pachaeの根底にある“変態的”なキャッチーさ 『妻、小学生になる。』主題歌にも表れるバンドの核

pachae、根底にある“変態的”なキャッチーさ

 「pachaeっぽさとは何か?」と聞いたところ、コンポーザーの音山大亮(Vo&Gt)からは「変態」と返ってきた。そう、耳を惹きつけるアイデアを駆使して作られる、変態的かつ中毒性のあるポップソングを鳴らすバンドである。それは秘伝のレシピで作られる創作料理のように、一風変わっていながらも、不思議と旨味のある音がスッと入ってくるような音楽なのだ。

pachae / アイノリユニオン【MUSIC VIDEO】

 大阪で生まれたスリーピース・pachaeは、2020年にsumikaやマカロニえんぴつらが所属するmurffin discsのオーディションで準グランプリを獲得。上々のスタートを切った彼らは昨年までに2枚のEP(『GIM』『CAN』)をリリースし、2024年4月には「チョウチンカップル」でメジャーデビュー。着実なステップアップを踏みながら、そのファン層をじわじわと広げてきた。

 10月7日にリリースされる「アイノリユニオン」は、pachaeの勢いを加速させるシングルになるだろう。アニメ『妻、小学生になる。』の主題歌として書き下ろされたこの曲は、彼ららしいテクニカルな演奏と、転調の応酬で進んでいく目まぐるしい展開を持ちながら、しかし何よりもこのバンドにしては珍しい大きな愛を歌うラブソングになっている。メンバーのルーツや結成の経緯から、新曲「アイノリユニオン」について語ってもらった。

(楽曲は)研磨されて出来上がった岩

pachaeの画像1

ーーそれぞれ人生で最も感銘を受けた音楽と、楽器を始めた経緯を教えてください。

バンバ(Gt):移転しちゃって今はもうないんですけど、大阪の十三にFANDANGOというライブハウスがあって、そこでLOSTAGEが7日間連続でライブをしたことがあるんです。1日目から6日目は対バンをして、7日目にワンマンをやったんですけど、そのワンマンライブが今までで見た中で一番いいライブでした。熱量が圧倒的に高くて、お客さんのノリもエグいし、暴動みたいになりそうなレベルでブチ上がってて。あの熱量を超えるライブはいまだにないですね。

ーーギターはいつ頃から始めたんですか?

バンバ:中学2年ぐらいにギターを買ったけど、難しくてやめて。改めて始めたのは中3の10月ぐらいかな。野球部に入っていたんですけど、引退して受験勉強しないとあかんくなって。勉強って嫌やと思っていたら、ちょうどいいとこにギターあるわと思って、年末ぐらいから触るようになりました。

ーーギタリストとして影響を受けた人はいますか?

バンバ:やっぱジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)とか、言葉を選ばずに言うとおっさん臭いのが好きですね。でも、トム・モレロも好きです。

ーーさなえさんはどうですか?

さなえ(Key):1曲選ぶならEarth, Wind & Fireの「September」です。家にレコードが沢山あって、普段から音楽が流れている環境だったんですけど、両親の影響で1970年代、80年代の曲を好きになって。その中でも一番耳に残ったのが「September」でした。モーリス・ホワイトの透き通った感じの高音ボイスに惹かれます。

ーー鍵盤はずっとやっているんですか?

さなえ:3、4歳ぐらいからヤマハの教室に通って、ピアノとエレクトーンを同時期ぐらいに始めました。小学校の時は合唱でみんなが歌う時にピアノを弾く感じで、それが中学ぐらいまでありましたね。それからエレクトーンのコンクールにいっぱい出るようになって、大学でもエレクトーンを続け、その後ヤマハエレクトーンのデモンストレーターになりました。

ーー音山さんが感銘を受けた音楽はなんですか?

音山大亮(以下、音山):一番最初に買ったCDがテツandトモの「なんでだろう」で、それが幼稚園の年長の頃でした。なので感銘を受けたと感じる年齢やったかわかんないですけど、歌として認識した最初の曲やし、初めて持ったギターもアコギやったから、何かしら影響を受けていると思います。

ーーなるほど。

音山:本気で音楽を目指そうと思ったんは、ミスチル(Mr.Children)の『SENSE』というアルバムに入っている「fanfare」を聴いた時で、すごいパワーを感じましたね。あれを聴いて”人前に立って歌うのが楽しそうやな”って思ったというか、結構救われた感じがありました。

ーー救われる?

音山:それまでは人生がおもんなかったんでしょうね。その頃はMr.Childrenを崇拝していたんですけど、「fanfare」を聴いて自分もそっち側に立つって思い、それからはいい意味で崇拝はきっぱりやめました。いつか追いつく、ぐらいの気持ちで高校ではいろんな音楽を聴いて。外で初めてオリジナル曲をやったのは高3ぐらい、スリーピースのバンドを組んでのことでした。

音山大亮
音山大亮

ーーどういう経緯でpachaeの3人は集まったんですか?

音山:俺が公園で弾き語りしている時に、結成当時のドラムが話しかけてきて。そいつがドラムをやっているのは知らなかったですけど、後からドラムやってることを知って聴いてみたら圧倒的に上手やったんです。それからふたりでどんなバンドにするかを1年半ぐらい色々やってみて、そろそろ集めようってことでお互いの後輩や、知り合いを呼ぶ形で当時のベースと今のふたりが集まりました。

バンバ:僕はそのドラムの人の高校の後輩です。

さなえ:私はイベントで対バンしたことがあって。

音山:それで知り合って、俺から誘いました。

ーー作詞作曲は音山さんがやられているようですけど、ふたりに渡す時点でどのくらいできているんですか?

音山:渡す時には全てが完成してます。pachaeの曲は難しすぎてあんまりメンバーが広げられるアレンジの幅がないというか、結構カチカチに決まっているんですよね。

ーーなるほど。

音山:ただ、最近のレコーディングではサポートベーシストとドラマーを素晴らしいレジェンドの方たちに頼んでいるので、デモで投げてみたりもしています。今後メンバーにもセクションによっては投げてみて、みんなの個性を入れていくみたいな曲が増えていくのかな、とも思うんですけど、一旦はガチガチに完全完成品で作っていますね。

ーーおふたりは音山さんの作る楽曲の、どんなところに魅力を感じますか。

バンバ:ギターはむずい......。でもね、やっぱり「むずい」って「楽しい」ので。そこは絶対に魅力ですよ。みんなにも練習して弾いてみてほしいな。

音山:マジでしてほしい。

ーーバンバさんが一番これ無理やろと思った曲は?

バンバ:一番フレーズを覚えなきゃいけないというか、展開に時間がかかったのは「愛は並ぶ」かなあ。あれはマジでむずいです。それか「非友達」。この辺がツートップな気がする。

ーーご自身はテクニカルなフレーズが好きなんですか?

バンバ:どうなんだろう。僕はエモーショナルなものを大事にしてるかもしれないです。

ーー音山さんはバンバさんが弾くことを想定して難しいフレーズを作っているのか、それとも自分の中から出てくるフレーズが自然とテクニカルなものになってくるのか、どっちだと思いますか?

音山:みんなが弾くことを考えてる時もありますけど、曲が必要としてるものがそれだった場合は「弾けるようになってね」という感じですね。だからもう仕方なくて、僕じゃないんです。自然に研磨されて出来上がった岩、みたいな。その岩に文句言えないじゃないですか。

ーーそうですね(笑)。楽曲は岩だと。

音山:そう、これらは岩です。

バンバ:怖い。尖りすぎてる(笑)。

音山:このインタビューのタイトルは、「pachae、その全貌は...楽曲は岩。そう語る音山率いるーー」みたいにしといてください。

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