久保田利伸、3年8カ月ぶりの新曲に表れる人生観 輝かしい“現在“を提示し続けるアーティストとしての凄み

久保田利伸、新曲に表れた人生観

 彼の3年8カ月ぶりの新曲「the Beat of Life」は、「CITIZEN」ブランド時計100周年記念 ブランド横断コレクション「LAYERS of TIME」CMソングとして、久保田が書き下ろしたものだ。本人も『「時の積層」「人は時に磨かれる」という、この度のCITIZENさんのテーマからインスパイアを得て、年月の悲喜こもごもたちが育んできた人生を、1本の太いGROOVE(Beat)に置き換え、「the Beat of Life」ができました』と公式コメントを寄せている。

久保田利伸 -the Beat of Life [CITIZEN ver.]

 「the Beat of Life」は繊細なビートと生音のゴージャスなグルーヴが絡み合うように展開する中に、久保田利伸の抜群のリズム感を生かしたフロウが滑らかにライドオンしていくミディアムチューンである。ミディアムチューンながら、しっかりとグルーヴを感じさせるあたりは、久保田利伸の真骨頂だろう。もっと言ってしまえば、久保田でなければ成立しないグルーヴがある。曲のスケール感が徐々にあがり、バックトラックのリズムが波状のように広がり音像を作っていく中で、ゴスペルを思わせるラップを繰り広げるマニアックな構成には個人的にかなりゾクゾクした。マニアックな中でも、グッドメロディを歌で印象付けるのも、これまた久保田の得意技。譜面上ではほぼ同じタイトなメロディを繰り返すパートがあるが、久保田のボーカルアプローチの多彩さで、一聴しただけでは、まったく別のメロディを聴いているように感じてしまうほどだ。

 〈そう、まったく悔いはない〉というフレーズから始まる歌詞にも注目したい。最初のフレーズだけで、この曲のテーマがわかるパンチラインを久保田は優しく、でも少しだけ声を張って力強さを加えて歌い出す。グルーヴを軸にし、フェイクも随所に入れ込むR&Bど真ん中のボーカルアプローチながら、タイトなグッドメロディでシンプルな日本語を日本語として聴かせていることに、改めて先駆者が積み重ねてきた実力を痛感した。歌詞は、本当にざっくり言ってしまえば、己の人生を肯定する内容だ。過去を振り返る言葉もあるが、それが思い出でなく、現在進行形で未来にも起こることだと思わせるのは、久保田自身がこの曲を体現することを楽しんでいるからだと思う。自分の好きな音楽を探求し続け、新たな刺激を追求し続けた久保田利伸が歌うからこそ、説得力を持つ。そしてその説得力が、聴く者のエネルギーになりそれぞれの人生とリンクしていく。またひとつ、久保田利伸の代表曲が増えそうだ。

 2024年9月14日からは、全国ツアー『久保田利伸コンサートツアー2024-25“佐藤さん、いつものでよろしいですか?”』がスタートすることが決まっている。久保田の愛嬌という名のFunkyっぷりが炸裂しているツアータイトルだが、今でも進化を続ける先駆者を体感してほしい。本物の名曲は、いつ誰が聴いても名曲なのだから。

久保田利伸「the Beat of Life」ジャケット
久保田利伸「the Beat of Life」

■リリース情報
「the Beat of Life」
6月19日(水)配信リリース

■関連リンク
久保田利伸オフィシャルサイト:https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/kubota/
『LAYERS of TIME』スペシャルサイト:https://citizen.jp/special/layersoftime/index.html

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