ときのそら、5周年を経て開けた“新しい扉=バラード”への挑戦 楽しさを共有できたライブへの手応えも語る

ときのそら、5周年を経て開けた新しい扉

 人気VTuberが多く所属するホロライブプロダクションの最初のメンバーとして知られ、VTuber界のアイドル活動をさまざまな形で切り開いてきたときのそら。彼女が2023年最初のリリースとなるEP『Beyond』を完成させた。今回の作品には、草野華余子や近藤世真(Elements Garden)、彼女の初のオリジナルソング「木の芽時の空」の作者でもある路地裏ロジックが提供したバラード曲を多数収録。同時に、昨年9月7日に迎えた活動5周年にまつわる企画として行なわれた楽曲公募企画『soraSong グランプリ』の受賞作品としてkomo(狐妄)による楽曲も収録されている。

 また、初回限定盤には広瀬香美をゲストに迎えてセットリストが異なる昼/夜の2公演を行った5周年記念ライブ『宇宙(そら) と時空(とき)のミルキーウェイ』のライブ映像も収録。アイドルとしての彼女の成長や進化が、さまざまな面から伝わる作品になっている。5周年を迎えて以降の活動で感じていることや、彼女自身が「次の5年に向けての最初の一歩」と語る今回のEPの制作過程について聞いた。(杉山仁)

「ライブを観るだけではなく、体験してもらえたら」

――そらさんは昨年9月7日に5周年を迎えて以降、4thアルバム『Sign』や5th Anniversary Live『宇宙(そら) と時空(とき)のミルキーウェイ』、YouTubeの登録者数100万人突破を記念した100万人記念配信などさまざまな活動が続いていました。その中でも特に印象に残っているのはどんなことですか?

ときのそら:やっぱり5周年記念ライブの『宇宙(そら) と時空(とき)のミルキーウェイ』ですね。このライブは久々の有観客開催でしたし、初めての生バンド編成でのライブだったので、5年間の集大成のようなライブを開催できたことがすごく印象的でした。

 中でも特に楽しかったのは、初めてバンド紹介をしたことです! 前日のリハーサルで急きょ増やしたパートでした。今までのワンマンライブは基本的に私一人だったんですけど、今回はバンドのみんながいて、そらとも(ファンの通称)のみんなもいつも以上に反応してくれて、会場全体の一体感が感じられたのが楽しかったです。「たくさんの方と一緒にライブをつくっている」という感覚が芽生えたライブで、生の音に合わせて歌うことの楽しさを実感しました。

――昼/夜公演ともに実現した広瀬香美さんとの共演も印象的でした。

ときのそら:広瀬さんと一緒にステージに立てる日が来るなんて想像もしていなかったので、緊張もしましたし、本当に嬉しかったです。広瀬さんの生歌はとってもパワフルで、シンプルな言葉になってしまいますが「本当にすごい」と改めて思いました。それ以外だと、ファンのみんながペンライトを虹色にしてくれて、バンドメンバーさんたちも一緒にアンコールをしてくれたのが嬉しかったです。「ペンライトの虹色ってどんなふうに使われるんだろう?」と思っていたんですけど、より一層盛り上がるアンコールになったと思いました。そこが印象に残っていますね。

――バンドメンバーや広瀬さん、そらともの皆さんも含めて「そこにいたみんなで一緒にライブを作れたこと」が思い出に残っているんですね。

ときのそら:ライブは一人ではできないですし、私のライブはみんながいて成立するものだと思っているんです。それもあって、「自分のここがよかった」よりも、「ここでみんなと楽しめた!」が思い出に残っているのかなと思います。もちろん、自分のパフォーマンスを観てほしい気持ちもありますけど、私のライブではパフォーマンスを「わー、すごい!」と思ってもらうんじゃなくて、みんなに私の声を届けることで「来て楽しかったな」「また来たいな」とライブを体験して思い出にしてもらえたらいいな、と思っているので。

――なるほど。観るだけじゃなくて、「参加」してほしいと。

ときのそら:はい。手振りを一緒にやってもらったり、「応援グッズを持ってきてくれたら絶対反応するから!」と言ったりしているのは、そうやって「みんなと一緒に楽しみたい!」ということを伝えたいからなんです。

――そういえば、そらさんは初期の頃から曲の間でお客さんを煽ったり、声をかけて盛り上げたりすることを積極的にしている印象がありました。

ときのそら:私自身アイドルが好きなので、小さい頃、自分がお客さんとしてアイドルのライブに行った時に、「みんなー! 楽しんでるー!?」と言ってもらえたことがすごく嬉しかったのを鮮明に覚えているんです。だからこそ、自分がやってもらって嬉しかったことや楽しかったことをみんなにも魅せたい、という気持ちがあるんだと思います。

――逆に、ライブを続ける中で変わってきたことはあると思いますか?

ときのそら:最初は自分が楽しむだけで精一杯だったんですけど、5年経って成長している姿も見てほしいので、最近は、ずっと苦手意識があったダンスでも魅せられるようにしたいという気持ちが芽生えてきました。ダンスに関しては、本格的にレッスンに行き始めたのはここ1年ぐらいなんです。

――そうだったんですか、意外です。

ときのそら:ライブをしていると、間奏でお客さんを煽れない曲もあるので、そういう曲でも「どうやったら楽しんでもらえるかな?」とたくさん考えた結果、ダンスにも力を入れるようになりました。初期の私の曲はほぼ全部に(アイドル曲らしい)掛け声があったと思うんですけど、『ときのそら 2nd LIVE「パラレルタイム」』の時に、「かっこよく歌いたいけれど、どう動いていいか分からない」という曲がいくつかあって、「もっとステップのような魅せられる要素を入れたい」と思ったのが大きかったような気がします。

アーティストとしての目標は“バラードを楽しんでもらうこと”

――今話していただいた『宇宙(そら) と時空(とき)のミルキーウェイ』の映像は今回のEP『Beyond』の初回限定盤にも収録されます。歌やダンスで特に注目してほしい曲はありますか?

ときのそら:特に「エレクトリカル・サーフィン」は、みんなも楽しめるような歌いながら踊れる振りを考えたのでぜひ観てほしいです。歌だと、私の中で一番難しいなと思ったのが、柊キライさんが作ってくださった「メアリースイート」でした。この曲は力強さを意識したライブならではの歌い方になっていると思います。

――そらさんにとってライブはどんな場所になっていますか?

ときのそら:「みんなと会える場所」ですね。同窓会のような感じというか(笑)。いつも応援してくれているみんなと実際に会えるし、オンラインで観てくれる人たちも一緒に同じように体験して楽しんでくれます。リアルタイムで仲のいい人たちと会える、どの活動よりも大切にしている場所です。

――他に5周年以降の活動で印象に残っていることはありますか?

ときのそら:ドレスが着られるようになったことですね。最初の頃には自分が着ているイメージも湧きませんでした。ずっと元気な雰囲気でみんなと掛け声ができる曲を歌ってきたこともあって、最初は「ドレスを着るような曲が歌えるのかな?」と思っていたんです。でも、今になってドレスで歌っても似合う曲が増えてきて、実際にドレス衣装をお披露目した時にもみんなが「わぁ、綺麗!」と言ってくれたことがすごく嬉しかったです。なんか、「大人になったんだな」って(笑)。

――楽曲の幅もどんどん広がっていますよね。

ときのそら:そうですね。難しい曲や新しいジャンルの曲が増えたりして、チャレンジがどんどん増えてきているのはすごく楽しいです。

――今回のEP『Beyond』にもバラードが多く収録されていて、まさに今ならではの作品になっていると思います。作品全体のテーマはあったのでしょうか?

ときのそら:5周年という節目を経て新たに挑戦する作品なので、“新たな扉を開ける”ということをコンセプトに、“向こう側、一歩先に”という意味を込めてEP『Beyond』を制作しました。中でも「バラードを歌いたい!」ということは強く希望しました。ライブをした時にいつも実感するんですけど、これまでは「ポラリスソラリス」とか「ユメゾラ☆ファンファーレ」のような曲はあっても、しっとりとしたエンディングのような方向性の曲は少なかったのかなと思うんです。個人的にはしっとりとした曲で終わるライブも好きなので、「そういう曲もあったらいいな」という意味で「バラードが歌いたい!」と言っていました。

――音楽性が広がっている今だからこそのテーマかもしれませんね。

ときのそら:そうですね。実は普段からバラードを聴くのはすごく好きなんですけど、「みんなが求めている私になりたい」という意思が強いですし、「それって、きっと元気に歌うようなものだろうな」とも思っていたので、バラードをあまり積極的にやろうとは思っていませんでした。

――以前『Re:Play』の際にお話をうかがった時にも、もともと自分のアイドルとしてのイメージを気にしすぎていたところに、そらともの皆さんが「そんなそらちゃんもいいよ!」と言ってくれてできることが広がっていった、という話をしてくれていました(※1)。

ときのそら:アイドルって、みんなの理想が詰まった存在だと思うんですよ。世の中には色んなアイドルの方がいますけど、みんなそれぞれの理想の姿を追いかけていると思っていて。だからこそ、みんなが最初に好きになってくれた自分とあまりにかけ離れている部分って応援してくれている人には受け入れられないんじゃないかと思っていましたし、大きく変わりすぎるとみんながついてこれなくなってしまうような気がしていたので、最初は特に「イメージを崩さない」ことを大事にしていました。もちろん、今でもそういう部分もありますけど、昔は特に顕著だったなと思います。

――そこから次第に「バラードを歌ってもいいかもしれない」と思えるようになったんですね。

ときのそら:歌枠を増やしたことで、バラードもたまに歌うようになって、そしたらそらともさんに「よかったよ!」と言ってもらえることが増えていって。「ちょっとずつなら歌ってもいいのかな」と思うようになりました。それで、アルバムの中にバラードが入るようになっていって、ちょっとずつ広がってきたのかなと思います。

 私が好きなアーティストの方は、バラードを評価されている方がすごく多いので、バラードも楽しんでもらえるのは、一つの目標でもあるんです。例えば去年の12月に歌ってみたを出した「メリクリ」(BoA)って、誰もが知っているバラードですよね。誰が聴いても「この季節を思い出すな」「この時期になると聴きたくなるよね」と言える曲になっていて。私もいつか、そんな曲を歌えたらいいなと思っています。

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