bokula.が巻き起こした「わや」な熱狂 最高の一体感とロックバンドのロマンが詰まったO-EASTワンマン

bokula.が巻き起こした「わや」な熱狂

 「すげえ憧れてた場所なんですよ。ここに立つのをずっと夢に見てた。本当に夢に出てきたし」。9月29日、バンド史上最大規模のワンマンライブの舞台となったSpotify O-EASTで、えい(Vo/Gt)の叫んだ言葉には実直で熱い思いが溢れかえっていた。メジャー初EP『涙 滲むのは心の本音です.』リリースツアーとして5月から6月にかけて開催された『僕らで時代を作ります。ワンマンツアー ~“じゃけぇ”ってすぐ言う編~』の追加公演として設定されたこの日のライブ『僕らで時代を作ります。 ~これ“わや“じゃん~』。「わや」というのはbokula.の地元である広島の方言で「めちゃくちゃ」という意味だが、まさに「わや」な熱狂を生み出しながら、同時に彼らはいつの間にかでっかくなったその手で、フロアを埋め尽くしたオーディエンスを抱きしめてみせた。『僕らで時代を作ります。』というツアータイトルが決してブラフではないと確信させてくれるような、最高の一体感とロックバンドのロマンがそこにはあった。

 いつも通りのSE(ELLEGARDENの「The Autumn Song」だ)を背に登場したえい、かじ(Gt)、さとぴー(Ba)、ふじいしゅんすけ(Dr)の4人。そのSEを切り裂くようにジャーンとギターをかき鳴らし、えいが「2001」を歌い始める。それを追うようにかじが全身でリフを弾き、続いてふじいの踏み鳴らすバスドラムに合わせてフロアから嵐のような手拍子が巻き起こった。のっけから全力で歌を届けながら、歌だけでは足りないとばかりにえいは何やら叫んでいる。まるでクライマックスのような勢いが、会場の空気をどんどん熱くする。息つく間もなくえいとさとぴーのコンビネーションから「不完ロマンス」、さらにダンスビートが鳴り響く「足りない二人」へ。どの曲も前のめりで、一瞬たりとも無駄にできないとでもいうような迫力に満ちている。かじとえいがリレーするようにプレイするギターソロで歓声を浴び、シンガロングを受け取ると、えいは「よくできました、全員優勝です!」と笑顔を見せた。

bokula.ライブ写真
えい
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かじ
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さとぴー
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ふじいしゅんすけ

 そして「今日は誰も悲しまないような、不幸にならないような1日を作りに来ました」と堂々宣言すると、その後も矢継ぎ早に楽曲を繰り出していくbokula.。ここで披露された「涙ばっかのヒロインさん」が個人的には圧巻だった。音源で聴いたときもツアー本編ファイナルのリキッドルームで観たときももっとポップさが際立っていた感じがするこの曲が、そこからさらに生まれ変わったように力強く、ロックバンド然とした佇まいで響いている。そんな出音の変化に、わずか数カ月でのバンドの進化をまざまざと見せつけられる思いがする。もちろんその変化はオーディエンスにも届いているようで、ぎゅうぎゅうのフロアからはこれまたリキッドルームのときとはレベルの違う熱が伝わってくる。ステージとフロア、両方がお互いを高め合うようにして、O-EASTのボルテージは早くも最高潮を迎えたのだった。

bokula.ライブ写真

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 その後も「溢れる、溢れる」「ブルースカイ」と立て続けに楽曲を投下すると、彼らのライブに欠かせない「満月じゃん。」へ。この曲でフロアが爆発するのはいつものことだが、この日は輪をかけてすごかった。どのくらいすごかったかというと、一度曲を始めたところで、フロアの過熱ぶりにいったんストップするぐらいだ。「怪我してない? フロア沸かせすぎちゃったね、ごめん!」とえいが声をかけてもう一度スタートすると、途端にクラウドサーファーが続出。大合唱も巻き起こり、ライブハウスらしい絶景がそこに生み出されていった。曲を終えて改めて「不快な思いしてないですか?」とフロアに問いかけるえい。そうやってフロアに注がれる優しい眼差しも、彼の、そしてこのバンドの強みだ。

bokula.ライブ写真

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 中盤、「大事な曲」と改めて伝えながら届けた「最愛のゆくえ.」、そしてえいにスポットライトが当たるなか始まった「ルーツ&ワープ」……えいの内心が見え隠れするような曲を続けると、かじによるMC(「遊びに来てくれてありがとうございます!」とだけ言ってあとはメンバーに丸投げしていたが)からの「夏の迷惑」ではさとぴーがフロアにダイブ。えいがハンドマイクで歌う「怪火」を経て「ほんとに俺がダメそうになった時に自分の心の本音の奥の奥の奥の方からできた曲です」という言葉とともに歌われた「若者が全て.」ではえいのすべてを曝け出すような歌に拍手が送られ、「いつ失ってもいいように.」ではかじもさとぴーもふじいも全身全霊のプレイで彼を支える。内心に潜っていくような側面と、それをバンドサウンドに乗せてぶっ放す外向きの矢印。bokula.というバンドが持っている両面を曲ごとにフルスロットルで表現しながら、ライブはいつの間にか終盤に突入していった。

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