ゴールデンボンバー 鬼龍院翔、普通よりも“変”でいたい理由 TikTok、YouTube……“世間の流行”とのリンク
まずは思いついたらなんでもやってみるべき
ーーちなみに、TVはご覧になることはありますか。
鬼龍院:ツアー先で地元のTVニュースをチェックするようにしています。
ーーそれはなぜですか?
鬼龍院:TVのニュースで「明日は◯◯市でお祭りが開催されます」なんてやっていれば、交通が混雑するかもしれないと想定して動くことができるし、ライブのMCで「このあとお祭りに行くんでしょ?」みたいに呼びかけたら、お客さんは「自分の街のことを知ってくれている」と嬉しく思っていただけるんじゃないかな、と。その土地のことを何も知らなくて「ここどこだっけ?」となってしまったらお客さんに失礼ですし。
ーー昨年発売された書籍『超!簡単なステージ論 舞台に上がるすべての人が使える72の大ワザ/小ワザ/反則ワザ』(リットーミュージック)でも、「地方のお客さんは、手垢がついた地元話に飽き飽きしている」という項目がありましたが、ご自身でも実践されている。
鬼龍院:ただ、僕よりすごい人はいるんですよ。氣志團の綾小路翔さんは、インターネットやTVからその土地の情報を得るのではなくて、前乗りして地元のスナックに行くんだそうです。そこで地元の人と交流して、メディアだけでは知ることのできない、リアルな情報を聞く。その結果、MCがすごい。「どうしてそんなこと知ってるの?」という話がバンバン出てくるんです。
ーーそこまで行くと、もはや取材の領域ですよ!
鬼龍院:だから、僕なんてまだまだですよ。上には上がいます。
ーー他には?
鬼龍院:チェックするのは、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)と『ゴッドタン』(テレビ東京)かなあ。
ーーどちらもバラエティ番組ですね。そして、ともに藤井健太郎さん、佐久間宣行さんという、攻めた企画で知られるプロデューサーが手掛けています。頭を使ってギリギリを攻めているという意味では、ゴールデンボンバーと近しいものがあるかなと。
鬼龍院:やっぱりギリギリを攻めているものがいちばん面白い、いちばん勉強になりますね。こういったバラエティで芸人さんが体を張ったり、精神的に追い詰められたりすることをハラスメント的だという声もありますが、むしろ「かわいそう」と言われるのがいちばんイヤなんじゃないかなとも思う。そういう時は、大いに笑うことが(バラエティにおいては)大事なので。地上波のTV番組だってここまでやってるのに、公共の電波に乗せていない我々が負けてちゃいられないなと思っています。
ーー“ただ単にタブーを破るだけ”では通用しない世のなかではあります。
鬼龍院:破るだけで面白いと思っているのは小学生くらいですよ。面白ければタブーを破っていなくてもいいわけですし。とはいえ、タブーを破っていて、かつ面白いというのが最高だと思います。
ーーなるほど。
鬼龍院:これは佐久間さんもラジオ(ニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』)で、「全部が全部、毎回面白くないといけないわけではなくて、3回に1回ものすごい面白い回があるくらいのほうがいい」というようなことをおっしゃっていたんです。面白くなりそうなものをとりあえず放り込んでみて、「今回はよかった」「今回はそうでもなかった」と続けていって、またその次の回で「ものすごい化学反応が起きた!」みたいなことって起こるんです。むしろ「このバンドはいつも70点だな、次のライブもどうせ70点だろうな」と思われたらよくないんです。「こっちは金払ってるんだから毎回100点を出せ」という不可能なことを言ってくる人の声は聞かなくていいとも思っています。
ーーその場にいる全員が同じように「100点だ」と感じることも不可能に近いと思いますし。人は自分の見たいものしか見ませんし。
鬼龍院:それで言うと、僕はよく思うんですけど、人は自分の信じたいようにしか信じないんです。もちろん、それで上手くいっている面もたくさんあると思います。たとえば、僕の顔がすごく怖そうだったら、今いるファンの方はいなかったかもしれない。それで勘違いも生んでしまったわけですが。
ーーどういうことですか?
鬼龍院:僕って、「一生童貞です!」みたいなことをずっと言ってる雰囲気の顔をしているんですよ。
ーーすみません。やっぱり、どういうことですか?
鬼龍院:僕は30歳頃から「モテない」とは絶対言わないようにしていたんです。むしろ「モテる」と公言していたんです。でも、“最近まで「モテない」と言い続けていたように思い込ませてしまうような顔”をしているんですよ。だから「モテなさそうな雰囲気の男性が好き」というファンの人がついた。それは“いい面”ですよね。でも、そうなると僕が「白だ」と言ってても、先入観から「鬼龍院さんは黒だと言ってた!」みたいな思い込みで決めつけてしまうことも増えたんです。これは近年学んだことのひとつですね。
ーー先入観からくる期待というものは難しいですね。言ってしまえば、このインタビュー記事だって「ゴールデンボンバーは鬼龍院さんのアイデアによる戦略でブレイクした」という先入観から、「バズってヒットを生む戦略を教えてください!」という期待があるわけですから。
鬼龍院:そうそう。期待されているという反面、それはプレッシャーにもなりますよね。「あれはたまたまなんだよなあ〜」みたいな(笑)。でも、そこで「そんな方法はありません」と言ってしまったら、インタビューが終わってしまうので、なんとかひねり出すわけですけども。
ーーそこは、我々のようなメディア側が鬼龍院さんのサービス精神に甘えてしまっているところかもしれません。
鬼龍院:だた、方法論としては、「結局数を打つしかない」ということは言えると思います。あんなに大ヒットを連発してるように見える秋元康先生だって、そもそも膨大な数の作品を発表しているので、当たらなかったものだってたくさんあるとご本人がいろいろな本やインタビューでもおっしゃっていて。僕だって、くだらないことを思いつく数が多いだけで、スベっているものもたくさんあるわけです。だからあまり偉そうなことは言えないけれど、最初から「完璧にやらなきゃ!」と思って動きが鈍くなるよりも、まずは思いついたらなんでもやってみるべきだと思います。