SorAZ、2人で見せる新しい一面 ときのそら&AZKi、ソロで活動してきた互いへの共感と憧れ
人気VTuberグループ・ホロライブの0期生として知られ、各々がソロでビクターエンタテインメントから音楽作品をリリースしているときのそらとAZKi。今回彼女たちのユニット・SorAZが1stアルバム『Futurity Step』を12月20日にリリースし、同レーベルからユニットとしてもメジャーデビューを果たした。2018年頃から徐々に交流を深め、SorAZとして活動するようになっていった2人に、ユニットのこれまでやメジャーデビューの手応え、アルバムの制作秘話などを聞いた。(杉山仁)
活動を通して一緒に積み重ねてきた思い出
――それぞれにメジャーデビューを果たしているお二人が、SorAZとしてもメジャーデビューすることになりました。まずは今の率直な感想を教えてください。
ときのそら(以下、そら):2人とも同じビクターさんからメジャーデビューすること自体は知っていたんですけど、まさかSorAZとしてもメジャーデビューすることになるとは思っていなかったので、すごく不思議な感覚です。まるで掛け持ちをしているような気分になります(笑)。
AZKi:私は率直に嬉しいです。SorAZはメジャーデビューをする前から一緒にいろいろなことをすることが多かったユニットで、それこそオリジナル曲を歌わせていただく機会もありました。そんなユニットが3年ぶりぐらいに、メジャーデビューという形でまたオリジナル曲を出せるのはとても幸せなことだなぁと感じています。
――もともとはそらさんが先輩、AZKiさんが後輩で、デビュー当初はAZKiさんがそらさんのことを「そら先輩」と呼ぶような関係性だったと思います。そこから、お二人が仲良くなっていったきっかけはあったんでしょうか?
そら:単純に、一緒に何かをする機会が多かったのはあるかなと思います。それに、私自身がホロライブというグループの一員でもありつつも、(活動形態の関係で)1人で活動しているような感覚も強かった時代に、AZKiちゃんも同じようにVシンガーとして1人で活動していたので、どこか仲間のように感じられて仲良くしたいなと思っていました。
AZKi:もともと活動形態が他のホロライブのメンバーとは少し違っていて。音楽を中心にVシンガーとしてやっていくという中で、そらちゃんもアーティストとしても活動していたので、その背中を見て、ああなれたらいいなとずっと思っていたんです。それもあって一緒にコラボしたり配信したりするようになって、今こうして「そらちゃん」と呼べています。
そら:私の中では「だんだん仲良くなっていった」という感覚ですね。
AZKi:最初は事務所のスタジオで挨拶するところから始まったんですけど、そこから連絡先を交換して「こういうことに悩んでて……」と活動のことについて相談する中で、徐々に仲良くなっていった気がします。
そら:うんうん。
AZKi:それを経て今があるな、と思いますね。
――特にお二人が思い出に残っていることはありますか?
そら:私は『アニメ・ゲーム フェス NAGOYA 2020』。このイベントは初めて2人で呼ばれたライブで、それまでソロで呼ばれることはあっても、ユニットで呼ばれることってあまりなかったので新鮮でした。それに、このときは当日結構いろいろなトラブルもあって(機材トラブルでパフォーマンスを一時中断してトークで繋ぎ、後にライブを再開)、2人で協力していいライブにするために頑張っていったのも思い出に残っています。いろいろあったからこそ、スタッフさんも含めて絆が強くなった気がしました。「一緒に乗り切った!」みたいな。
AZKi:確かに。AZKiの場合はSorAZとしての最初のオリジナル曲「刹那ティックコード」(2020年)をスタジオで収録したときのことが印象的でした。収録でそらちゃんと一緒になるのは初めてだったので、私はすごく緊張していたんですよ。それで、そらちゃんが先に録っているのを「わぁ」と思いながら見ていたんですけど、その後AZKiが録るときに、そらちゃんがブースの外ですやすやと寝ていて。
そら:その日、すごく疲れていたんです(笑)。
AZKi:「そらちゃんがAZKiの歌声で寝てくれているぞ!」と思って、そこでちょっと気分がほぐれた気がしたのがいい思い出でした。確か年末に差し掛かってくる時期で、今でも鮮明に覚えているんです。そらちゃんと歌える日が来たんだ、という嬉しさでいっぱいでした。
そら:私も仲間ができた嬉しさや、一緒に歌える子が増えた感慨深さを感じました。当時の私はわりと1人で活動することが多くて、周りもそういうイメージを持っていたと思うんですけど、そんな中でAZKiちゃんと一緒にできるのは自分の中でも新しいことでした。それに、この曲は自分の中でもちょっと印象が違う曲になったイメージもあって。そうやって新しい経験ができることがすごく嬉しかったのを覚えています。
――実際に歌ってみて、お互いの歌声の相性について感じたことはありますか?
そら:一緒に歌っても喧嘩しない声質だということは感じました。やっぱり、人によってはお互いの声がぶつかってしまうことってあると思うんですけど、私たちの場合はそういうことがなくて、どっちがハモリになっても綺麗に合うな、と思ったんです。
AZKi:確かに。いろんな曲を歌っても綺麗なハーモニーになるなって思っています。
――2つ目のオリジナル曲となった「紅藍クロニクル」(2020年)についても聞かせてください。この曲はAZKiさんが作詞作曲をした楽曲ですね。
AZKi:「SorAZで歌う楽曲を書きたい」と思ったので、「何とかできないでしょうか?」と当時のイノナカミュージック(ホロライブ内の音楽レーベル)のプロデューサーにお伝えして。そこから自分の中でこんなメロディがいいかなとか、2人で歌うなら掛け合いを入れたいなとか、2人じゃないと歌えないような曲になるように考えていきました。
――「2人で歌うからこそ」という部分は、SorAZの大事なテーマなのですね。
AZKi:やっぱり、歌うんだったら2人で作り上げる歌がいいなと思っていました。
そら:SorAZの場合は、2人でハモるところがすごく楽しかったりするので!
「“知らない世界を2人で歩いていこう!”という雰囲気がいい」(AZKi)
――そして今回、SorAZとしてのメジャーデビューアルバム『Futurity Step』がリリースされました。アルバムの方向性はどんなふうに決まっていったんでしょう?
そら:「こんな感じでどうですか?」と提案いただいた中で、2人で意見を出し合ったり、「こんな曲がやりたいです!」と伝えたりして進めていきました。そのとき考えていたのは、やっぱり、「1人じゃできない、2人だからできる曲だったらいいな」ということですね。
AZKi:あと、SorAZは“遊び場”がテーマになっているので、普段のそれぞれの活動ではできないことにも挑戦して、「新しい一面を見せられるようにしたい」とも思っていました。
――1曲ずつ制作中のエピソードなどを聞かせてください。1曲目「君と僕はアルビレオ 惹かれ合う彗星テイル」はどんなふうにできていったんですか?
そら:今回はどの楽曲も私が先にレコーディングしていて、その後にAZKiちゃんが録っているんですけど、この曲の私のパートは無音になるところも多かったので、結構苦戦しました。あと、「ウー」「アー」というコーラスも多くて、すごく時間がかかった曲でもありました。
AZKi:コーラスで綺麗に始まる曲なので、私はそらちゃんの声を聴きつつ、Aメロは静かに入っていって、サビでバーンと盛り上がるようなイメージで歌っていきました。歌詞も含めて、これからのSorAZの一歩を踏み出すような曲になっているなと思います。
――タイトルに出てくる「アルビレオ」ははくちょう座の恒星で、2つ重なっているように見える二重星から取られているそうですね。このあたりは、SorAZの「2人だからこそ」という雰囲気になぞらえられているのかなと想像しました。
そら:私もそう思いながら歌っていました。あえて2つの星を選んでくれていて。歌詞を読み解くことですごくエモくなる曲だと思います。
AZKi:ね! 〈連なる二重星 ずっとこのままで〉という歌詞にも表れていて。最後に〈きっと まだ知らない 世界がある〉というフレーズで、「知らない世界を2人で歩いていこう!」という雰囲気で終わっていくのがすごくいいなと思います。
――続く「テレパシー」はジャズの要素なども取り入れた華やかなポップソングで、ホーンやピアノ、そして〈「SorAZ ビーム!」〉という決めフレーズも印象的でした。
AZKi:〈「SorAZ ビーム!」〉のところでそらちゃんが上のキーを歌ってくれていて、2人でハモってビームを出す感じがすごく好きです。
そら:ビームいいよね。
――楽曲の魅力的なポイントになっていますよね。
そら:そうですね。ビームのところは全力感を大事にして歌いました。
AZKi:私も一番そこに力を入れたまである……。あと、曲の中に台詞が入っているのも好きなポイントで、ここもライブでやったときに楽しくなりそうだなと思っています。
――ライブも盛り上がりそうですね。
そら:みんなにもビームを打ってほしいですね。あと、AZKiちゃんがこういう曲を歌うというのも新鮮でした。今回のアルバムには、何曲か普段のAZKiちゃんのイメージとは違う曲が入っていると思うんですけど、“アーティスト”という感じではなく、“アイドル”のAZKiちゃんの魅力が伝わる曲になっていて可愛いなと思いました。
――続く3曲目「せーので!」はいかがでしょう?
そら:この曲は〈ready go !〉のところが、めちゃくちゃ高くて大変でした……!
AZKi:でも、そらちゃんの高音はすっと入ってきますよね。SorAZでは高音はそらちゃんが担当してくれています。
そら:パート分けを見ても、お互いの得意な音域の違いが結構出ているんですよね。これが私とAZKiちゃんの音域の違いなんだなと改めて感じました。〈ready go !〉の部分は、ぜひみんなで一緒に歌ってほしいです。ライブが意識された曲だと思うので。
AZKi:あと、〈わたしたちの夢のファーストブレス〉という歌詞があったり、〈遊ぼう〉というSorAZのテーマを入れてもらっていたり……他にも、曲の中にいろいろなモチーフを入れてくださっていて嬉しかったです。歌詞をよく見ると2人のいろんな要素が入っています。
そら:歌詞にも注目してみてほしいですね!
――4曲目「ハジメノイッポ」はナユタン星人さん節全開の楽曲で、“遊び場”というテーマが音や歌詞に反映されている印象です。
そら:この曲は私がよく歌うタイプの楽曲で、2番の〈Yeah!!〉を歌ったときに、レコーディングエンジニアさんの「すごっ」という声が聞こえてきたのが印象に残っています(笑)。レコーディングが一発OKぐらいの感じだったんです。ライブでは「みんな、その台詞を言ってくれるのかな」と思いながら歌っていました。
AZKi:すごく元気な雰囲気が出ていますよね。私もそらちゃんの歌声を聴きながらノリノリで歌えたのが幸せでした。あと、サビの後半でめちゃくちゃ早口なところがあって、ここは結構苦戦しました。ノリノリで歌いすぎてもリズムにちゃんと乗っていないといけないので、すごく楽しく収録できた曲でした。
――次の「恋愛コスモロジー」はクラブミュージックの要素が強い楽曲ですね。
そら:この曲は音の流れが独特で、ハモリも結構多いし、お互いが歌っている音が結構違う楽曲です。一つひとつの音に当てていくのが大変で、結構難しかった記憶があります。
AZKi:私はレコーディング用の資料を見て覚えるときに、先に収録していたそらちゃんの歌のラフミックスをいただいたので、それを聴きながら覚えていきました。そうしたら、歌詞にない合いの手が結構入っていたんですよね。
そら:その場で「ここに入れられるかも?」「やるか!」という感じで入れたパートだったと思います。最初と最後の〈アイガタリネーナ〉のところも、同じように加えた部分だったかな。このあたりのフレーズや合いの手も細かく自分たちで歌っていて、現場で「ここに入れよう!」と考えながら進んでいったんです。
AZKi:レコーディング現場でいろいろと変わった曲なんですよね。歌詞には載っていないと思うんですけど、サビに合いの手が入っていて、「そらちゃんがオタクしてるぞ」と(笑)。ここはもともとの歌資料にはなかったので、新しい要素が入っていてびっくりしました。その方が曲として盛り上がるし、キャッチーでいいなと思いながら歌った記憶があります。そらちゃんについていけるように、合いの手もパワフルに頑張りました。