KREVAは全てを受け入れてネバり続けていく “気持ち”を乗せるリリックへの鍛錬、OZROSAURUSとの制作秘話も振り返る

KREVA、リリックへの鍛錬

OZROSAURUS「Players' Player」に落とし込んでいった“リアル”

KREVA
ーー次に今年のいろんな動きについても聞かせてください。まずは「Expert」が今のKREVAさんを代表する曲になった手応えがある上で、ツアーがあり、『908 FESTIVAL 2023』もあり、何よりOZROSAURUS「Players' Player feat. KREVA」へのフィーチャリングもありました。どういう1年になっていると思いますか?

KREVA:ラップ以外の部分で思い悩むことは結構多いですね。それで心苦しい時は多々あります。生活のこととか、ここでどういう風に振る舞うかみたいなことで、心が苦しい時が多い1年だったかな。ただ、その分「まだこんなこと起こるんだな」って思うことがその都度あって。去年だったらKing & Prince「ichiban」(KREVAが楽曲提供)とか、その前だったらフィーチャリング3連続で頼まれるとか、そうやって自分が思い描いてないところからいろんなことが起こるという。特に今年「Players' Player」は歌詞でも〈神すら予想だにできないストーリー〉って言った通り、やることは全く予想してなかったから。それはすごく大きいですね。

ーーフィーチャリングの話が来た時のファーストインプレッションはどうでしたか?

KREVA:「やるね」って本当に秒で答えてましたね。

ーー悩むことはなく?

KREVA:全く悩まなかったです。その瞬間に「こういう状況になる」「すごく話題になる」っていうのがわかったんで。ただ、それは自分の今の状況とか、OZROSAURUSの今の状況とか、いろいろ含めて「わかった」っていう感じでした。

ーー今というタイミングも大きかった?

KREVA:いや、いつでもこれはやったと思いますね。来年でもやったと思うし。「Players' Player」を作った時にはもう「Expert」は作ってたんだけど、スタッフも含めてほとんど人に聴かせてなくて。ただ、そこで出し切った後だったのもあって、「Players' Player」をやる時は本当に空っぽのタイミングで書かなきゃいけなくて。

 というのもMACCHOがスタジオに来て、初めて昔話とかしていろいろ話してたんだけど、MACCHOも歌詞で〈語らい過ぎたくないのも計らい〉って言ってるように、俺が途中で「解散しよう。話の続きは曲でやろう!」って言って。これは本当に大事な曲になるのもわかってたから、マジで1回出し切って、すっからかんになってから臨むくらいでやらなきゃいけない曲かもしれないって言ったんですよ。とは言いつつ、日々生きていけばヒントも出てくるし、それをコツコツ貯めて全部ぶつけてやろうと思ったんですけど……やっぱり、本当に空っぽの時に「さあ書かなきゃいけない」っていうタイミングがやってきて。

ーーなるほど。

KREVA:でも「Expert」の経験がすでにあったからか、とにかくテクニックじゃなく気持ちが乗ってる言葉にしようと思って。いろんな曲に対して、最初のモチベーションとして「この韻とこの韻の組み合わせが最高だから使いたい」とか「このテクニックを出したい」みたいに取りかかることが多いんですけど、結局そういうことじゃなかった。「そこに気持ちが乗ってないんだったら言わない」ってことを経ていたから「Players' Player」では気持ちが乗って、さらにテクニックも出せたのかなと思ってます。

KREVA

ーー「Players' Player」のリリックで取っ掛かりになったのはどういうところでした?

KREVA:MACCHOの歌詞ですね。いまだに真意がわからないところもあるんだけれど。彼の表現はすごく詩的というか。強面な感じがするし、実際に威圧感も出てると思うけど、詩の書き方としては結構アブストラクトで繊細さがあって、それを掴むためにMACCHOの歌詞をひたすら見ました。で、ボースティングとこの事象に関する説明の割合がすごくいいなと思ったのと、やっぱり〈温かみ〉とか〈愛〉とかそういう言葉が散りばめてあったのがすごくいいなと思った。そこを拾えるところは拾って、ボースティングと孤独感の割合を合わせることは意識しましたね。そこから2〜3日で行けた感じです。

OZROSAURUS / Players' Player feat. KREVA

ーー「Players' Player」のリリックで印象的だったのは、基本的にはセルフボーストなんですけど、ところどころに自分でコントロールしていない言葉が出てきているんですよね。例えば〈お前らが辿り着かせたのかもな/ここまで〉というラインとか。いろんな巡り合わせや制御してない部分に関してのリリックが、すごくリアルだなと思って。

KREVA:そうですね。この歌詞に関しては全部リアルで。〈お前らが辿り着かせたのかもな/ここまで〉という歌詞を書いた時は、MACCHOとZORNの事務所で一緒に歌詞を書いてる時で。結構パッと出てきましたね。ライブで披露するところまで含めた時に、こう言ったらいいんじゃないかなって。お互い孤高の存在であることをただ言ってるだけの歌だったら、この感じになっていない。みんなが待っててくれたから、こうなったんだろうなってすごく思いました。

ーー実際かなり話題になったと思うんですが、反響に関してはどう捉えてますか?

KREVA:KREVAの反響ランキングで言うと、第3位が『(NHK)紅白歌合戦』(2021年)、第2位が『マツコの知らない世界』(TBS系/2021年、2023年)、第1位が「Players' Player」って感じですね。本当に、会う人会う人に言われたんで。この間フェスで久しぶりにサンボマスターの山ちゃん(山口隆)に会ったら「あれ聴いたよ、あのライムすごいね」って言われて。アジカンのゴッチ(ASIAN KUNG-FU GENERATION 後藤正文)、川口春奈ちゃんにも言われたし、「Expert」のMVを撮ってる時も、いつも撮ってもらってる大喜多正毅監督に「KREVAの(ラップの)入りのところ練習してるんだけどできない」って言われたりとか。そういう感じで本当にいろんなところから連絡が来ました。話を聞きたいっていうのもたくさん来たし。

KREVA

初めてMACCHOにアンサーしたことから生まれたスリル

ーーもちろん、それぞれ辿ってきた道もあると思うんですけど、改めて自分で客観視してみて、ここまで反響が大きかった理由についてはどう思います?

KREVA:特にラップを普段からガッツリ聴いてるような人に「こんなに集中して一言一句逃さないように聴いた曲は本当に久しぶり」とか「このスリリングさを味わったのは久しぶり」みたいに言われて。確かにそうだろうなと思ったんですよ。で、このスリリングさの要因になっているのは、俺がこの曲の中で初めてMACCHOにアンサーしたからだと思うんですよね。世の中では常に曲でやり合ってきたみたいに言われてるんですけど、正直、俺は当時は全くその気がなくて。1回もアンサーを返したことないんですよ。そもそもディスってるって気づいたのが2012年で。サイプレス上野とロベルト吉野が「ヨコハマシカ feat. OZROSAURUS」っていう曲を出して、その曲を聴いたらめちゃくちゃカッコよくて。CDにアカペラがついてたんで、「ヨコハマシカ KrevaRemix Rough」っていうのを作ってSoundCloudに上げたんです。それでどんな反応があるかなと思ってチェックしたら、「KREVA、MACCHOにディスられてるのにリミックス作ってて熱い」みたいなのが書いてあって。そこで初めてMACCHOにディスられてるのを知って。

ーーそうだったんですね。

KREVA:「ええ!?」ってなったけど、「そうなんだ、残念」と思って。さっき「Players' Player」を作る時にMACCHOの歌詞をずっと見てたって言ったじゃないですか。そこに〈1 For The What?/2 For The〉って書いてあって。それはMACCHOが俺のことをディスる時に言ったフレーズらしくて、俺も自分の曲(「THE SHOW」)でそのフレーズを使ってるんですけど、俺はその時に「お、MACCHOさすがだな。KICK THE CAN CREWまで出してきてるよ」と思って。KICK THE CAN CREWに「one for the what, two for the who」っていう曲があって、Part IIIまで出してるんで、「そこまでディグってくるんだな」と思ってたぐらいだった。それほどまで、ずっと徹底的にバチバチしてるスリリングさが保たれてるんじゃないかなと俺は思ってますね。

ーー人生ってこういうことあるんだなっていう感じがしますね。

KREVA:そう。で、すごく大事なのは、俺のことをディスってるっていうのは後に知ったとはいえ、わかってるのに一緒にやるって言ったのは、ZORNのライブで同じ会場になった時に、MACCHOが歌ってぶちかましてるのを観てやっぱ上手いなと思ったし、「すごい声してるな」「圧倒的だな」っていうのを感じたからで。本当に認める存在だったからやったっていうのはデカいです。他のダサいヤツだったらやらないですし、向こうもそうだと思います。実際にいろいろ聴いたり観たりして、やっぱりいいなと思ったから、自分から曲を持ってきてるわけだから。常にかましていくっていうのはすごく大事だったのかなと。

KREVA

ーー最後にツアーの感触も聞かせてください。6月から7月にかけては『KREVA CONCERT TOUR 2023「NO REASON」』が開催されました。久しぶりに有観客・有歓声、コール&レスポンスありだったわけですが、どうでしたか?

KREVA:今年に入って最初に有歓声を体験したイベントで、袖で待ってる時に「KREVA〜!」って声が聞こえてきて「これだ!」と思って。ワンマンライブをやったら相当ヤバいかもなって思ったのはすごく覚えてます。その後、ツアーができそうだという状況になってきて。日程的にも単発のライブの3回みたいな感じだったけど、前々から有観客・有観声のライブができるタイミングがあったらとにかくやろうって話をしてたんで。曲が出たとか、何周年だからみたいな理由はなく、“NO REASON”だけどやろうっていうツアーだったんですね。

 で、いざやるってなったら、できることを全部やってやろうと思ったんですよ。そこから用意してリハーサルしてみたら「これは泣いちゃうな」と思ったんですね。リハーサルで想像して、みんなと音出しただけで、もうちょっとダメだわ……って。どうやって泣かないかってことばっかり考えてました。当日、始まる前も現地でリハやってみて、とりあえずサングラスを外さないでおこうと思いましたね。でも、いざ本番に出て行って1曲目やったら、泣いてる人は思いっきり泣いてるんだけど、みんなが楽しそうすぎて、感動を超えたすごいパワーを感じて、むしろ思いっきり笑えたんです。それがすごい嬉しかったですね。泣くということすらはるかに超えてましたから。

ーーライブを作るのがお客さんの声だったんだっていうのをまさに体感したと。

KREVA:はい。コロナ禍も、声が出せないながらもどうしたらいいのかっていろいろ考えて。やるはずだったライブ会場からの生配信もしたし、無観客の『908 FESTIVAL』もやったし、打ち上げを見せるとかいろいろ手を替え品を替えやってきたけど、やっぱりみんなと声を出して作っていくことに勝るものはないなと思いましたね。

 
「Expert」JKT
KREVA「Expert」

■リリース情報
KREVA「Expert」
2023年9月8日(金)Digital Release
配信:https://jvcmusic.lnk.to/Expert

■衣装協力
SHAREEF (Sian PR/03-6662-5525)
CASPER JOHN (Sian PR/03-6662-5525)

KREVA OFFICIAL HP

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