ときのそら、ダンスが軸の新たなステージ表現に意欲 6周年だから歌えるユニークなテーマも
人気VTuberグループ・ホロライブの“はじまり”となるタレント第1号として知られ、ビクターエンタテインメントと契約してメジャーでの音楽活動を続けてきたときのそら。彼女の最新ミニアルバム『STAR STAR☆T』が3月6日にリリースされた。
この作品は、2023年9月からの6周年イヤーにリリースされるミニアルバムとして、作中でも「6」を様々な形でオマージュ。4月6日に行われる有観客ライブ『6th Anniversary Party「Keep Shinin'」』のテーマとも繋がる、パーティ感全開の盛り上がれる楽曲を多数収録した作品に仕上がっている。
アルバム完成までの制作エピソードや、6周年を迎えたからこその「新しい挑戦」について、ときのそらに聞いた。(杉山仁)
「これまでとは違った自分を見てもらえるミニアルバム」
――6周年イヤーもいよいよ後半に差し掛かっていますが、ここ最近だけでも、AZKiさんとのユニット・SorAZでのリリース&ライブ、そらさん自身のリリース&ライブ、そして3月のホロライブの全体ライブなど、とても忙しそうに活動されていますね。
ときのそら:ライブに向けていろいろとレッスンが控えていたり、アルバムの発売に向けていろんなイベントをやらせていただいていて、忙しいですけどすごく充実しています。5周年でひとつの節目が来て、そこからまた新しい1年が始まったと思っているので、そのいいスタートダッシュになっているんじゃないかなと思っています。
――ミニアルバム『STAR STAR☆T』も新たなスタートを感じさせるタイトルですが、どんな作品にしたいと思っていたんですか?
ときのそら:この作品を作るときにはすでにライブもやることが決まっていたので、そこに向けて「ライブ映えする曲を作りたい」と思っていました。それに、5周年までは歌に重点を置いて曲を作ってきたので、新しい挑戦として「もっとパフォーマンスにも力を入れたい」という気持ちがあって。それで、「ダンスできる曲」「みんなで楽しめる曲」を多めにしたいという話をしたんです。
――なるほど。前作『Beyond』ではバラードに焦点を当てたりと、これまで歌の表現を追求してきたからこそ、今度はダンスにも本格的に取り組んでいこうと。
ときのそら:そうですね。私のライブって一体感や楽しさをテーマにしていることが多いので、どうしてもアルバムを作るときは、次回のライブを意識してしまうところがあって。今回は「みんなで踊れるパーティ」がライブのテーマでもあるので、今まで以上に振り付けのあるダンスをメインにしたライブにしたいと思っていました。今なら技術的にも成長して、ダンスが自然と身につけられるようになってきましたし、みんなからの見え方もより自然になってきていると思うんです。それもあって、歌で表現するというだけではなく、パフォーマンスとして見せていくことも必要になってくると、ずっと思っていました。
――実際にダンスに重心を置いてみて、いかがですか?
ときのそら:もともと振り付けを覚えるのは早いタイプなんですけど、これまでより数が多いのと、完璧にダンサーさんのように手足を使えるかというとそうではなかったりするので、ただ踊るだけではなくて「パフォーマンスとして魅せる」ことが難しいなって思います。そこで、「この角度が一番可愛く見える」とか、そういう部分もかなり意識しています。同じ振り付けでも、ちょっと足のつけ方が違うだけでかっこよくもダサくも見えたりすると思うので、そういうところまで意識しているんです。今回のミニアルバムの曲は、そういう意味でもこれまでとは少し違った自分を見てもらえるものになるんじゃないかな。
――では、1曲ずつお話を聞かせてください。1曲目「Rolling, Loading!!」は6周年がテーマになっていて、歌詞にも至るところに「6」が登場する楽曲ですね。
ときのそら:「6周年ありがとう!」という気持ちがすごく入っている曲ですよね。今回のアルバムは、収録曲が「6曲」というところも含めて「6」を意識した曲が多く収録されています。「Rolling, Loading!!」はその中でも「ありがとう」を伝える歌なので、最後に持ってこようかと思っていたんですけど、6周年の後も活動は続くので、最初に入れることにしたんです。
――歌詞の内容としても、「6」をいろんな場所に散りばめつつ、「まだまだこれからも走っていくよ!」という気持ちが伝わってくるものになっている印象です。
ときのそら:そうですね。いろんなところで「6」が意識されていて、たとえば〈6列目のキミもちゃんと聞こえてるかい!?〉というところは、6を意識しすぎてめちゃくちゃ近いところの話になっていたりして(笑)。「6列目が見えないならほとんど見えてないよ!」と思ったりもするんですけど、これも6周年ならではです。
――「Rolling, Loading!!」という曲名自体も、「6」と語感が合っているように感じます。
ときのそら:私もそう思っているんです。お誕生日をお祝いするような、掛け声も入っている明るい曲なので、ライブでもみんなで盛り上がれるのが楽しみです!
――この曲のボーカル面で意識したことはありますか?
ときのそら:〈よっしゃー!〉とか、そういうサビのところで、楽しさを全力で出していこうと思っていました。賑やかで元気な雰囲気があって、すごく私らしい曲だと思っています。
念願のナユタン星人提供曲 「“私といえばこれ!”という曲にしていきたい」
――2曲目のリード曲「スタースタースタート」はいかがでしょう?
ときのそら:この曲は、私が「ナユタン星人さんに曲を作ってもらいたい!」とずっとリクエストしていて、それが叶った曲ですね。ナユタン星人さんは、(「エイリアンエイリアン」などを筆頭にした“歌ってみた”を通して)活動を始めたばかりの頃の私がいろんな人に知ってもらえたきっかけの方でもあるので、そういう意味でも夢がひとつ叶った感覚でした。私からは、それこそ「エイリアンエイリアン」や「太陽系デスコ」のような、「ナユタン星人さんらしいキャッチーな曲を作ってください!」とお願いしました。あとは、「(キーが)高くなってもいいです」ということはお伝えしていて。
――その結果、サビ前の部分では、高音が得意なそらさんの中でも最高音域であるhihiD(ハイハイディー)に挑戦することになったのですね。
ときのそら:でも実は、瞬発的な高さは「スタースタースタート」がこれまでで一番ですけど、それ以外のパートは他の曲の方が高い部分があったので、レコーディング自体はそんなに苦労しなかったんです。速くてキャッチーな曲って自分らしさが出せるタイプの曲でもあるので、スムーズにできたと思います。hihiDの部分は、ナユタン星人さんにデモを作っていただいた段階ですでにそうなっていました。ただ、そこ以外が私にとっては少し低かったので、むしろもともとのものよりキーを上げていただいて、今のものになりました(笑)。「ナユタン星人さんに作っていただいた曲を歌える!」というワクワク感でそのまま歌わせてもらいました。〈「めっちゃ飛んじゃいたいっ!」〉というセリフを可愛く歌えるように意識したり、〈(ナナナナ ナナナナ ナナナナナ)〉というコーラス部分をみんなで歌えるように意識したりして歌っています。
――レコーディング時の出来事で覚えていることはありますか?
ときのそら:実は今回、曲を流れ通りに歌って録っていったわけではなくて、「Aメロを最初に何度も歌って、次にBメロを何度も歌って……」というふうに、順番を入れ替えて録ったので、新鮮な感覚でした。これはたぶん、テンションが上がりきった状態でサビを録るためだったのかなって。今回はアップテンポな曲が多いこともあって、私のテンションが一番上がりきったときにサビが録れるようにしてくれたんだと思います。
――改めて、ナユタン星人さんに楽曲提供してもらった感想を教えてください。
ときのそら:これはもう、感動でしかなかったです! 私らしさがすごく出ている曲でもあると思うので、「これから毎回ライブで盛り上がる、私といえばこれ! という曲になったらいいな」「そういう曲にしていきたいな」と思って歌いました。ナユタン星人さんに書いてもらったオリジナル曲を歌うという夢が叶ったので、大切にしていきたいと思っている曲ですね。
――続く3曲目「傘賛歌」は、初回限定盤Bの特典の折り畳み傘にも関係する曲ですよね?
ときのそら:そうなんです。折り畳み傘がグッズとしてつくことが決まって、その後に歌詞ができた曲でした。「なんで特典で傘なんだろう?」と思った人もきっと多いと思うんですけど(笑)、実は折り畳み傘って、6本骨のものが多いそうなんですよ。それで「6」にちなんだグッズとして今回つけることになりました。この曲自体も、もともとは全然違う歌詞だったんですけど、途中でグッズに合わせて、歌詞が傘の曲に変わっていきました。
――そらさんのもとに、傘の曲に生まれ変わってやってきたと。
ときのそら:はい(笑)。今回、私も全曲のコンペに参加させてもらって、「この曲がいい!」と選ぶ作業を一緒にさせていただいてるんですけど、これも「メロディが楽しくていいですね!」と伝えていた曲で。そうしたら、その曲が傘の歌に変わってやってきたので、最初はすごくびっくりしました(笑)。
――全編を通して、ただただ傘のことを語っている曲ですもんね(笑)。
ときのそら:そうなんです(笑)。この曲はこれからみんなの感想を聞いたり、ライブでやって初めて本当の魅力がわかる曲なのかなと思っています。大好きなメロディの楽曲で、ライブでやっても絶対に盛り上がると思っているので。ちなみにディレクターさんが「これいいんだよ!」と推している曲でもありました。
――音楽的に言うと、この曲はトランス風のダンスポップになっていますね。
ときのそら:「ダンスがしたい!」という私の要望を形にしてくれた曲のひとつですね。もうライブに向けた振り入れも始まっているんですけど、ダンスにも傘の要素がたくさん入っているので、ライブも楽しみしていてください! 来てくれた人みんなで一緒に同じポーズをやってほしいなと思っています。最初は「どう歌ったらいいんだろう?」とも思ったんですけど、「傘が好き!」という気持ちを込めて歌うことにしました。「傘最高なんだよ!」って(笑)。
――「ナイトキューブパラドクス」はいかがですか?
ときのそら:この曲は、メロディだけのデモを聴いたときに「すごくいいなぁ!」「踊れそう!」と思った曲でした。4月のライブではこれまでとは少し趣向が違う、ダンスがメインになっているパートを作りたいと思っていて、そこにすごく合いそうだなと思ったんです。
――K-POPのライブで、途中ダンスのみのパートが挟まったりするようなイメージでしょうかね?
ときのそら:(取材時点では)まだ決まってはいないんですけど、そういう風にできたらいいなと思っている感覚です。私はもともとK-POPが好きですし、踊りを見て「おおおお!」って盛り上がってもらえたら、来てくれるみんなもきっと楽しいと思うんです。(作編曲の)Kijibatoさんの曲ってクラブミュージック的なリズミカルなものが多いので、そのリズム感を忘れないように歌っていきました。歌詞をそのまま歌おうとしてしまうと、どうしても滑らかに歌いたくなってしまうので、それよりもノリを大事にしています。サビ以外の部分は落ち着いて歌ってほしいとも言われたので、いいバランスになるように、緩急をつけすぎないようにも気をつけて、だんだんと盛り上がっていけるように歌いました。