Ken Yokoyamaから届けられた“生きる讃歌” 最高傑作を更新したアルバム『Indian Burn』完成インタビュー
「生きてることバンザイな曲ばっかり」
一一はい。そしてシングルの「These magic Words」。LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で初めて聴きましたけど、強い曲ですね。一緒に歌った時の元気の湧き方がハンパない。
横山:……やっぱ、言霊なのねぇ。
一一(笑)。ここまでシンプルなサビ、南さんはどう思いました?
南:照れくさいですよね。
横山:ははは! 〈Oh Yeah, It’s alright〉は俺が先に作っちゃってたしね。
南:やっぱ〈Oh Yeah, It’s Alright〉って照れくさいですよ(笑)。でも全般的に子どもに向けた曲だっていうのは一瞬でわかったので。それって今までなくはなかったから、違和感はなかったんですよ。あと曲がすごく好きだった。今回の曲で一番好きな曲。ぴったりの歌詞ができたなって思いますね。
横山:うん。シングルシリーズの最後はこれしかないと思ったし。アルバムでも中核をなすだろうっていう手応えは、最初からすごくあったかな。
一一はい。アルバムのテーマが軽くないのはすでにわかっていたと思うんですけど、途中には遊びの曲がいくつもあります。「New Love」とか「Long Hot Summer Day」とか。これって後からバランスを見て書き足していくんですか?
横山:そんなこともない。途中途中で突然こういう曲が出てくるんだよね。「ここはもうちょっと遊びが必要だな」とか考えたわけでもなく。たぶん自分でガス抜きしたくなるんだろうな。無意識でバランスは取ってるのかもしれない。
一一インスト曲はどうでしょう? 「Indian Burn」。なぜこの曲がアルバムタイトルになったのかも含めて、教えてもらえますか。
横山:ちょっと話が曲から離れちゃうけど、今回作り終わった時に、タイトルをどうしようって考えたら、ぞうきん絞りが自然と浮かんできたの。過去の文化がたくさん入ってるバケツにぞうきんを入れて、絞って絞って、カラッカラになって、まだ出るか? みたいになってる状態。そういったイメージが楽曲群にあって。だから、それぐらい大変な作業でもあった。大変なあまりアルバムの意味も一回は見失ったし。こんな大変なのに人に聴かれないなんて意味がない、嫌だなぁと思って。そこからシングルシリーズへと考えが発展したり。一一あぁ、なるほど。
横山:このアルバムの曲だけじゃなくて、ここ数年、ほんとに自分にとって制作ってすごく大変なものになってる。クオリティは下げたくないと思う反面「ほんとに聴かれるのかしら? これは情熱とかエネルギーの無駄なんじゃないか」なんてことも考えるし。そういう気持ちのアップダウンもあって、とにかく、ぞうきん絞りっていうイメージだった。でも英訳しようとしたら、いいものが見つからなかったの。俺が思うぞうきんに相応しい英語がなくて。ただ、絞って絞って作ったイメージはタイトルに残しておきたくて、それで他のキーワードを探したら「Indian Burn」って言葉が。
一一これは、人の腕をぞうきんみたいに絞ることらしいですね。
横山:そう。子どもがやる意地悪だか罰ゲームだか。腕をひねる行為を「Indian Burn」とアメリカでは言うらしい。この言葉なら、俺の大変だった気持ちや風景も残るし、そのわりにはキャッチーだなと思って。それでタイトルにしました。で、このインストには最初別のタイトルがついてたんだけど、アルバムのタイトルが決まった時に、この曲「Indian Burn」でよくね? って話になって。
一一最初のタイトルは何でした?
横山:「Chip Pie」。コーラスでも歌ってる。寄せ集めで作ったパイのことなんだけど、当然狙いはそこじゃなくて。これ、「Chip Pie」を速く言うと……チッパイ……ちっぱい。ふふふ。
一一もう、けっこうです(笑)。
横山:ははは! マスタリングまでは「Chip Pie」だったんだけど、タイトルがこれってどうなのかなぁって。どうも腑に落ちない。いや腑に落ちるわけがないんだけど(笑)。それでタイトルだけ「Indian Burn」に移行したという。
一一続いて、私が一番重いと感じたのが「Deep Red Morning Light」です。他の曲はどんな重いテーマでも明るく伝えようとしてるから、ここだけエモ成分がぐわっと出てくる。
南:なるほどね。この歌詞、一回書き直してますからね。なんか最初は温度が違う歌詞だった。
横山:俺の中ではテーマは変えてないんだけど、最初はもっと軽かった。
一一どういうものを書きたかったんですか?
横山:小さい時は時間も希望もたっぷりあったけど、大人になって「どうしてこうなった?」って思うような。そういうことを描写したくて。それは僕個人にも経験があるから。あと、たとえば一晩中遊んでて、日が昇ってきて、眩しい朝日を見たりする、そのハイテンションな感じって今の自分にはないなと思う。あの時はすごい希望があったはず。今はいろんなことを達成した代わりに、そういう興奮自体はなくなってしまったよな……っていうことを描写したかったのかな。
南:俺、「あぁなるほど、健さんにこういう一面ってあるんだ」って思いましたね。こういう歌詞、なかなか書いたことないじゃないですか。一一珍しいですよね。主語の〈We〉は誰を指しているんでしょう?
横山:それはね、俺の友達。この歌詞に出てくるのは、二人組だったり三人組だったり。そういった風景なのかな。
一一その中にはハイスタも入ってます?
横山:あー、この曲には入ってないかな。言われてみれば当てはまるな、とは思うけど。ハイスタのことだったら、それこそ「Long Hot Summer Day」を書いた時に頭にあったりして。一番最後のブロックに〈もしかしたらオレは/世界を変えちまうかもしれない/オレが今日するなにかでね〉って書いたんだけど、たとえば『Growing Up』ってアルバムの中の一曲が書けた日。それがそんなに人々に受け入れられるなんて思ってなかった頃。その瞬間は、ただ単に自分たちの曲ができあがっただけじゃない? もちろん世界を変えたとまでは言わないけど、いろんな人の人生に入り込んでいくことになるなんて予想もしてなかった。だから恐れずにやればいいんだ、思ったことを思い切りやればいいんだ、ってことを伝えたかった曲。
一一はい。そしてラストナンバーの「Heart Beat Song」。これはもうラストと決めて書いた曲ですか。
横山:いや、そうじゃないんだけど、書いたら、これがラストだなと思った。「Parasites」が一曲目であるって決めると同時に、「Heart Beat Song」で締めたいなと。最初はこれを一曲目にしようって説もあったよね?
南:そうですね。歌詞ができる前は。
横山:でも書いてみたら、「Parasites」一曲目で「Heart Beat Song」がラストっていうのはマストになって。そこは決めてた。
一一強い曲です。ここ数年考えていたことを詰め込み、書き切るような。
横山:そうね。言葉にするとそういう感じかな。ここ数年を、ほんとスピード感あふれる言葉で書き切る。長い時間軸の中にあるものを、できるだけ簡単な言葉にするっていう歌詞の手法で。案外やったことないかも。
一一自分に言い聞かせてます? それとも託す相手の顔が見えているのか。
横山:あー、どっちとも違うな。なんだろう? ただ言いたい、ただ歌詞にしてみたいっていうだけだった。あと、サヨナラを意識するっていうことは、前作ぐらいから増えてきたから。それこそ「While I’m Still Around」とか。
一一あの曲には感謝があり感動があった。でも今は〈全力で生きてやるよ〉宣言が出てくる。
横山:……どうだろうな? もちろんこの曲も十分感動的だと思うんだけど。
一一あ、もちろん。ただ、イントロのギターやメロディラインだけを取れば、こんなに速いツービートを合わせなくてもいいと思うんですよ。まだ暴れる気持ち、前に行くぜっていう気持ちが前に出てくる印象があって。
横山:あぁ。そうね。やっぱり感動よりも疾走を求めたかな、この曲は。もうちょっと大きなゆったりしたビートで仕上げていったほうが、曲としたら感動的になったかもしれないけど。これはもう疾走とか衝動、そういうものを入れ込みたかったんだよな。
一一『Best Wishes』を思い出すって最初に言いましたけど、あの作品は「愛の讃歌」のカバーで終わりますよね。あれも普遍的で感動だったけど、今回は自分の言葉で、この速度で締めるから。より勇気が出る感じがします。
横山:あぁ。そうね。「泣かせはいらねぇ」ってことだよね。
一一はい。最高傑作が更新されたな、と思うゆえんです。
横山:よかった。もしかしたらツネが亡くなったことの反動なのかもしれない。今こうやって一曲一曲を客観的に話してても思うけど、これは生きる讃歌なんだね。命バンザイ、生きてることバンザイな曲ばっかり。それが寄生虫になったりハートビートになったり、クソの山になったりはしてるけど。いろんな形にしながら、生きてることバンザイのアルバムを作ったんだなって、それは自分でも思いますね。
■リリース情報
『Indian Burn』
発売:1月31日(水)
初回盤 ¥3,500(+税) ※CD+DVD
通常盤 ¥2,500(+税)
予約はこちら(チェーン別特典あり)
https://KenYokoyama.lnk.to/IndianBurn
【CD】
1.Parasites
2.My One Wish
3.A Pile Of Shit
4.Show Must Go On
5.These Magic Words
6.New Love
7.Better Left Unsaid
8.Indian Burn
9.Deep Red Morning Light
10.Long Hot Summer Day
11.A Little Bit Of Your Love
12.Heart Beat Song
【初回盤 DVD】
「Ken Yokoyama -不滅楽団編-」
現メンバーのインタビューを中心に、Ken Yokoyamaの近年を追ったドキュメンタリーを収録
■ツアー情報
『Indian Burn Tour』
2月16日(金)渋谷 Spotify O-EAST
w / 10-FEET
2月17日(土)横浜 F.A.D YOKOHAMA
w / FOMARE
2月23日(金)埼玉 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
w / ENTH
2月25日(日)水戸 LIGHT HOUSE
w / ENTH
3月2日(土)盛岡 CLUB CHANGE WAVE
w / locofrank
3月3日(日)仙台PIT
w / locofrank
3月9日(土)広島 CLUB QUATTRO
w / dustbox
3月10日(日)高松 MONSTER
w / dustbox
3月26日(火)新潟 LOTS
w / KUZIRA
3月27日(水)金沢 EIGHT HALL
w / KUZIRA
4月7日(日)福岡 DRUM LOGOS
w / TBA
4月8日(月)長崎 DRUM Be-7
w / TBA
4月13日(土)Zepp Osaka Bayside
w / TBA
4月20日(土)Zepp Nagoya
w / TBA
4月26日(金)立川 STAGE GARDEN
w / TBA
■8thアルバム『Indian Burn』特設サイト
https://www.pizzaofdeath.com/ken8thalbum/