アイナ・ジ・エンド、激動だった2023年の集大成 BiSH卒業後の覚悟を滲ませた最新ソロ公演

アイナ・ジ・エンド、ソロとしての覚悟

 アイナ・ジ・エンドがワンマンライブ『BACK TO THE (END) SHOW』を1月10日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催した。ソロでのワンマンライブは約2年ぶり、昨年6月のBiSH解散後では初ということもあり、会場には熱心なファンが多数集結。ソロアーティストとして本格的にスタートを切った彼女の門出とも言えるステージを見届けた。

アイナ・ジ・エンド
アイナ・ジ・エンド

 開演を待ちわびるホール内に不意にクールなダンスビートがフェードインしてくると、それに合わせて客席の照明も徐々に暗転していく。すると緞帳が下りたままのステージ幕前に6人のダンサー隊がぬるりと姿を現し、おもむろに舞踊パフォーマンスを開始。客席はこれに手拍子で応えた。そして開演ブザーが場内に鳴り響くと、ゆっくりと緞帳が上がっていき、舞台上にスタンバイしていたアイナが焦燥を抑え込むような歌声で〈朝露が緑の歌をうたっていても〉と歌い出す。静と動が入り乱れるダイナミックなEDMナンバー「帆」で、ステージは文字通り幕を開けた。

アイナ・ジ・エンド

 舞台上には深紅のカーテンが幾重にも掛けられており、中央のアイナを囲むように半円状にポジションを取る6名のバンドメンバーたちの奥には、一段高い踊り場も設置されていた。クラシカルな演劇の舞台を思わせるようなステージセットをバックに、アイナは変幻自在のボーカル表現で空間を制圧していく。鮮烈なオープニングナンバー「帆」で悲痛なメッセージを叩きつけたかと思えば、一転してキュートなダンスで魅了するスウィングナンバー「ZOKINGDOG」、妖艶なラテンロック歌謡「NaNa」を続けざまに投下。さらには「華奢な心」「アイコトバ」といった穏やかなバラードナンバーを連投するなど、多彩な表現でみるみるうちにオーディエンスの心を引き付けていった。

アイナ・ジ・エンド

 続くMCでは、激動の2023年を振り返ったアイナ。「人生のすべてだった」というBiSHの解散、主演映画『キリエのうた』の公開など大きな出来事が重なった中で「私、2023年は『キリエのうた』にすっごく救われました。映画を観てくれた人はわかると思うけど、すごく自分は路花と似てました。いろんなところが」ととつとつと語った。そして客席にいるはずの岩井俊二監督へ無邪気に声をかけて会場のムードを和ませるひと幕なども挟みつつ、アイナはダンエレクトロを抱えて映画の劇中曲「名前のない街」「幻影」をショートバージョンでバンドとともに披露。さらに「キリエが遊びに来てるみたいですよ?」といたずらっぽく告げると、アイナ・ジ・エンドとしてではなくKyrieとして映画の主題歌「キリエ・憐れみの讃歌」をドラマチックに歌い上げた。

アイナ・ジ・エンド

 その後も次々に鋭利な楽曲群を畳みかけ、1曲ごとに会場のムードをがらりと塗り替え続けていく。「家庭教師」で場内は一瞬にして陽気なダンスフロアと化し、転換インストナンバーを挟んでの「Red:birthmark」では壮大なスケールの世界観を表現。「虹」においては突如ステージ上空から紗幕が落とされ、憂いを帯びた表情で歌うアイナが大写しになった映像がそこに投影される幻想ホラーテイストの光景が繰り広げられ、「あぁ揺れてる」で穏やかなヒーリングムードにオーディエンスを包み込む。

アイナ・ジ・エンド

 かと思えば、舞台中央に革張りのソファが持ち込まれて披露された「静的情夜」ではトラッドとアバンギャルドが同居したようなコンテンポラリーパフォーマンスで聴衆を魅了し、AORテイストのソウルポップナンバー「彼と私の本棚」ではバンドメンバーの紹介も交えながら、ハッピーで軽快なライブ空間を形成した。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる