玉置浩二は稀代のメロディーメーカー 中森明菜、斉藤由貴ら提供楽曲で見せるコンポーザーの手腕

 そして、コンポーザー 玉置浩二が、最も優れている点は、歌い出し(主にAメロ)と、サビに同じくらいのインパクトを作り出せるところだろう。それが顕著に表れているのが、玉置浩二が80年代にアイドルに提供した楽曲群だ。その筆頭として挙げられるのが中森明菜「サザン・ウインド」と、斉藤由貴の「白い炎」だろう。両曲ともAメロとサビのコントラストがはっきりしており、ドラマティックな展開を見せる楽曲である。前述したメロディと日本語のマッチングも然り。シンプルな譜割りを意識しており、日本語と哀愁を帯びたメロディとの相乗効果とティーンネイジャーの女性が歌うことで、刹那的な切実さにつながっている。

 かと思えば、同じく斉藤由貴「悲しみよこんにちは」やV6「愛なんだ」は、開放感ある明るいポップチューンと、コンポーザーとして引き出しの多さを見せている。特に「愛なんだ」はラップパートを入れたり、カントリー調のアプローチの中にファンクの要素を入れたりと、その楽曲を歌う人物・グループを自身の中でしっかり咀嚼して、曲を作っていることがわかる。自身の色は残しつつも、アーティストの特性を的確に抑えた曲作りができる柔軟性。そんな玉置浩二の高いプロデュース力とアーティストパワーがかけ合わさることで、「サザン・ウインド」「白い炎」「愛なんだ」というヒット曲が次々と生まれたのだろう。

 1980~1990年代にかけ、歌謡曲やアイドルソングとは別の軸で、メジャーシーンを支えていたニューミュージックというジャンル。もちろん、自身の曲でもチャートを賑わせたが、ヒットを連発するアイドルへの楽曲提供も多かった。玉置浩二はもちろん、松任谷由実(呉田軽穂名義)、中島みゆき、細野晴臣、大瀧詠一、佐野元春(Holland Rose名義)、井上陽水、竹内まりや、村下孝蔵、角松敏生など、挙げ始めたら切りがない。しかしながら、自身のバンドである安全地帯、ソロ、そして提供楽曲と、3つの方向からのヒットで歌謡曲とニューミュージックの架け橋となった人物は玉置浩二以外いないだろう。そして玉置浩二ほど、ウィスパーボイスからパワフルなシャウトまで、1曲の中でナチュラルに移行し、安定して聴かせることのできるボーカリストも稀である。

 安全地帯の代表曲のひとつである「ワインレッドの心」は、日本語、英語、中国語、ポルトガル語など国内外でカバーされており、カバーしたアーティストは正式リリースされたものだけでも延べ45組を超えている。しかも昭和、平成、令和と時代を越えてカバーされ続けている。名曲である証明だ。数々の名曲を産み出している玉置浩二というメロディメイカーは、その功績も含めて、日本の音楽シーンを語る上で無視できない存在である。

玉置浩二、ソロや安全地帯で2000年代以降に生み出した名曲たち 時代と共に進化するソングライティングの妙

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