トゲナシトゲアリ、『ガルクラ』とリアルが交差した特別なステージ “聖地”川崎CLUB CITTA’に残した成長の爪痕
ライブ後半はダンサブルな4つ打ちビートが心地よい「傷つき傷つけ痛くて辛い」、カオティックなアンサンブルでフロアを興奮のるつぼと化す「サヨナラサヨナラサヨナラ」、観客が一緒に歌う姿も印象的な人気ナンバー「爆ぜて咲く」で最高潮へと到達。そして、スクリーンにてアニメ名場面の上映が再開すると、第11話でトゲナシトゲアリが野外フェス『BAYCAMP』に出演するシーンが始まる。劇中の仁菜の名セリフに続いて、朱李が鳴らす歪みのかかったベースラインに乗せて理名がエモーショナルな歌声を響かせると、ライブのクライマックスに相応しい「空白とカタルシス」がスタート。劇中では演奏が進むにつれて徐々に人が集まっていったが、目の前で展開されるライブではダイナミックな演奏を前に、フロアはこの日一番と言える盛り上がりを見せた。最高のパフォーマンスを前に、惜しみない拍手を送るオーディエンス。そんな愛おしい観客に対し、理名は満面の笑みで「ありがとうございました!」と挨拶、メンバー3人は深々とお辞儀してからステージを去っていった。
アンコールではライブTシャツに着替えたメンバーが再登場し、「偽りの理」「黎明を穿つ」をプレゼント。その後、ここまで自己紹介していなかったことに気づき、3人が自身の演じるキャラクター名とともに挨拶をする。以降はライブ初披露となる「闇に溶けてく」「碧いif」や、「極私的極彩色アンサー」を連発して再度フロアの熱を高めていく。そして、スクリーンにアニメ第13話のCLUB CITTA'でのライブシーンが映し出され、再びアニメとリアルがシンクロする。アニメの仁菜同様、ステージ上の理名が「私たちの始まりの目撃者になってください!」と叫ぶと、掲げたテレキャスタータイプのギターをかき鳴らして「運命の華」を演奏し始めた。劇中では会場のキャパに対して半分にも満たない動員だったCLUB CITTA'もリアルは満員状態、そんな最高の環境下で鳴らされる「運命の華」は最高の輝きを放つ。クライマックスの〈1、2、3、4!〉はメンバーのみならず観客も一緒に叫び、それと同時に銀テープが宙に向けて発射される。エンディングで理名が圧巻のロングトーンを響かせると、会場はこの日一番の一体感を生み出し、何ものにも変え難い多幸感に包まれる中メンバーが「せーの、ありがとうー!」とアニメ同様に叫んで「運命の華」は終了した。
アニメの物語に沿って、ライブ1本を通してトゲナシトゲアリの成長過程を描いていった今回の2ndワンマンライブ。残すはあと1曲となる。その前に、初解禁となる新情報として来年2月7日にパシフィコ横浜での5thワンマンライブ開催や、アニメ『ガールズバンドクライ』の劇場版総集編が前・後編で公開されることなどが告げられ、場内に歓喜の声が沸き起こった。そのハッピームードを抱えたまま、ライブの終わりを告げる「誰にもなれない私だから」がスタート。アニメのエンディング主題歌として愛されたこの曲も、背後のスクリーンにエンディング映像やアニメの名場面を流しながら進行していく。ここまでの物語のエンドロールだけでなく、ここから始まる新たな物語を予感させる、そんな1曲に心が温かくなったところで2ndワンマンライブは幕を下ろした。
メンバーを2人欠く形でのライブは残念で仕方ないが、それでも物語を紡いでいこう、未来につないでいこうとする理名、夕莉、朱李の眼差しはキラキラと輝いていた。バンドが本来の形に戻るまで、彼女たちは成長を重ねながらこの大切な場所を守り続けてくれることだろう。周りの期待を遥かに超えるステージを見せたトゲナシトゲアリの躍進はまだまだ止まりそうにない。
※1:https://realsound.jp/2024/03/post-1614160.html
※2:https://realsound.jp/2023/09/post-1440171.html
セットリスト
01. 雑踏、僕らの街
02. 空の箱
03. 声なき魚
04. 視界の隅 朽ちる音
05. 名もなき何もかも
06. 理想的パラドクスとは
07. 気鬱、白濁す
08. 運命に賭けたい論理
09. 蝶に結いた赤い糸
10. 無知のち私
11. 傷つき傷つけ痛くて辛い
12. サヨナラサヨナラサヨナラ
13. 爆ぜて咲く
14. 空白とカタルシス
アンコール
15. 偽りの理
16. 黎明を穿つ
17. 闇に溶けてく
18. 碧いif
19. 極私的極彩色アンサー
20. 運命の華
21. 誰にもなれない私だから
トゲナシトゲアリ、『ガルクラ』からデビュー1年強でCDチャートも好成績 令和を代表するアニメ発バンドの地位を確立
トゲナシトゲアリが8月28日に2ndアルバム『棘ナシ』をリリース。チャートアクションをもとに同作の魅力を読み解いていく。
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