緑黄色社会が彩る『真夏のシンデレラ』のクライマックス 大切な人への想いに寄り添い続ける“季節を超えた楽曲”に
令和の日本のポップミュージックシーンを力強く牽引し続ける緑黄色社会。この夏に届けられた新曲「サマータイムシンデレラ」は、ドラマ『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)のために書き下ろされたもの。ドラマを観ている人はもちろん、そうでない人の中にも、テレビや街中、各音楽イベントなどで一度は同曲に触れたことがある人が多いのではないだろうか。「サマー」と冠されているように、今年の夏のヒット曲としてだけではなく、今後の夏の定番曲として末永く愛され続けていく一曲になる予感がする。
特に、現在『真夏のシンデレラ』を観続けている人にとっては、「サマータイムシンデレラ」、および、同じく緑黄色社会が手掛けた挿入歌「マジックアワー」に対する思い入れはより深いものになっているはず。これまでも彼女たちは、様々なドラマや映画の物語に丁寧に寄り添うタイアップソングを次々と生み出してきたが、今回の2曲も『真夏のシンデレラ』の物語をドラマチックに彩りながら、登場人物と視聴者の心に優しく寄り添う重要な役割を担っていて、まさにこのドラマにとって必要不可欠なピースとなっている。
『真夏のシンデレラ』は、フジテレビの月9の枠で放送中のドラマである。この枠では、『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』『やまとなでしこ』『プロポーズ大作戦』『リッチマン、プアウーマン』をはじめとした数々の名作恋愛ドラマが放送されていて、きっとそれぞれの世代の人にとって忘れられない思い出の作品があるはず。近年の月9の枠では、刑事、医師、弁護士などの職業モノの作品が続いていたが、この夏、2016年の『好きな人がいること』以来7年ぶりに、月9の枠に王道のラブストーリー作品が帰ってくる形となった。往年のトレンディドラマを彷彿とさせるような男女8人のひと夏の恋愛群像劇は、きっと新しい世代の視聴者にとっては新鮮に見えているのではないだろうか。また、先ほど挙げた作品を含め、これまで月9の恋愛ドラマを観てきた視聴者も、森七菜、間宮祥太朗、神尾楓珠をはじめとしたフレッシュなキャストの演技を通して、この王道の恋愛群像劇を新鮮な目線で楽しむことができているはず。
そして、この王道のラブストーリーを令和にアップデートする大切な役割を担っているのが、主題歌「サマータイムシンデレラ」、挿入歌「マジックアワー」である。胸がつまるような展開に重なる「マジックアワー」は、〈あなたは花火〉というサビの一節が象徴的なように、美しくも次の瞬間には散ってしまう刹那的な輝きを伝えている。それは『真夏のシンデレラ』で描かれるひと夏の恋の切なさと重なるものであり、〈夏が過ぎてもこのままで/見上げていさせて〉という一節は、まさに蒼井夏海(森七菜)や水島健人(間宮祥太朗)たちが抱く想いそのものだ。
特筆すべきは、各話の終盤で流れる「サマータイムシンデレラ」である。まるで恋心の高まりを表現するような出だしの一音。そして、その後に続く美麗なピアノフレーズ。これまでの数々の名作恋愛ドラマにおいて主題歌のイントロが流れるタイミングが精緻に設計されていたように、『真夏のシンデレラ』においても絶妙なタイミングでこの曲が流れ出し、そのまま各話のクライマックスを鮮やかに、そして輝かしく彩っていく。