NOKKOはいかにして唯一無二のシンガーになったのか REBECCAやソロワークスでの音楽的冒険を辿る

NOKKO、REBECCAやソロでの音楽的冒険

 この延長線上でNOKKO名義に戻り作られたのが2000年作の『Viaje』。本作でも荒井由美カバー「COBALT HOUR」を収録。白井良明と共に、初期作を支えた屋敷豪太もプロデューサーで参加、日本、ロンドン、ドイツでレコーディングされている。今振り返るとダンサブルなトラックからブラジリアンテイストまで、90年代の歩みの集大成とも言える作りだ。もはや何バージョンあるのかわからない「フレンズ」だが、『Viaje』収録「フレンズ(Cleamy)」はブラジリアンヒップホップなアレンジが施されている。「ヌーチェの朝」「目ポタ -REMIX-」「I LOVE YOU」など多彩かつキャッチーな楽曲で抜群の喉を震わせている一枚だ。

 『NOKKO ARCHIVES 1992-2000』ではこれらオリジナルアルバムを紙ジャケット仕様でリイシューしたほか、2000年にリリースされた『remixNOKKO』(数々のシングル・リミックスのほか、「7 Ways to Love」は土橋安騎夫によるリミックスを収録)、「パレード」「トカゲ」「恋はあせらず」「水の中の小さな太陽」など、アルバム未収録のシングルを網羅した『Non-Album Single Collection』も大きな目玉アイテムだ。さらにデジパック仕様でリイシューされた『CLUB HALLELUJAH & CLIPS+』はそもそものソロとして行なわれた1992年の初ライブと初期ビデオクリップを収めたほかに、その後のクリップやTVスポットなどボーナス映像もたっぷり収録したBlu-rayとして蘇っている。9CD+Blu-rayのいずれもがGOH HOTODAによる最新マスタリングのサウンドで堪能できるのだ。

 2003年にはGOH HOTODAとのユニットNOKKO & GOで『宇宙のコモリウタ』を発表。「ワスレナグサ’03」を収めるほか、「フルサト」は後にNHK「みんなのうた」に起用された。2001年の二人の結婚がモチーフになったであろう楽曲など、バラエティに富んだ音世界、ブレスを誇張したボーカルアプローチなど、様々な実験性はその後のソロアルバムに受け継がれることに。NOKKO & GOではインスト作品『home sweet home(FURUSATO)~Inventions & Sinfonias』をリリース後、自身の選曲によるベスト盤『NOKKO'S SELECTION, NOKKO'S BEST』を経て、初のカバーアルバム『KISS』を発表。RE BECCA楽曲や「人魚」のほかは、佐野元春「SOMEDAY」、大沢誉志幸「そして僕は途方に暮れる」、サザンオールスターズ「いとしのエリー」など、男性アーティストのカバーでまとめられたのが意外だった。

 2012年、2013年にはクリスマスアルバム『The Christmas Songs』『もうすぐクリスマス』を続けて発表した後、2013年に広沢タダシがプロデュースを務めたオリジナルアルバム『THE NOKKO STORY』をリリース。「ゆうぐれなき」「渋谷オレンジ」のほか、REBECCA「MAYBE TOMORROW」のカバーも収録。60’sファッションに身を包んだNOKKOがとにかく愛らしい一枚だった。2015年には待望のREBECCA再結成劇が実現するのだが、この際に『NOKKO sings REBECCA tunes 2015』をリリース。お子さんが聴いていたEDM楽曲が着想となり、REBECCA楽曲をなんとEDMアレンジで歌ってみせた。さらにはREBECCAでの曲作りセッションから生まれたシングル「恋に堕ちたら」、そのセルフカバーも収めたソロアルバム『TRUE WOMAN』も2018年にリリースされている。荒井由実「翳りゆく部屋 (featuring Philippe Saisse Trio)」「卒業写真」のカバーも収録、「ふふふ」を遂に松任谷由実が作曲、亀田誠治がアレンジ、いきものがかりの水野良樹が書いた「翼」を松任谷正隆がアレンジするといったコラボも話題となった。

 2023年には最新ソロ作『土器土器』をアナログレコードでリリース。川村結花が作曲、屋敷豪太がアレンジ、プロデュースを手がけた。その後さらに新曲を追加してCD化も叶っている。「オーガニック庭師」「おべんとうの歌」「マカロニ」などピアノを主軸にした、ちょっぴりジャジーなフレーバーも感じる一枚に仕上がっている。なおカラフルなジャケットを描き下ろしたのはリリー・フランキーだ。

 マイペースな動きながらも常に音楽的冒険を続けてきているのがNOKKOの一連のソロ作品であり、特に近年は母としての生活がフィードバックした楽曲も印象的だ。『NOKKO ARCHIVES 1992-2000』からもNOKKOの音楽家としての旅は続いているのである。REBECCAも2015年の再結成以来、断続的な活動を展開している。土橋安騎夫はソロアルバム『SENRITSU』シリーズを主宰イベント「Area Deep」で発表するほか、U_WAVEを筆頭とする宇都宮隆(TM NETWORK)とのコラボレーション、田村直美、野村義男、石川俊介、長谷川浩二とのSho-ta with Tenpack riverside rock’n roll bandでも活躍中。小田原豊は浜田省吾、Maica_nらのサポートドラマーとしても活躍しており、高橋教之も含めて現在のREBECCAは全員がミュージシャンとして現役でプレイし続けている。

  先述の通りREBECCAはデビュー40周年を迎えた。遂に7年ぶりとなる全国ツアー『REBECCA NOSTALGIC NEW WORLD TOUR 2024』の開催がメジャーデビュー日だった4月21日に発表されている。7月13日、14日の東京・昭和女子大学人見記念講堂2デイズからスタートし、愛知県芸術劇場 大ホール、岡山・倉敷市民会館、広島上野学園ホール、大阪フェスティバルホール、埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール、・埼玉(大宮)・宮城・仙台サンプラザを8月にかけてまわった後、9月22日、23日に再び昭和女子大学人見記念講堂2デイズで締めるスケジュール。全国7都市13公演のホールツアーということでチケット争奪戦だろうが、常に進化を遂げていくREBECCA をぜひ目に焼き付けたい。そして

 そして「恋に堕ちたら」はセッションで生まれた楽曲だけにバンドによる作曲名義となったが、NOKKO作詞、土橋安騎夫作曲名義の新曲にも期待したいところだ。今のところは朗報が来ることを信じつつ、NOKKOの90年代以後の音楽的功績をボックスセット『NOKKO ARCHIVES 1992-2000』で、紙ジャケットでリイシューされた数々のアイテムと共に追体験してみてはいかがだろうか。

『NOKKO ARCHIVES 1992-2000』
『NOKKO ARCHIVES 1992-2000』

■リリース情報
『NOKKO ARCHIVES 1992-2000』
発売中
¥27,500(税込)パッケージ版価格
CD + Blu-ray 10枚組
収録曲・詳細はこちら
https://www.110107.com/s/oto/discography/MHCL-30951

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