夢限大みゅーたいぷ、七海うらら、廻花、SZNO……アバターとリアル両軸の展開も増加、バーチャルアーティストの新潮流

SZNOら次元を超えるアーティスト

 2020年代以降、ミュージシャン/アーティストにとって生身の身体でない二次元の姿も、活動形態のひとつとして広く普及している。三次元では到底実現不可能な姿形でも時に活躍できる、便利かつ自由度の高いバーチャルな外見。一方で、彼ら彼女らの“中の人”と呼ばれる三次元な側面を忌避する風潮も、シーンでは半ば常識として長年広まり続けてきた。

 しかし近年は元々生身の姿で活躍する人や、すでに素顔が知られる人々が二次元の姿を“受肉”し、新たな活動を始めるケースも増えている。そんな選択の余地が生まれたことでバーチャルな姿を選ぶ人々の中にも、その活動方針には明確な多様性が見られ始めた。

 現在その最先端と呼べるのが、バーチャルアーティストとして活躍しつつも、時に三次元の一面を躊躇なく見せる“次元を超えたニューカマー”たちだ。奇抜で個性的なネクストブレイクが日夜誕生するこのシーンで、今最も注目すべき存在。そんな彼女たちの多彩な活動形式を本稿では紹介しよう。

 最初に取り上げるのは、シーン筆頭株として今や絶大な人気を得るアーティスト・花譜のもうひとつの姿として生まれた、バーチャルシンガーソングライター・廻花。花譜として2018年にデビューして以降、多彩な表現方法やアプローチの模索を先行要素として活動してきた彼女。今回2024年に新しく始まった廻花としての活動は、より表現者としての自己を突き詰めるべく生まれたと語られている。

廻花「ひぐらしのうた」【Music Video】

 活動形態の最たる違いは、従来の花譜としてのビジュアルではなく、より生身の人間に近い姿で行われるライブパフォーマンスだろう。あるいは楽曲制作においても、花譜の場合はこれまでカンザキイオリほか外部クリエイターたちによる提供をその大部分としていた。一方廻花の活動では、全曲の作詞作曲を廻花自らが担当。彼女の内面をより精彩に反映した音楽が、今後どれほど多くの人に届くのか。その躍動が今から非常に楽しみだ。

[FULL] Surges / Orangestar 【Covered by 七海うらら】

 続いて紹介する七海うららも、同シーンでは知る人ぞ知る人気シンガーだろう。がんサバイバーの経歴やマルチクリエイターの才も大きな魅力だが、何よりも2Dと3Dを行き来する“パラレルシンガー”なスタイルは、界隈でも他に例を見ない彼女の唯一無二性でもある。

 普段行う動画投稿や配信ではバーチャルな姿を主とする一方、SNS投稿やイベント出演、あるいはアーティストビジュアルなどでは顔を隠した自身の姿を表に出す七海うらら。活躍の場や表現方法を限定せず、どんな場所でも輝きたい。そんな信念を反映する彼女のスタイルは、バーチャルアバターと生身の姿を交互に行き来する演出も話題となったVISUALMAN TOKYO×HIBINOとのコラボ動画にも如実に表れている。その点では彼女こそが今、真の意味で誰よりも時代の最先端をゆくマルチなバーチャルアーティストなのかもしれない。

【ライブ映像】夢限大みゅーたいぷ「コハク」 (夢限大みゅーたいぷ 1st LIVE「めたもるふぉーぜ」より)

 メディアミックスコンテンツ『BanG Dream!』(以下、バンドリ)内の新ユニットとして、2024年に登場した夢限大みゅーたいぷ(以下、ゆめみた)。彼女たちも今回紹介する、次元を超えたアーティストの一例と言えるだろう。

 従来バンドリはキャラの担当声優/ミュージシャンによるリアルライブも大きな魅力だが、メンバー全員がバーチャルな姿というケースは今回が初の試みとなる。ユニットコンセプトは『夢(バーチャル)と現実(リアル)を飛び越える運命共同体(バンド)』。彼女たちの場合、楽曲PVではイラストアバターでその姿が描かれる一方、配信ではライブ2Dを活用したり、時には顔を映さない画角で“中の人”が登場することも。先日行われた1stライブでも従来のユニット同様、“中の人”本人がステージで演奏を披露。今後様々な形で、コンテンツ内でも前例のない独自の活躍が期待できるバンドともなっている。

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