SEKAI NO OWARI、back number……クリープハイプ、トリビュートアルバムから伝わるリスペクトと愛情

クリープハイプに集まるリスペクト

 現在、現メンバー15周年イヤーを駆け抜けているクリープハイプ。そのアニバーサリーイヤーを祝福する企画の一つが、8月28日にリリースされた初のトリビュートアルバム『もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって』だ。

クリープハイプ トリビュートアルバム『もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって』トレーラー

 このトリビュートアルバムに参加しているアーティストは計11組。クリープハイプと同じ時代・シーンを共に走り続ける同世代アーティストとして、SEKAI NO OWARI、UNISON SQUARE GARDEN、indigo la End、back numberが、クリープハイプの先輩アーティストとして、10-FEET、東京スカパラダイスオーケストラ、ウルフルズが参加。また、近年、クリープハイプから大きな影響を受けたことを公言する新世代のアーティストが増えていて、その世代を代表して、ヨルシカ、ano、WurtSが参加している。

 まず、ラインナップが壮観である。そして、実際に各アーティストがカバーした楽曲を聴いてさらに驚かされた。各々のアーティストが、独自の感性を通してクリープハイプの楽曲と向き合い、それぞれの声とサウンドをもって新たな息吹を宿す。深い理解と愛と敬意に基づく全11曲は、まるでまっさらな新曲のようなフレッシュな響きを放っていて、同時に、クリープハイプの楽曲にもともと込められていた普遍的な魅力に改めて触れるような不思議な感覚も味わえる。新鮮な驚きやクリープハイプの魅力の再確認の瞬間が次から次へと訪れる、素晴らしいトリビュートアルバムだと思う。

 8月28日のリリース以降、今作は目覚ましいチャートアクションを続けている。各サブスク(Apple Music、Spotify、LINE MUSIC、AWA)のランキングにおいて全11曲が上位にランクインしており、プレイリストチャート、アルバムチャートにおける存在感も大きい。また、CDのセールスも好調で、オリコンの2024年09月09日付「週間 アルバムランキング」(2024年08月26日~2024年09月01日)では推定売上枚数1.5万枚で8位を記録、店舗によっては売り切れも発生しているという。また、単曲ではなく、11曲全てがたくさんのリスナーに聴かれている事実は、今作のアルバム全編を通した完成度の高さを物語っている。

 今作の幕開けを飾るのは、SEKAI NO OWARIがカバーした「栞」。同曲は、クリープハイプの数ある楽曲の中でも、特にポップな魅力が爆発した爽快なナンバーであり、SEKAI NO OWARIは、そこに真正面から向き合い、自身の強みであるファンタジックなテイストを加味することで、新解釈版の「栞」を創り出した。Fukaseは、今回の企画に寄せて、次のようにコメントしている。

「『プライドを持ってpopsにする』って尾崎くんに言ったら『プライドを持ってpopsって良い言葉だなぁ』と言ってもらえたから真っ直ぐSEKAI NO OWARIができたと思う。 完成した時に原曲を聴いたら『届かなかったか』と凹んだけど、後悔はしてない。」(※1)

 このコメントから、Fukaseと尾崎世界観の関係性がリアルに伝わってくるし、何より、「届かなかったか」と「後悔はしてない」という2文から、クリープハイプへの深いリスペクト、そして、今回の企画に全身全霊を尽くして挑んだSEKAI NO OWARIの気概が伝わってきて、思わず胸が熱くなる。原曲が誇る鮮やかでカラフルなポップフィーリングと壮大な広がりを、どちらも損なうことのないままSEKAI NO OWARI流ポップスへと仕立て上げた名カバーであると思う。

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