リアルサウンド連載「From Editors」第57回:舞台『骨と軽蔑』、ファンの信頼に応える面白さ

「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

『骨と軽蔑』ファンの信頼にきちんと応える舞台

 絶対にネタバレしない状態で観て欲しくて、終演まで待っていたらこのタイミングになりました。今回は東京では2月に上演され、4月に全公演が終了した舞台『KERA CROSS第五弾  「骨と軽蔑」』の話をできればと思います。

 演出を務めるのはナゴムレコードの主宰でも知られるケラリーノ・サンドロヴィッチ。KERA CROSSは彼が書いた戯曲をさまざまな演出家が手がけるという企画ですが、今回はケラリーノ・サンドロヴィッチ自らが演出も担当しました。キャストには宮沢りえ、鈴木杏、小池栄子といった、テレビドラマでもお馴染みの俳優7人が登場。7人だけで話が展開していきます。

 武器を売って裕福な生活をしている、戦争中のある家の話。でもこの作品に出てくる人にとって戦争はどこか人ごとで、みんな自分の恋人や仕事に夢中。ずっと話が食い違いながら、ドタバタと進行していく話が面白い反面、ラジオから流れる放送では“外”の世界で起きている戦禍がどれだけ激しいものであるかを淡々と伝えています。観客としてはずっと7人の会話が面白くて笑ってしまいますが、その一方でずっと「描かれないが存在している」戦争の存在がひっかかります。しかし、だんだんとこのひっかかりが大きくなり……。というもの。

 実はこの作品、チケット販売時には作品の内容がほとんど開示されていません。ただ脚本と演出家の名前とキャスト陣の名前だけで券売しているのです。それでも、私が観劇した日は満席。東京公演は一般販売もすぐに売り切れていたと記憶しています。それは、“ケラ演出”、“宮沢りえ出演”への信頼の高さの表れでしょう。この組み合わせで面白くないはずがないと私も思って劇場に向かっていましたし、実際にそれに応える作品を作り続ける。この信頼はある意味で一番の告知になるのかもしれないなと改めて感じました。

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