家入レオ、貫禄の歌声で分かち合った再会の喜び ありのまま音楽と向き合ってきた10周年の集大成
デビュー10周年を迎えた家入レオが、2月20日に『10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター』を開催した。開演時は過去のライブ映像の後、カウントダウンでスタートするというドキドキの幕開けで、ステージ中央にスポットライトが当たると、そこに真っ赤な衣装に身を包んだ家入レオが登場。1曲目「恍惚」の途中で紗幕が上がると、バンドの演奏も彼女の歌声もさらにボルテージが上がり、冒頭からかなりダイナミックかつエモーショナルな展開に。
重厚なビート感の「Linda」や「Fake Love」を続けて披露し、MCでは「お客さんの顔を見ながら歌うのは2年半ぶりです。今日はどんな気持ちになるかなってワクワクしてたけど、もう胸がいっぱいになった。ありがとう」と早くも感極まっていた様子。そう、この日は10周年記念ライブでもあり、自身にとって2年半ぶりとなる有観客ワンマンライブでもある。「去年の夏にこのライブが決まってから、こんなにたくさんの曲をリリースしてきたんだなと改めて思って、セットリストを決めるのが大変でした。限られた時間ではありますが、刻んできた日々をみんなで共有できたらと思います」と、このステージに向けてきた強い気持ちを語った。イントロからオーディエンスの手拍子と共に、会場いっぱいに雄大な景色が広がるような輝く歌声を響かせたのは「太陽の女神」。「この曲たちを、この曲順でやりたいんです」と自ら舞台演出を説得したという、こだわりのセットリストがこの後も続々と披露されていく。
「みんなやっと会えたねー!」と、時折呼びかけながら歌っていた「僕たちの未来」など、10年という歳月で培ってきた、家入レオとファンとの絆を感じさせるシーンもあった。華奢な体ながら、一つひとつの動きがとても大きく見えるパフォーマンスには、やはりカリスマ性を感じずにはいられない。そんな彼女がステージの左右に駆けていき、観客を見渡しながら歌う姿に心打たれる。そして「このライブで想いを伝えるために曲を作ろうと思いました。会っていなかった2年半、みんなのことを考えていました」と、ベストアルバム『10th Anniversary Best』に収録されていた新曲「花束」を披露。みんなでまたこうして再会できたこと、10周年をお祝いできたことの喜びが真っ直ぐで柔らかな歌声に乗り、曲に込めた感謝の気持ちが会場いっぱいに広がっていった。
衣装が赤から黒へとチェンジした中盤の「Silly」からのパートは、ポップなだけではない家入レオの魅力ともいうべき、生きていく上での苦悩や孤独を歌ったシリアスなナンバーが続いた。赤い照明の中、ドラマ主題歌としてヒットした「もし君を許せたら」や「未完成」における緊張感のあるステージング、深みのある表現力には貫禄さえ感じた。そして、アルバム『DUO』(2019年)の制作において作詞・作曲・編曲をシンガーソングライターの小谷美紗子に委ねた「JIKU」をここで歌ったことも印象深かった。このパートの前に家入が一度ステージを去って、スクリーンに「10年前の私へ」から始まる、自身に宛てたメッセージが流れたが、それは17歳から27歳という人としても大きく成長する時間を、時に思い悩みながら不器用に、かつ正直に音楽と向き合ってきた道のりを思わせるものだった。そんな彼女だからこそ生み出せた、傷だらけの勲章のような楽曲たちを大切に歌う姿がこの夜のハイライトだった。