緑黄色社会、“ひと夏の恋”を歌ったサマーチューンの新定番 煌めくような歌唱とアンサンブルで際立つストーリー
今や各シーズンの音楽フェスには必要不可欠の存在になり、ドラマなどのタイアップにも引っ張りだこの緑黄色社会。12月からは、横浜アリーナ2daysを含めた東名阪のアリーナツアー『リョクシャ化計画2023-2024』も控えている。
そんな緑黄色社会が、7枚目のシングル『サマータイムシンデレラ』を8月7日に配信リリースした(9月6日CDリリース)。表題曲は、真夏の海を舞台に男女8人の恋愛群像劇を描いた月9ドラマ『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)への書き下ろし曲だ。さらにカップリング曲である「マジックアワー」も同ドラマの挿入歌となっている。本稿では表題曲「サマータイムシンデレラ」の魅力についてフォーカスしていく。
「サマータイムシンデレラ」はタイトルからも想像がつくように、夏のひとときの恋模様を描いたラブソング。キーボードを中心としたメロディアスなイントロからAメロにかけて、徐々にストリングスやドラムが加わり、そして長屋晴子(Vo/Gt)のボーカルがイン、そこから優雅で煌びやかなBメロへ。流れるような旋律が美しいpeppe(Key)のキーボードサウンドをバックに歌った後、アンサンブル全体が盛大に盛り上がってサビへと繋がる。ちょうどサビのタイミングでブレイクが入ることで、聴き手としても気持ちが高まっていく。
さらにサビからはホーンセクションも入ることで、夏の恋の高揚感を表現するようなサウンドスケープに。サビ終わりからは、同曲の作曲を担っている穴見真吾(Ba)のうねるようなベースラインと、peppeのキーボードが際立つので、ぜひそこも注目して聴いてみてほしい。その後、一旦テンポを落としてからのラスサビの盛り上げ方も見事で、ライブ会場でもオーディエンスが手を挙げて楽しんでいる情景が脳裏に思い浮かんだ。
続いて歌詞にも注目してみる。これまでの緑黄色社会の楽曲には、長屋が作詞したものもあれば、小林壱誓(Gt)が作詞したものもある。また、ヒット曲「Mela!」や、森永製菓『受験にinゼリー2022』のCMソングとして注目を集めた「キャラクター」などは、長屋と小林がタッグを組んで作詞している。そして、「サマータイムシンデレラ」も長屋と小林がふたりで作詞を担当した楽曲だ。
本作の注目ポイントは“夏の恋”ではなく、“ひと夏の恋”を描いていることだ。「シンデレラ」と曲名に入っている通り、この夏が終わったら魔法が溶けてしまうような儚くも煌びやかな恋。サビ前で〈そして世界は初めての色に染まる/もう誰にも止められないほど〉と夏の始まりと同時に恋が芽生え、後半になると〈夏の終わりが近付いた/胸が騒ぐ/やめてまだ終わらないでよ〉と終わりを感じさせるストーリー性がある。しかしラスサビに〈始まりの合図がした/たまらずふたりは恋を取って駆け出した〉と新たなスタートが描かれている。魔法が解けたシンデレラが元の姿に戻っても王子様と結ばれたように、夏が終わってからが本当の始まりなのである。夏の始まりも終わりも、愛と楽しみが詰まった季節になっているのだ。