『薬屋のひとりごと』猫猫と壬氏の心情を浮き彫りにする楽曲 Uruとwacciが描く繊細な感情
後宮で“毒見役”として働く薬師の少女が難事件に挑む“後宮謎解きエンタテインメント”『薬屋のひとりごと』。シリーズ累計3,100万部を超える大人気シリーズのテレビアニメ『薬屋のひとりごと』(日本テレビ系)第2クールの放送が1月6日からスタートし、大きな注目を集めている。
本稿ではアニメのオープニングテーマ「アンビバレント」(Uru)、エンディングテーマ「愛は薬」(wacci)に注目。『薬屋のひとりごと』の世界観や物語にインスパイアされた2曲の魅力を紐解いてみたい。
テレビアニメ『薬屋のひとりごと』第1クールでは、花街育ちの主人公の猫猫(マオマオ)が、とある大国の帝の妃たちが住む後宮で巻き起こる数々の難事件を解決。終盤では後宮を解雇され、古巣の花街に戻るところまでが描かれた。第2クールは猫猫が宦官の壬氏に身請けされる形で宮廷に戻る場面からスタート。しかし新しい職場は慣れ親しんだ後宮ではなく、外廷にある壬氏の家。壬氏に厄介ごとを頼まれながらも、猫猫は謎や事件を解き進めていき、物語は猫猫の生い立ちに迫りつつ、後宮を巻き込んだ事件も発生しながらさらに加速していく。
様々なキャラクターの想いが交差する第2クール。そのオープニングを飾っているのが、Uruの「アンビバレント」だ。
Uru「アンビバレント」が描く、2人の揺れ動く関係性
華やかさ、爽快さを感じさせるイントロで幕を開ける「アンビバレント」。これまでは憂いを帯びたバラード楽曲のイメージが強かったUruにとってこの楽曲は明らかに新機軸だ。切なさを滲ませながら、心地よく突き抜けていくメロディラインは、複雑な生い立ちでありながら、力強く生きる猫猫のイメージともしっかりと重なっている。田中隼人による、軽快なビートにストリングスをたたえたアレンジも鮮やかで秀逸だ。
Uru自身が手がけた歌詞は、壬氏とリンクさせながら書かれたという(※1)。〈いつだって君は恐れを知らず/好きなものに夢中な猫みたいで〉という冒頭のフレーズは、“壬氏から見た猫猫”がモチーフだと思われる。猫猫に対して特別な感情を抱いているが、それが恋愛感情だということに壬氏自身も気づいていない……という「アンビバレント」という楽曲タイトルに通じる心情と、少しずつ近づいていく2人の関係性を、Uruは歌詞のなかに美しく反映させているのだ。そのことを端的に示しているのが、〈揺れる、揺れる、この気持ちはどこかにしまったまま/今はここでただ横顔を見てる〉というライン。身分、生まれ育ち、立場、価値観などが異なる二人の間に流れる、繊細で切ない感情、そして、確実に強まっていく絆を詩的な表現で綴った楽曲だと思う。