Mrs. GREEN APPLE、藤井 風、XG……今求められるのは“自分を愛すること”を歌う曲? セルフラブの重要性
最後に、XG「MASCARA」も紹介したい。この歌は、冒頭の〈Ladies you ready?〉という呼びかけが表すように、明確に〈Ladies〉に対して捧げられているものでもある。先に紹介した「ケセラケラ」や「grace」などは、ありとあらゆる聴き手にメッセージを届けることを見据えた極めて普遍性の高い楽曲たちだった一方、それらと向いている方向が異なるとも言えるこの曲は、対象が限定されているぶん、メッセージがよりシャープで、何よりパワフルである。
〈XG cute and nice〉〈But we don’t ever let you mess up twice〉――。まずは、キュートでナイスなXGが、その最強の自己肯定感を一人ひとりのリスナー〈you〉に共有してみせると力強く宣誓。その後に続くのは、自分のことを大切にしてくれない〈he〉(=彼)になんて振り回される必要はない、という呼びかけで、〈I’ll never let another boy ruin my mascara〉(絶対に誰にも私のマスカラを汚させない!)、つまり「誰にも泣かされない」という渾身のパンチラインが非常に強烈だ。
この曲はシスターフッド、つまり女性同士の連帯を強く感じさせるものでもあるが、これはあくまで一例にすぎず、日本や世界の音楽シーンには、様々な属性やコミュニティに特化したセルフラブソング/セルフケアソングが多く存在している。
誰もが、それぞれの生きづらさや抑圧を感じながら生きている2020年代において、これから先、音楽はどのような役割を果たしていくのか。引き続き、注目していきたい。
藤井 風、「花」MVのダンスシーンが持つ意味 “死生観”と“転生”の解釈
ドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ系)の主題歌「花」を担当した藤井 風。11月3日には、バラードやデモなど、4バージョンが収…