらその次だよねって。結果的にそうやって動き続けることが、一番上手くいく確率が上がるんじゃないかなと思います。

小田和奏『back in the forest』ジャケット
小田和奏『back in the forest』

■リリース情報
小田和奏
『back in the forest』
2024年9月4日(日)リリース

品番:SPMT-2003
価格:¥3,000(tax in.)
※ライブ会場・Official WEB SHOP・各配信サイト

<収録曲>
はじまりは月燈の下で
Get movin’
evergreen
ハヤテ
turn to trip
花びらが揺れる
コーディの苦悩は今日も続くⅡ
I’m music
口癖
さよならドリーマー
星のない夜に

■ライブ情報
『小田和奏 Tour 2024-2025 “back in the forest”』

2024年11月15日(金)埼玉・みずほ台Acoustic Houseおとなり
2024年11月23日(土)東京・中目黒Cafe & Live spot FJ’s
2024年11月24日(日)盛岡the five morioka
2024年11月27日(水)名古屋sunset BLUE
2024年11月28日(木)大阪・心斎橋夜を灯して
2024年11月29日(金)広島・福山grand soul cafe Guns’
2024年12月1日(日)島根・松江AZTiC canova
2024年12月20日(金)新潟GOLDEN PIGS YELLOW STAGE
2024年12月21日(土)秋田カフェ・ブルージュ
2024年12月22日(日)宮城・仙台SENDAI KOFFEE CO.

2025年1月18日(土)渋谷7th FLOOR ツアーファイナル・バンドセットワンマン
小田和奏 -Kazusou Oda Alternative Quartet-

■関連リンク
公式サイト:https://kazusouoda.com/
公式X:https://x.com/kazusou_oda

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