女性ファンの獲得なくしてブレイクはない アイドル現場の変化とシーンの未来

『アイドル楽曲大賞』アフタートーク後編

重要なのは女性ファンを取り込めるか

11位 FRUITS ZIPPER「ぴゅあいんざわーるど」

【MV】FRUITS ZIPPER「ぴゅあいんざわーるど」

宗像:アイドルシーンの総論が見えてきてしまうんですけど、もう若年層の女性ファンを引っ張ってこないと成り立たなくなっちゃったんですね。Appare!のプロデューサーを務めるカノウリョウさんが、東京の“ピンチケ”と言われるような若いアイドルファンは2000人説っていうのを唱えたらしいんです。もうそのぐらいまで減ってるっていうのは、実は僕の感覚とも近いんですよ。2000〜3000人だと、もうZeppから先には行けなくなっている。FRUITS ZIPPERの所属する「KAWAII LAB.」だったり、imaginateが手がけているiLIFE!を中心にした「HEROINES」のように、女性のファンをいっぱい連れてこないといけない。そうなった時に、玉屋2060%さんがポップな曲を提供するというのは重要なところですよね。1月にイベントでFRUITS ZIPPERのライブを観たんですけど、その日はほぼお客さんがFRUITS ZIPPERのファンでした。もうみんなミックスなんて打たないんですよ。基本的に女性がペンライトを振っている現場。

岡島:5月には日本武道館でワンマンライブをやりますからね。

宗像:多くのアイドルが武道館でライブをやると解散していく中で、 FRUITS ZIPPERはそんな心配もないし、FRUITS ZIPPERが今アイドルシーンの台風の目ですよね。

岡島:FRUITS ZIPPERが所属するアソビシステムのアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」には、他にもCANDY TUNE、SWEET STEADYとアイドルグループがいます。AKB48グループ、坂道グループ、ハロプロを除いた、WACK以降でようやく次のアイドルプロジェクトが台頭して来たという感じがします。

宗像:FRUITS ZIPPERのプロデューサーである木村ミサさんのインタビューを読むと、事務所側からスピード感を求められた結果、グループにはアイドルとしての経験者が多い、その一方でフレッシュさも欲しいので、アイドル未経験者も入れたということを語っていました。KAWAII LAB.の新しいグループに関しても、いろんなアイドル経験者が入ってきていて、女性ファンが集まる、今や最大のアイドルプロジェクトですよね。

ガリバー:年末の歌番組で「わたしの一番かわいいところ」を出演者みんなで歌う場面があって、全国ネットの地上波レベルでアンセムになっていましたよね。MVPの事務所を選ぶなら、リーダーズも含めてアソビシステムが一番躍進したと思います。

ーー先ほどのばってん少女隊の時にわらべうたの話題がありましたけど、「ぴゅあいんざわーるど」にも〈鬼さんこちら手の鳴る方に〉というフレーズが出てくるんですよね。

ガリバー:玉屋さんがそういう作家ですもんね。

宗像:TikTokに向けた相性がいいんだよね。そういったところにも狙って書ける作家でもあるし。玉屋さんも時代にうまく乗っている。Appale!が武道館を開催できるのも玉屋さんが手がけた「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」あってのことなので、そういった意味でもFRUITS ZIPPERは時代の流れを作る作家をちゃんと呼んでるんですよ。

ーー少し厳しい質問になりますが、ガリバーさんは以前からWACKのファンは『アイドル楽曲大賞』に投票してくれないと嘆いていたりもしましたが、今年のメジャー部門の1位がCYNHN、インディーズ部門の1位がfishbowlでどちらも昨年から2年連続ということで、トップ20位以内のグループの顔ぶれも含めて、正直あまり変わり映えがしないランキングでもあるのかなと思ってしまったのですが、そこについてはどのように思いますか?

ピロスエ:逆に言うと、1年ごとに毎回1位が変わってその年の顔みたいになるのも、それはそれで不自然というか。例えば2、3人の審査員みたいな人がいて、今年のシーンはこうだからランキングはどうだみたいなことを話し合った上での決め方をしているのだったら、1年ごとに顔ぶれが変わっていくような傾向になると思うんです。逆説的に常連みたいなのが決まってきていて、それが上位に来る方がリアリティがあるんじゃないかと僕は思います。そうは言いつつも、アイドルってそんなに長く続くものではないから。新しいアイドルができたり、解散したりしていく中で、順位が変わっていくという感じじゃないですかね。

宗像:Twitterでも「iLIFE!が入ってないからやり直し」という声がありましたけど、それはiLiFE!のメイン層である若年層の女性が投票してくれないからなんだよ。我々『アイドル楽曲大賞』はアイドルシーンのボリュームゾーンと言っても過言ではない女性を取りに行かなきゃならないのではないかというね。 

ガリバー:取りに行かなきゃいけないの(笑)?

宗像:取りに行かなきゃいけないんですよ。iLiFE!とFRUITS ZIPPERのライブの外で「『アイドル楽曲大賞』って言います!」ってチラシを配って。

ガリバー:個人的なところで言うと、もっと坂道ファンに参加してほしいって思いはありますよ。あるんだけれども、例えば、櫻坂46が『2023 Asia Artist Awards』にノミネートされて、ファンのみんなが1位を取ろうというので団結して動いたことがあったんですけど、時と場合によってはチャートハックがあまり良くないケースもあるだろうし。 仮に、坂道ファンが『アイドル楽曲大賞』で1位を取らせようってなったら、それはめちゃくちゃなことになっちゃうし、誰も望んではないですよね。でも、抜け落ちてしまっているアイドルは確かにたくさんあって、XGはメンバーが全員日本人なのでノミネートされているし、ファンもたくさんいるけど、投票は全くされていない。坂道のほかにもLE SSERAFIMとか、K-POPの流れと坂道のファンの人たちが参加してくれていないのは変わらない状況ではあるので、必然的にランキングの変動も少なくなるんじゃないかな。

宗像:プレイヤーがもう女子になってるっていう認識なんですね。XGのライブを11月に観たんですけど、客席はほとんど女性ですし、XGおじさんとしてはタジタジですよ。増田聡さんが指摘していたのですが、若い子たちからしたら、アイドルが憧れの対象だったり、自分を重ねる対象になっていて、かつて言われたような恋愛対象的なものとは違ってきていると。たくさんライブをやってファンを増やしてみたいな流れもあったと思うんですけど、そことは違う展開になってきていますよね。効果的なのはTikTokとテレビぐらいなのかなとも思います。

ーーME:Iがそうですけど、イコノイジョイも女性比率は高いですもんね。

宗像:櫻坂46はファンに女性が多いというのも勢いを盛り返した理由にあると思っています。

ガリバー:そうだと思う。それでもやっぱり男性比率はまだ高いんです。イコノイジョイは本当に女子が多いから。

ーーライブの現場に行っても、特にイコラブは7割近くが女性ファンですね。

ガリバー:そうそう。それに比べると、まだまだ坂道には旧来の客層が残っていて、それでもハロプロの方が女子は多いと思う。

ピロスエ:ハロプロに女性ファンが増えてきたというのは15年前ぐらいからずっと言われてきたことなんですが、それが客観的なエビデンスとして出たのが2022年に放送されたドラマ『真夜中にハロー!』(テレビ東京)です。放送時のプレスリリースに「ファンクラブの男女比は女性の方が上回り」とありました。現場の体感的には半々かな? という気もしますが。

岡島:マニアックなインディーズアイドルの現場にも、“推し活“みたいな感じでオタクっぽくはない女子を見かけるようになりました。

ガリバー:坂道のファンは全体としては保守的な傾向が強いと思います。乃木坂46を筆頭にですけど、TikTokを例にして、宗像さんが指摘していた流れとは逆の動きを明らかにしているんですね。従来からのアイドルファンの受け皿としての役割を乃木坂46やAKB48が担っているけれど、音楽シーンの時代の流れとは逆光しているという印象は拭えない。櫻坂46は去年から徐々にTikTokが回り始めていたり、乃木坂46は6期生オーディションが始まったりする中で、秋元康プロデュースのアイドルがシーンに置いていかれるのか、それともついていくのか。ME:Iを分岐点にしたくはないですけど、2024年は一つの分かれ道になるのかもしれないですね。

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