SEKAI NO OWARI、back number……クリープハイプ、トリビュートアルバムから伝わるリスペクトと愛情
アルバムの中盤に配置されているのが、WurtSがカバーした「キケンナアソビ」。今回の参加アーティストの中で最年少のWurtSは、中学生の時からずっとクリープハイプを聴き続けているという。彼は、今回の企画の一環として送られたクリープハイプからのメッセージ動画について、「7年前ぐらい⁉︎クリープハイプを聴いて衝撃を受けた中学生のWurtSにこれを見せてあげたい。」とX(旧Twitter)に投稿していて、いかにクリープハイプの熱心なリスナーであるかが伝わってくる。
7年前ぐらい⁉︎
クリープハイプを聴いて衝撃を受けた中学生のWurtSにこれを見せてあげたい。https://t.co/wwPx3TwXt2— WurtS (@wurts2021) August 12, 2024
WurtSは、「キケンナアソビ」のカバーについて、「カラッと乾いたサウンドの中で歌詞にどこか後を引いている余韻を感じ、この表現をWurtSならどう表現するだろうと試行錯誤しました。」(※1)とコメントしており、加えてXでは「WurtSのキケンナアソビは鍵盤で殴りつけるような艶やかな楽曲です」と投稿していた。
クリープハイプトリビュート
WurtSのキケンナアソビは
鍵盤で殴りつけるような艶やかな楽曲です@creephyp https://t.co/32bk94bgLY pic.twitter.com/Bg3gd8fjjt— WurtS (@wurts2021) August 28, 2024
その言葉のとおり、イントロから流麗な鍵盤のサウンドがフィーチャーされているが、全編を通して聴くと、バンドサウンドを強く押し出している印象を受ける。バンドという形態に捉われることなく様々なサウンドを駆使するWurtSの中には、きっと様々なアレンジのアイデアがあったと想像する(クリープハイプからのメッセージ動画の中で、小川幸慈は「トラック然とした感じで返ってくると思ってた」と楽曲を受け取る前の心境を振り返っていた)。しかし彼は、バンドサウンドを大胆にフィーチャーするというアレンジを選択した。そこに、彼が胸に抱き続けるクリープハイプという“バンド”への深いリスペクトを感じ取った人はきっと多いのではないかと思う。
今作を締め括るのは、back numberがカバーする「バンド」。それぞれのバンドのファンにとってはよく知られているように、清水依与吏と尾崎は長年の盟友であり、現在back numberが開催中の対バンツアーのファイナル公演のゲストとしてクリープハイプを迎えることからも、両バンドの間の熱き関係性が伝わってくる。もちろん、それはただの友好関係ではなく、両バンドはライバルとして、それぞれのプライドを託した渾身の楽曲をリリースし合いながら、お互いに切磋琢磨を重ね続けてきた。
清水は、今回の企画に寄せたコメントの中で、2016年にクリープハイプが発表した楽曲「バンド」に対して、「いつか自分の手で形にするはずだった『自分とバンド』についての気持ちと景色が先に歌われてしまったはずなのに、でもそれが一寸のズレも感じないほど赤裸々で、ぐうのねもでないほど素敵で。」と最上の賛辞の念を抱いたことを振り返っている(※1)。そして、自分たちが同曲をカバーすることについて、「説明できない不思議な安心感という伏線を8年後にその曲をback numberでカバーするという形で回収させてくれたことを心から感謝します。」とコメントしている(※1)。
back numberがカバーした「バンド」について、清水の歌声の力を最大限に引き出すためにコード進行が変更されている点をはじめ、ピックアップしたいポイントはいくつもあるが、特筆すべきは、一部の歌詞が変更されていることだ。該当箇所は、〈今までバンドをやってきて 思い出に残る出来事は 腐る程された質問に 今更正直に答える 2009年11月16日 アンコールでの長い拍手 思えばあれから今に至るまで ずっと聞こえているような気がする〉の日付を示す部分。オリジナルの〈2009年11月16日〉は、クリープハイプが現メンバーで活動をスタートした日。back numberは、この部分を〈2011年1月23日〉と替えて歌っている。この日は、back numberがO-WESTでのワンマンライブでメジャーデビューを発表した日である。つまり、back numberは、この「バンド」という曲に、自分たち自身の物語を重ねている、ということであり、改めて、彼らがこの曲に寄せる想いの深さが伝わってくる。何より、尾崎がこの曲を通して表現した“バンド論”の普遍性の高さに驚かされる。
尾崎は、今回の企画に際して、「それぞれから届いた、ただなぞるだけではない歌を爆音で聴いたり静かに聴いたりして、クリープハイプがクリープハイプを一番分かってなかったことに気づきました。普遍的で穏やかな川の流れのような、そんな自分たちの歴史を新たに感じることができて、今まで一つだった心が二つになったような、幸せな気分です。」とコメントしている(※2)。今回は、3曲をピックアップして紹介したが、他の曲も、クリープハイプというバンドの真髄に新しい角度から光を当てるような、高い批評性に基づく素晴らしいカバー曲に仕上がっている。まだ一部の楽曲しかチェックしていない方は、アルバム全編を通して、クリープハイプの真髄に計11通りの解釈を通して触れてみてほしい。きっと、クリープハイプが長年にわたり日本の音楽シーンの中で唯一無二の存在であり続けている理由を改めて感じ取ることができると思う。
そして、2009年11月16日、小川幸慈、長谷川カオナシ、小泉拓を正式メンバーとして迎えた日からちょうど15年後の2024年11月16日には、現メンバー15周年記念公演『2024年11月16日』がKアリーナ横浜にて開催される。アニバーサリーイヤーの締め括りにして、新しい章の幕開けを飾る一夜に、いったい彼らはどのようなライブを見せてくれるのだろうか。これまでの15年間の歩みに想いを馳せつつ、期待してその日を待ちたい。
※1:https://www.creephyp.com/news/detail/108060
※2:https://www.universal-music.co.jp/creephyp/products/umck-1772/
■リリース情報
クリープハイプ トリビュートアルバム
『もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって』
2024年8月28日(水)リリース
価格:3,520円(税込)
販売:https://creephyp.lnk.to/tribute_cd
トリビュートアルバム特設ページ:https://www.creephyp.com/feature/tribute_AL
配信:https://creephyp.lnk.to/tribute_digital
オリジナル曲プレイリスト:https://creephyp.lnk.to/Tribute_Original_Tracks
<収録内容:全11曲収録>
01.栞/SEKAI NO OWARI
02.憂、燦燦/ヨルシカ
03.手と手/10-FEET
04.イト/UNISON SQUARE GARDEN
05.社会の窓/ano
06.ABCDC/indigo la End
07.キケンナアソビ/WurtS
08.ナイトオンザプラネット/東京スカパラダイスオーケストラ
09.二十九、三十/ウルフルズ
10.ただ/My Hair is Bad
11.バンド/back number
■関連リンク
公式サイト:https://www.creephyp.com/
クリープハイプ15周年記念ページ:https://www.creephyp.com/15th/
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