連載『lit!』第83回:マサラダ、naraku、謎J、まど枠……2024年注目すべきボカロPのニューカマー
謎J「某国のハロウィン」
ダークエレクトロなシンセサウンドとキャッチーなフレーズが耳に残る「某国のハロウィン」。ハロウィンをテーマにしたこのMVには、謎Jの楽曲において常連の黒いジャケットを着た青年が登場する。主人公は、ハロウィンの由来を知らないまま、流行りに乗って仮装を楽しむ若者たちに怒りをぶつける。同曲は、ハロウィンというお祭りを通じて、本当の事情を知らないのに、すぐに批判や中傷をする現代のネット社会にも、警鐘を鳴らしているように思える。謎Jの楽曲に共通する現代社会への鋭いメッセージが詰まったトラックだ。
まど枠「多っ多」
同曲では、MVのイラストに使われたキャラクターの淡い色使いと、遊び心に満ちたサウンドが、ユートピアな世界を演出している。明るく軽快な印象を与えているのは、間奏部分のエッジの効いたベースやギターフレーズといったバンドサウンド。全体的にポップなイメージのなかに可愛らしさと切なさが共存しているのが同曲のポイントだ。特にサビでの〈たった たった〉という同じ音の繰り返しや、〈ぎゃあ〉〈あわわわわ んー、ええい〉という歌詞が浮遊感を生み出し、視聴者を楽しませてくれる。
音楽制作におけるテクノロジーが日々進歩する現代社会では、オリジナリティがこれまでよりも強く求められるようになることは間違いない。サウンドやメロディだけでなく、アーティストの個性的な視点や深い思考が反映された歌詞など、多面的な独自性がさらに重要視されると考えられる。シーンにあふれる似通った楽曲よりも、視聴者の心を揺さぶる感動や新しい発見をもたらす血の通ったボカロ曲は、2024年以降において、特に価値があると言える。そして、そうした楽曲や文化は、これからも長く愛され続けることだろう。
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