緑黄色社会、国民的バンドへ向かう“新たな始まり” 『紅白』初出場など大躍進の2022年、武道館に刻んだ決意
2022年、結成10周年を迎えた緑黄色社会。4人にとって昨年は、バンドにとって大きな節目の年であると同時に、それまでの全ての歩みが美しく結実した感動的な1年間となった。
まず、春、夏、そして年末にかけて全国各地で開催された音楽フェスにおいて、4人は幾度となくメインステージのスロットを担ってみせた。直近の例を挙げると、筆者は年末に開催された『COUNTDOWN JAPAN 22/23』におけるアクトを観て、いまや完全に時代とシンクロを果たした4人が放つ無敵感、ポップスターとしての輝かしい佇まいに圧倒された。特に、ラストの「Don!!」→「Mela!」→「キャラクター」というカラフルなポップアンセムを繋いだクライマックスは圧巻で、4人のソングライターとしての才能にも改めて驚かされた。
また、年末年始にかけて放送された数々の音楽番組におけるステージでも、4人はその存在感を高らかに示していた。何よりも特筆すべきは、悲願の『NHK紅白歌合戦』への初出場である。長屋晴子(Vo/Gt)はメンバーを代表して、ずっと『紅白』という舞台に憧れを抱き続けてきたことを語り、そして4人は夢のステージで渾身の代表曲「Mela!」を披露してみせた。他の名だたる出演アーティストたちに囲まれながら、全国の視聴者に向けてパワフルに歌い上げる長屋。そして、ダイナミックにして豊かなバンドサウンドを打ち鳴らす小林壱誓(Gt)、peppe(Key)、穴見真吾(Ba)。パフォーマンス中、時おり4人が見せる晴れやかな笑顔が忘れられない。また4人は続けて、カウントダウンを跨いで元旦の早朝まで放送された『CDTVライブ!ライブ!年越しスペシャル!2022→2023』(TBS系)に出演して、新たな代表曲「キャラクター」を華やかに披露してみせた。SNSには、『紅白』『CDTV』のパフォーマンスを観たファンの歓びの声や、初めて4人のステージを観た視聴者の興奮の声で溢れ返った。
そして、大躍進の2022年を象徴するもう1つの大きな出来事が、9月に2日間にわたって開催された初の日本武道館公演だ。あの夜のステージが、どれだけリョクシャカにとって、そしてリスナーにとって大切な時間・空間となったか。それは、1月4日にリリースされたバンド初の映像作品『緑黄色社会×日本武道館 “20122022”』を観れば、豊かな実感を通して感じ取れるはずだ。ここでは、同映像作品のハイライトをいくつかピックアップして紹介していきたい。
序盤のブロックで、長屋は「みんな、ここが武道館だよ」「連れてきてくれて本当にありがとう」と満員のフロアを見渡しながら万感の想いを語った。そして「今日は私たちの音とみんなの気持ちで、この武道館をいっぱいにしたい」「何も心配しなくていい、私たちに全部預けて」「心の底からこの空間を楽しんでね!」という頼もしい言葉の後に「始まりの歌」を披露した。年末の『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE 2022』(テレビ朝日系)でも披露されていたことが象徴するように、「始まりの歌」は緑黄色社会がインディーズ時代からリスナーと共に育み続けてきた大切な楽曲である。しかし、そのパフォーマンスに懐古的なムードは一切なく、次の新しい一歩を踏み出すメラメラとした野心に満ち溢れていた。力強く躍動するバンドアンサンブル、空高く飛翔するようなたおやかな歌のメロディ。そして、〈さあ始めようか/僕のイメージの先へ飛び立とう/何度でも始まりの歌を歌おう〉という新章開幕を告げる鮮やかな宣誓。4人はすでに、武道館の“その先”を見据えて走り始めていることが伝わるような名演だった。