NOKKOはいかにして唯一無二のシンガーになったのか REBECCAやソロワークスでの音楽的冒険を辿る

NOKKO、REBECCAやソロでの音楽的冒険

 アラフォー以後の世代にとって、シンガーとしてもそのスタイルとしても、いまだ絶対的な存在なのがNOKKOだ。REBECCAでシーンに登場したときのあのセンセーショナルさはいまだ忘れられない……。2024年4月でREBECCAはデビュー40周年を迎え、アニバーサリー企画的な動きが見えてきた。ミュージシャンの一発録りセッションを収めるYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で、NOKKOが「人魚」「フレンズ」を披露。現在ブロンドヘアのカリスマは、不変のソウルフルな歌声を震わせた。「人魚」ではストリングスをフィーチャー、REBECCAのサポートメンバーである是永巧一がホットなギターソロも奏でている。そして「フレンズ」では是永巧一とともに、ベースでREBECCA 高橋教之が参加していることも大きな話題だ。松永俊弥(パール兄弟)、真藤敬利(Standard Prototype)という近年のNOKKOのライブを支える面子での演奏でもある。真藤敬利は2015年のREBECCA再結成にも参加した。

NOKKO - フレンズ / THE FIRST TAKE

 1991年にREBECCAは解散宣言するが、『BLOND SAURUSの逆襲』ツアー終了後の1990年、深夜のテレビ朝日からNOKKOの元気な歌声が聴こえてきた。それがNOKKOが元ノーマ・ジーンのギタリスト Motokoと組んだSHORT HAIRSによる唯一のシングル「トランジスタグラマー」だったのである。同時期にBO GUMBOS「最後にひとつ」でどんととのデュエットも聴かせたが、SHORT HAIRSの楽曲もどんと、ZELDA 小嶋さちほ夫妻らとのコラボレーションとなっている。この2月に2000年までのNOKKOのソロ作品をまとめたボックスセット『NOKKO ARCHIVES 1992-2000』がリリースされたが、その中に収められた「Non-Album Single Collection」でSHORT HAIRSの2曲が聴けるのは筆者の念願が叶ったかたちだ。

 この当時、一方でREBECAの他メンバーの動向としては高橋教之、小田原豊、是永巧一が、宮原学、柴田俊文とBABY’S BREATHを結成。『BABY’S BREATH』『BABY’S BREATHⅡ〜ROCK ALIVE』の2枚で終焉するも、この二作は豪快さと繊細なロックテイストにあふれており痛快だった。土橋安騎夫はソロ活動とともに、ECHOESのギタリスト 伊藤浩樹とTHE REBELSで活動。THE REBELSはソロアルバム『CHRONICLES』以来の土橋安騎夫のボーカルもフィーチャーしたほか、ゲストシンガーに杏子(BARBEE BOYS)を迎えるなどのコラボレーションで発展していける可能性があったが、アルバム『VOLUME ONE』一枚で終わったのが残念。以後は各々が個々の活動に着手していったが、90年代にまず一世風靡したのはまずNOKKOのソロ活動であった。

 先述のボックスセット『NOKKO ARCHIVES 1992-2000』は、90年代クラブカルチャーのトレンドをリードしたNOKKOの輝かしい功績をパッケージしているのが第一の聴きどころ。1992年3月にシングル「CRAZY CLOUDS」、アルバム『ハレルヤ』でソロデビューを飾ったNOKKOは、まずは現在も親交が深い屋敷豪太(The Renaissance)とタッグを組み、コンポーザーNOKKOとしての才能も発揮していく。

 当時、屋敷豪太はMELON、Simply Redを経て、SOUL II SOULのプロデュースで脚光を浴びており、海外でもっとも成功した日本人ミュージシャンとなっていた。その屋敷豪太が手がけるハウスミュージック、ヒップホップを昇華した軽快でグルーヴィなトラック(何曲かでもちろんドラムもプレイ)で、NOKKOはより自由なボーカルアプローチを聴かせている。ほとんどは海外ミュージシャンが参加する中、屋敷豪太に続きSimply Redのメンバーとして活躍することとなる、鈴木賢司(Kenji Jammer)がギターで参加。鈴木賢司は後述の初のソロライブでもギターをプレイすることに。『ハレルヤ』では「今どきの男の子」「奇跡のウェディングマーチ」も話題だったが、個人的には「COSMIC SUNSHINE BABY」のソウルフルさがとりわけ鮮烈だった。翌年にはテイ・トウワ、Saint Etienneのボブ・スタンリーとピート・ウィッグスらとの新曲を収めた『I Will Catch U.』をリリース。4曲は『ハレルヤ』収録曲のリミックスという作りも当時としては先駆的だったが、この翌月の海外デビュー盤となった『CALL ME NIGHTLIFE』との橋渡しになっている内容。『I Will Catch U.』の楽曲が英詞で歌われて、装いを新たにしたのが『CALL ME NIGHTLIFE』である。当時のNOKKOのビジュアルもかなり攻めていて、セクシーでスタイリッシュで刺激的だった。今振り返ると『ハレルヤ』『I Will Catch U.』『CALL ME NIGHTLIFE』は、三部作的なイメージで受け止められる。

NOKKO - 人魚 / THE FIRST TAKE

 1993年6月にはサトシ・トミイエとのコラボレーションによる、ラテンテイストのシングル「Vivace」が資生堂のCMソングに起用されてヒット。この翌年3月、まさかの筒美京平をコンポーザーに迎え、内田有紀主演のTVドラマ版『時をかける少女』(フジテレビ系)主題歌として大ヒットとなったのが「人魚」である。テイ・トウワと清水信之の初タッグによる美しいオーケストラアレンジ、NOKKOのやさしくささやくような歌い口と伸びやかな歌声は、彼女のファン層をさらに拡げることに貢献したと言える。   

 さらに同年6月にはNOKKOが出演したカルピスウォーターのCMソングで、究極のラブソングと言える「ライブがはねたら」もシングルチャートを賑わせた。『ハレルヤ』『I Will Catch U.』『CALL ME NIGHTLIFE』における先進的なクラブミュージックのテイストも引き継ぎつつも、コンポーザーで筒美京平に続き井上大輔という意外な人選、岩崎工やブラボー小松、佐久間正英、岡野ハジメらをアレンジャーで迎えた4thアルバム『colored』を最高傑作と推す人も多いだろう。なおエスニックムードの冒頭曲「アンテナ」では、現在NOKKOのプライベートでのパートナーであるGOH HOTODAが初参加。以後、NOKKO作品に欠かせないブレーンになっていく。ちなみに恋人との手繋ぎを想像させるジャケットデザインは、CHARA『Junior Sweet』よりも早かった。

 1996年はNHK連続テレビ小説『ふたりっ子』主題歌に起用された「Natural」も収めた新境地のアルバム『RHYMING CAFE』をリリース。実兄・山田貢司との共同プロデュースで、実家に携えたうさぎスタジオでレコーディング。今でこそ当たり前になっていることだが、レコーディングテクノロジーの進化により、ホームレコーディングが現実的になってきたことも追い風となり、オルタナ、ローファイ感も採り入れた意欲作となった。先行シングルとなった「天使のラブソング」はバンドサウンドで新録されており、「GO GO HAPPY DAY」共々、初期REBECCAのムードがあることも魅力。特に「天使のラブソング」の歌詞にはREBECCA「CHEAP HIPPIES」の姉妹編的なムードもあった。

 アリスタジャパンへ移籍、“のっこ”名義による意欲作『ベランダの岸辺』は、ムーンライダーズ 白井良明とタッグを組んだ意欲作に。より自由に等身大の女性としての表現を打ち出しており、まさかの荒井由美カバー「ベルベット・イースター」を筆頭に、白井良明のナイロン弦ギターによるボッサテイストも印象的。なおラストを飾る「TRAVESSIA」はムーンライダーズの初期を代表する、ミルトン・ナシメントのカバー曲。ムーンライダーズや白井良明は今でもライブで取り上げることも多い。このボッサテイストに代表される、アコースティック楽器をフィーチャーしたサウンドメイクが顕著な仕上がりとなり、白井良明の名仕事が光る一枚となった。名曲「わすれな草」などの作曲を手がけたシンガーソングライター 川村結花、そして白井良明もまた近年のNOKKOのソロライブを支えているブレーンである。

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