家入レオ&加藤ミリヤ、女性としての苦悩や自分らしい生き方を語り合う 『Women In Music vol. 2』開催直前対談

 2024年2月8日に、Billboard主催のライブイベント『Women In Music vol. 2』が開催される。

 『Women In Music』は、自身の活動を通じて社会をエンパワーするかっこいい女性たちやそれを支える人々を多角的に紹介し、よりインクルーシブな社会を目指すプロジェクト。そのライブイベントの第2回となる今回、家入レオと加藤ミリヤのふたりがフルオーケストラと共にパフォーマンスする。

 今回リアルサウンドでは、家入レオと加藤ミリヤの対談を企画。イベントのオファーを受けた際の心境をはじめ、幼少期の女性としての自覚、それぞれが思う憧れの女性の理想像、そして今回のオーケストラとのパフォーマンスまで、語り合ってもらった。(伊藤美咲)【記事最後にプレゼント情報あり】

それぞれの幼少期の葛藤、“女性”であることへの自覚

ーー加藤さんと家入さんは、イベントのオファーを受ける前から面識はあったのでしょうか?

加藤ミリヤ(以下、加藤):これまでレオさんとの面識はなくて、実はこのインタビューで初めて顔を合わせました。私とレオさんは、自分の内面を掘って歌を書くことができる人という共通点があると思っています。それに、すごく話しやすくて、頭のいい方だなと。

家入レオ(以下、家入):嬉しい! ありがとうございます。自分も10代でデビューした時、やりきれない想いや、ふとした瞬間に感じる「あの時傷ついたな」「笑っていたけど悲しかったな」という思いを歌詞にしていたんです。私は上京するまで中高で女子校に通っていたんですけど、周りの子たちがみんなミリヤさんの曲を聴いていて。今回そんなミリヤさんと一緒にイベントに出演することが決まってすごく嬉しいです。「世のなかの女性たちは普段見せられない想いを馳せながらミリヤさんの曲を聴いているんだろうな」と感じました。

ーー今回イベントのオファーを受けた時の心境はいかがでしたか?

加藤:私自身、デビューしてからずっと女性をエンパワーすることを掲げてきたので、「これは私に適任なイベントだ!」と思いましたね。女性の地位向上などを掲げているイベントは多々ありますけど、ここまで声高らかに明言しているものは貴重ですよね。自分がステージに立たせてもらうからには何かしらのメッセージを残さないといけないですし、私自身もイベントを通じて何か気づくことがあるんじゃないかと思っています。普段のライブとはまた違う責任感もあるけれど、シリアスにならず、ポジティブなメッセージを発信できたらいいなと思います。

家入:私は、女性として「結婚や出産、これから人生をどう選択していこうかな?」とあらためて考え始めたのは、20代後半に差し掛かってからなんですよね。女性は社会に出て働きながらも「このままでいいのかな?」「結婚したとして子どもはどうするのかな?」と、いろいろ考えると思うんです。

 ミリヤさんはご結婚されていてお子さんもいるなかでアーティスト活動をしている側面からのパワーをもらえますし、私はまだ模索している最中なので、モヤモヤを抱えている人には「私だけじゃないんだ」と思ってもらえるんじゃないかな。「今の葛藤を抜けたらミリヤさんのような光が待っているんだ」といった多角的な見方や発見があるといいなと思います。女性をエンパワーする素晴らしいイベントですが、最終的には女性がフィーチャーされるイベントがなくなるくらい、精神的に男女平等が当たり前な世界になることが望ましいと思っています。その一歩として、このイベントに参加できる喜びを噛み締めながら歌いたいです。

ーーおふたりは、幼少期や学生時代はどのように過ごしていましたか? 女性として悩んだことなど、ありましたか?

加藤:私もレオさんと同じで中学校は女子校に通っていたんですけど、私自身は生徒会長をやるようなリーダータイプだったんですよね。それに、子どもの頃に母から「思っていても言葉にしなかったら伝わらないから、思ってないのと同じ」と言われたことをきっかけに、自分の意見をはっきり伝えるようにしていたので、性別などがネックになって発言できなかったというような経験はなくて。だから、社会のなかでの生きづらさは感じていなかったけど、“学校”という狭いコミュニティのなかでマイノリティを感じることはありました。「みんなと一緒じゃなきゃいけない」という風潮を感じるモヤモヤをひたすら歌詞に書いて、それで歌手になったんです。モヤモヤがあったからこそ私は歌手になれたけど、今は世のなかが変わりつつあって、いろいろな生き方があるなと思います。

ーー年を重ねるにつれて、歌詞に落とし込む内容はどのように変わりましたか?

加藤:10代の頃は大人に理解されなかったことや「あなたはこうだよね」と決めつけられることがすごく嫌で、「絶対に誰も私のことをわかってくれない」と言っていましたね。女の子が恋に翻弄される様子も歌にしてきましたし、20代になってからは、まさに先ほどレオさんも言っていたように「私このまま突っ走っていいのかな」「何か失っていたらどうしよう」といった、社会に出てから感じた葛藤を書くようになったんです。

 当時の言葉はその時にしか書けないし、その歌詞を必要としてくれた人も確実にいたと思います。実際に自分もそのひとりですし。だから、歌詞の内容は変わっても、常に今の自分と向き合って生きているのは変わってないと思います。

ーー家入さんは、幼少期や学生時代を振り返ってみていかがですか?

家入:私は子どもの頃、引っ越しの多い家庭だったんですよね。おもちゃをたくさん持っていけないぶん、道具を必要としない歌が大好きになったんです。意外かもしれないんですけど、中高で女子校に入ってから私も学級委員をやっていて。いつでも明るく振る舞うようにしていたんですけど、「中学から大学までの一貫校にいるということは、一度でもミスをしてしまったら10年間友達がいない人になるんだな」と思うようになってから、なかなか本音で話せなくなっちゃったんです。友達はたくさんいても、「誰も本当の自分を知らないんだ」という虚無感がずっとあって。そんな時に、尾崎豊さんの「15の夜」を聞いて、“シンガーソングライター”という作詞作曲をして歌う職業があることを知り、自分で曲を作るようになりました。明るく振る舞う反動から、自分の弱さや行き場のない感情を音楽にすることが多かったように思います。

 デビューした時は、まだSNSも今ほど普及していなかったので、曲のダークなイメージだけが広まることに葛藤を覚えることもありました。でも、「自分の印象をすべてコントロールはできない。不可能」と気づいた時に、楽になったんです。「自分が信じた自分でいられたら、他の人がどんな印象を持っていても大丈夫」と思えるようになってからは、さらに歌うことが楽しくなりました。みんな、生まれながらに役割を持っていて、私の場合はたまたまそれが歌を歌うことだっただけ。私もみんなと同じように悩んだり泣いたりしたけど、そこを通過した魂が純度の高い本当の自分だと思っています。「これは自分じゃない」と思いながらやってみたものもあったけど、それを選択したのも自分。いろいろなことを経験したからこそ、また楽しいことがやってくると思っているので、「30代も楽しいだろうな」とワクワクしています。

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