夢限大みゅーたいぷ 仲町あられ&千石ユノ×PHYZ 座談会 生身で臨んだ初ワンマン、それぞれが掴んだ次のステップへの兆し

ゆめみた×PHYZ、1stワンマンの手応え

 『バンドリ!』発の5人組バーチャルガールズバンド 夢限大みゅーたいぷが、8月24日に1st LIVE『めたもるふぉーぜ』を開催。同ライブでは普段Live2Dモデルを通して配信活動をしているメンバーが初めて生身の姿でファンの前に姿を現し、堀江晶太や白神真志朗らが所属するPHYZによる楽曲を直接披露する特別な公演だった。

 リアルサウンドでは、2024年2月にデビューから間もないメンバーとPHYZメンバーの座談会を実施。そこから約半年、楽曲リリースやワンマンライブといった経験を積み重ねる中で両者の関係性はより一層に強固なものになったことが窺える。

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堀江晶太や白神真志朗らによるクリエイターチーム PHYZ(フィズ)と、同チームがサウンドプロデュースする夢限大みゅーたいぷメンバ…

 本インタビューでは、前回と同じく仲町あられ、千石ユノ、堀江晶太、白神真志朗、Sekimenの5名に集まってもらい、1stライブを経た夢限大みゅーたいぷの現在地について語ってもらった。着実にミュージシャンシップが生まれてきているメンバーの成長、それを支えるPHYZの頼もしさを感じてもらいたい(編集部/インタビューは8月下旬に実施)。

「ステージの上だとさすがにみんなハイだった」(千石)

千石ユノ、仲町あられ
千石ユノ、仲町あられ

ーーまずは1st LIVE(『めたもるふぉーぜ』)を終えた今の所感を、夢限大みゅーたいぷ(以下、ゆめみた)のお二人に聞きたいです。やり切ったという気持ちがあるのか、あるいはさらなる課題が見えたのか。

仲町あられ(以下、仲町):どちらもですね。お客さんの前でライブすること自体が初めてだったので、「こんな感じなんだ、すごい!」と感じた一方で、「まだまだこういうことができたよね」と思いました。演奏面もそうだし、パフォーマンス面もそうで。でも、精神面はみんな結構……。

千石ユノ(以下、千石):落ち着いていたよね。それにライブに向けての練習期間が1年くらいあったので、終わった後に一区切りして気が抜けてしまう心配もあったんですけど、みんな1st LIVEもひとつの過程として捉えて、これから先のことも考えながら活動していたので、それは良かったなと思います。

仲町:本当の意味で『スタートライン』(ゆめみたの1st Digital ミニAlbumのタイトル)だったよね。でも、演奏中はハイでした(笑)。

千石:いざステージの上だとさすがにみんなハイだったよね(笑)。

ーー普段はネットでの配信をメインに活動している皆さんが、ファンの前に素顔で登場すること自体が初めてだったわけですが、それはいかがでしたか?

仲町:直前になってすごく緊張しました。不安はもともとあったんですけど、いろんな理由をつけて「でも大丈夫」って納得していたのに、入場曲が始まった途端にぞれが全部飛んでいって(笑)。ライブが始まる20~30分前はケロッとしていたんですけど、不安で泣きそうになっちゃった。

千石:あたしはトップバッターでステージに上がったので、「緊張するかな?」と思っていたんですけど、全然そんなことはなくて。最初はあたしたちの顔がはっきりと見えないように、ステージの後ろから強い光が当たっていたので、逆にお客さんの顔がめっちゃはっきり見えるんですよ。だから頭の中では、いつも配信のコメント欄で見ている(ファンの)名前と顔を一致させる作業をしていて。すごく冷静に見ていました。

仲町:ぼくは最後に登場したから、余計に緊張したのかも。でも、ステージに出てみんな(ファン)の顔を見たら安心しました。ライブ中は初めてレスポンスが返ってきたので、高揚感はあったよね?

千石:うん。思っていたよりも圧がしっかりと返ってくるというか、こっちが10のエネルギーを送ったら100返ってきたみたいな感じで。だから最初は気おされそうになりましたけど、練習でやってきたことはちゃんとできたと思います。やっぱり練習は大事だなって感じました。

白神真志朗(以下、白神):間違いない。

堀江晶太(以下、堀江):1st LIVEの前に一度、10~20人程度のスタッフたちの前でスタジオライブをやった経験も大きかったんだろうね。あれはあれで、別に見ている人が盛り上がるわけじゃないから、独特の緊張感があったと思うけど。

仲町:そうですね。あのときのほうが緊張しました(笑)。

ーーPHYZチームの皆さんが、ゆめみたの1st LIVEをご覧になった感想もお聞かせください。

Sekimen:個人的には、レコーディングしている姿をずっと見てきたので、1曲目からアーティストとしてお客さんに対してしっかりアプローチしているのを見て感慨深かったです。そのライブを届けようとする気持ちの強さの表れがコール&レスポンスの多さだったと思うのですが、お客さんもすごく盛り上がっていて。それと何より、あられさんの生ボーカルで「コハク」を聴くことができたのが嬉しかったですね。部分ごとに録るレコーディングとはまた違う、ライブならではの熱い瞬間、特にラストの伸びのあるロングトーンにはグッときて、いちファンの気持ちで見ていました。ゆめみた全員でそういうステージを作り上げていたことに、この1年の成果を感じて、本当に良いライブでした。

白神:「コハク」の歌は抜群に良かったよね。歌詞を自分で書いたということ、ボーカリストとしての喉の使い方を把握したうえで、自分が歌いたいことを歌ったということを含めて、歌が刺さってくる感じがして。それとバンドの演奏としてのトータル感としては「ビッグマウス」がずば抜けて良かった。面白かったのは、この曲のときだけギターの音量がバカデカかったんですよ。それはPAの問題というよりも、ギターの2人(宮永ののか、峰月律)が自信を持って弾いていたことの表れなんだろうなと思って。自信のある演奏は手元の音量が変わるので、音がデカくなるんですよね。

堀江:なるなる。

白神:トータルではその2曲が印象に残りましたね。今回の1st LIVEは、もともと素人だった彼女たちが1年頑張って立った初ライブだから、お客さん側はある種の保護者目線で見守っていた部分があったと思うんですね。でも、その2曲はそこから逸脱していたというか、客が求めているものを演者がしっかり提供する、需要と供給がマッチした空間が見えたので、これが全部の曲でそうなればものすごく良くなるんだろうなと。

 あとは彼女たちが衣装を着ているのを初めて見たのも大きかった。僕は普段、ゆめみたの楽曲の歌詞を書かせてもらっているなかで、お客さんと彼女たちの距離感や関係性を結構気にするんですよ。ただ、本人たちの配信を観ても、言葉や文字の情報は掴めるけど、(主にLive2Dモデルで配信しているので)実体や表情まではいまひとつ掴みきれないんですよね。でも、今回、衣装を着てステージに立っている姿と、それに対するファンの反応を見て、初めてファンと本人たちの関係性が明確に見えた気がして。ライブの前半はその距離感を見るのがおもしろくて、後半はさっき話した2曲を含めてグッとくる曲がどんどん出てくるなかで音楽に入っていく流れを感じました。

堀江:自分はその日、別件のライブがあったので、定点で撮影した映像を観たうえでの感想を話します。自分は、ライブには2種類のエネルギーがあると思っていて。ひとつは、それまで積み重ねてきたことを全うすることによる感動。それは練習やアーティストとして進んできた道のりによってもたらされるエネルギーで、それは彼女たちのライブでもしっかりと感じることができました。もうひとつは、それまでやれなかったことが、なぜかステージ上でできてしまうエネルギー。それも下地をきちんとやってきたからこそ生まれるものなのですが、ライブが進んでいくにつれて、そういうことが起こっている瞬間をちらほら感じることができて。その意味で伸びしろを見つけられるライブだったと思います。

仲町:ぼくもそれを感じました! 言葉にするのは難しいんですけど、自分が自分じゃないような瞬間、体が先に動くみたいなときが何回かあって。それが最後の曲、自分が作詞を担当させていただいた「コハク」の最後のロングトーンにも表れたし、なんか体が軽く感じました。それこそ「めたもるふぉーぜしたかも!」と思って(笑)。

堀江:(千石に向けて)あのラストの急なロングトーンについていくの、大変だったでしょ? 下ハモを頑張って歌っているのが印象に残っていて。

仲町:そう、あそこは伸ばす予定ではなかったから。ごめんね。

千石:でも、それも自然に出てきたもので。あたしはコーラスを担当するにあたって、あられの歌がいちばん良く聴こえるコーラスがしたいと思って、練習でもずっとあられの一挙手一投足を見ながら歌うようにしていたので、本番のときも「あっ、これは伸びる……!」と思って。

仲町:思ったんだ! でもぼくは、その瞬間、無意識でやってたから思ってなかった(笑)。

千石:さっき「ハイになった」という話がありましたけど、あられがハイになる瞬間は、後ろからでも見ているとわかるんですよね。だから「コハク」のときも、「いつもと様子が違う」とすごく思って。やっぱり自分で作詞をしたぶん感情が乗ると思うし、歌う前のMCで作詞について話したこともあって、お客さんも歌詞を聴く姿勢になっていたことを感じたので、その共鳴であられの声が伸びることは何となく予測がついて。

堀江:アシストしているとわかるよね、そういう感じ。自分もバンド(PENGUIN RESEARCH)でコーラスを担当することがあるけど、あれはチキンレースっぽいところがあって(笑)。息が辛くなってもメインボーカルに追従していく、そのバディ感が良かったなと思いましたね。これはバンドだなっていう良い瞬間でした。

千石:あたしも「これからやっていけそうだな」と改めて感じた瞬間だったかもしれないです。生でやる意味もそうだし、「誰よりも後ろからあられを見てきたからこそできたんだぞ!」という自信にもなって。

仲町:ぼくも「ゆめみた、おもしろくなりそうだな」っていちばん思ったトピックだったかも。ライブというのはお客さんと自分たちのコミュニケーションだと思っていたのが、メンバー感でもそれがリアルタイムで発生することが劇的にわかった瞬間だったので。

白神:客席もあのときがいちばん歓声が大きかったと思う。(仲町の)歌声が伸びていくと、手前の方から自然とどよめきが後ろに伝染していく感じがあって。あれはライブだったね。

仲町:そうだったんだ。ハイになっちゃって全然覚えていない(笑)。

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