カメレオン・ライム・ウーピーパイ、PESが導いた武器と大正解 新曲「REACH feat. PES」で刷新した強さ
カメレオン・ライム・ウーピーパイ(CLWP)が新曲「REACH feat. PES」を8月14日にリリースした。タイトルにあるとおり、今回の楽曲にはHIPHOPアーティスト・PESが客演。カメレオン・ライム・ウーピーパイらしいジャンクなビートにのせてChi-とPESが互いのヴァースを投げ合う、とてもキャッチーな楽曲に仕上がっている。今年2024年は2年連続でアメリカ・オースティンのアートの見本市『SXSW』に出演し、イギリスのメディア『CLASH』では『SXSW』におけるベスト15アクトのひとつに選出されるなど、ますます注目度を高めているカメレオン・ライム・ウーピーパイ。そんな勢いそのままにPESというビッグネームを招いて実現したコラボレーションは、きっと日本のシーンにもインパクトを与えるはずだ。
今回に限らず、カメレオン・ライム・ウーピーパイはこれまでも数々のアーティストと興味深いコラボレーションを繰り広げてきた。もちろんカメレオン・ライム・ウーピーパイの作品にゲストを呼び込むこともあれば、楽曲提供という形で他アーティストの作品にかかわったり(最近だと、2023年に声優・夏川椎菜のアルバム『ケーブルサラダ』に「I Can Bleah」という楽曲で参加したことが記憶に新しい)、Chi-が今をときめくNIKO NIKO TANTANの1st EPにシンガーとしてフィーチャーされたこともあった(「胸騒ぎ feat. Chi- from カメレオン・ライム・ウーピーパイ」)。楽曲提供やフィーチャリングでの参加はもちろん先方からのオファーがあってこそなわけだが、カメレオン・ライム・ウーピーパイが面白いのは、自身の楽曲に誰かに参加してもらう場合も“逆オファー”のような形で実現するケースが多いところだ。
たとえば2021年にリリースされた「Rich Girl」。この曲にはイギリス・マンチェスター出身のDJ/プロデューサーであるTCTSが参加しているが、これはTCTSがカメレオン・ライム・ウーピーパイにSNSのダイレクトメッセージでコンタクトを取ってきたのがきっかけだったという。翌2022年リリースの元FEVER 333のギタリストであるスティーヴン・ハリソンをフィーチャーした「Whoopie is a Punkrocker feat. Stephen Harrison」も同じく、Spotifyでカメレオン・ライム・ウーピーパイの音楽を聴いて惚れ込んだ彼の側から連絡をしてきたのだそうだ。
かたやマンチェスターのDJ、かたやLAハードコアシーンで腕を振るうパンクス。まったく違う畑から立て続けにラブコールを受けて、しかもその結果、最高のコラボ楽曲が生まれてしまうというところに、カメレオン・ライム・ウーピーパイのユニークさと面白さがある。しかも、もちろんアップカミングなアーティストとして注目されている側面はあるとはいえ、彼らの名前が全世界中に轟いているというわけではないし、Chi-の書く歌詞はそのほとんどが日本語だ。普通に考えれば海外のアーティストが何かの折に楽曲に触れたとしても、だからといって「うわ、一緒に何か作りたい、DM送っちゃお!」とはならないのではないかという気がするのだ。国境とか世代とかそういう心理的障壁とか、あらゆるボーダーをやすやすと越えてしまうだけの魅力というか引力のようなものを、カメレオン・ライム・ウーピーパイはその全身から放っている――のかもしれない。
「Rich Girl」にしろ「Whoopie is a Punkrocker」にしろ、楽曲を聴くとカメレオン・ライム・ウーピーパイのフィールドにうまくゲストを招き、一緒に遊んでいる感じが伝わってくる。向こうもそのつもりなのだから当然だ。「Whoopie is a Punkrocker」のハードなギターリフが物語るように、いわゆる「ゲスト」とか「フィーチャリング」とかの、要するに他者のセンスやスキルをオプションとしてアドオンするみたいなイメージとはまったく違うコミュニケーションのなかで、カメレオン・ライム・ウーピーパイはコラボ曲を作り上げているのである。それは普段開けない引き出しも開けて、せっかくきてくれたゲストのためのスペースを用意するというクリエイティブなおもてなし精神みたいなことなのかもしれないが、やはりChi-とWhoopies1号・2号によるバンドでもユニットでもない独特の関係性(オフィシャルには“仲間”と定義されている)がゆえなのではないかという気もする。要するにChi-とWhoopiesによるクリエイションは最初から“コラボ的”なものであり、お互いにアイデアを投げ合って想像もしなかったところに着地する、化学実験のようなものなのだ。だから彼らが作る楽曲には常に遊びがあるし、予想外があるし、わちゃわちゃ遊んでいるような楽しさがある。