ぼっち・ざ・ろっく!、バンドリ!、ガールズバンドクライ…… 『けいおん!』ブーム再来を予感するガールズバンドプロジェクト
バンド活動を題材にしたアニメ作品といえば、2009年放送のTVアニメ『けいおん!』が当時社会現象とも言えるほどのヒットを記録し、それに刺激された学生や若者たちが楽器やバンド活動を始め、主人公・平沢唯の愛機である「ギー太」と同じモデルのギター、ギブソンのレスポール・スタンダードが爆発的に売れるなど、大きな影響を与えた。現在音楽シーンで活躍しているミュージシャンやバンドマンにも、『けいおん!』がきっかけで楽器を手に取った人間は少なくないはずだ。
ぼっち・ざ・ろっく!
そんなブームの再来を感じさせたのが、2022年に放送されたTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』。奇しくも『けいおん!』と同じく漫画誌「まんがタイムきららMAX」掲載の4コマ漫画を原作とする本作は、バンド活動に憧れてギターを始まるも極度の人見知りのため友達が1人もできず、1人孤独にギター演奏動画をネットにアップして“ギターヒーロー”と呼ばれていた陰キャの女子高生・ぼっちこと後藤ひとりが、偶然の出会いで“結束バンド”というバンドに参加することになり、性格は変わらないながらも彼女なりの懸命さでバンド活動に向き合う物語となっている。
極端な陰キャのためおかしな言動の目立つぼっちを中心に、個性豊かなキャラクターたちを活き活きと描くコミカルな要素のみならず、ライブハウスの空気感をリアルに再現した描写や演出、ぼっちとバンドの成長物語としても秀逸なストーリーなど、本作がヒットした要因を挙げるとキリがないのだが、その中でも特に素晴らしかったのが、劇中およびOP・EDを彩った楽曲の数々だ。結束バンドの楽曲は、作品の主な舞台となる下北沢で90年代末~2000年代に盛り上がった“下北系ギターロック”をコンセプトに制作されており、楽曲のアレンジはTHE YOUTHやLOST IN TIMEのギタリストとして実際に下北のバンドシーンと深い関わりを持つ三井律郎が主に担当。さらにKANA-BOONの谷口鮪、tricotの中嶋イッキュウ、the peggiesの北澤ゆうほといった現役のバンドマンを含む多彩なアーティスト/クリエイターが楽曲を書き下ろし、良質かつ本格志向のバンドサウンドが音楽アニメとしての説得力とクオリティーを担保している。
また、作品内の設定に合わせて、歌詞は基本的にぼっちが作詞した体で書かれているため、「青春コンプレックス」や「ひとりぼっち東京」といった楽曲タイトルからも伝わるように、他者とのコミュニケーションや社会との関りが苦手な人間側の視点が貫かれているのも結束バンドの楽曲の特徴。そういった要素と学生バンドらしい初期衝動も感じさせるバンドアンサンブルの融合により、下北系ギターロックをベースにしつつ現代らしいロックサウンドが奏でられている(ちなみに演奏は三井のほか、akkin、高間有一、比田井修といった名うてのミュージシャンが担当)。それらの楽曲をまとめたアルバム『結束バンド』は普段アニメをあまり観ない音楽ファン層にも届いて大ヒットを記録、さらに劇中でぼっちが使用していたギブソンのレスポール・カスタムをモチーフにしたモデルの売り上げが向上するなど、『けいおん!』を彷彿とさせる波及効果を見せている。