SixTONESが持ち続けてきたラジオへの情熱 番組Pを卒業した長濵純に聞く、6人のラジオパーソナリティとしての魅力
SixTONESがパーソナリティを務める『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送をキーステーションに全国ネット/以下、『SixTONES ANN』)は、一際異彩を放つラジオ番組だ。日本のラジオを代表する『オールナイトニッポン』で放送枠を持ち、毎週土曜の深夜に生放送されるこの番組は、SixTONESのファンのみならず、多くのラジオリスナーを魅了し、6人にとっても、ファンにとっても大切な存在となった。この2023年7月をもって、デビュー前の特別番組時代から同番組を担当してきたニッポン放送の長濵純プロデューサーが番組を卒業することに。そこで今回、なぜ6人のラジオはここまで愛される存在になったのか、SixTONESのラジオパーソナリティとしての魅力を長濵氏に聞いた。(編集部)
「僕たちはラジオをやりたいんだ」と常に言っていた
ーーまず、長濵さんとSixTONESの出会いを教えてください。
長濵純(以下、長濵):2019年8月に放送された特別番組『SixTONESのオールナイトニッポン』を皮切りに、2020年1月放送の年始特番『すとーんずのおしゃべり』も担当させていただき、その後2020年春にレギュラーとなった『SixTONES ANN』でも番組プロデューサーとして携わってきました。 この7月に、いわゆる編成セクションであるコンテンツプランニング部のデスクに就任することになりまして、番組を卒業することになりました。
ーーラジオ番組のプロデューサーというと、具体的にはどういったことをする仕事なのでしょうか。
長濵:端的に言うと現場監督ですね。コンテンツのクオリティ管理や予算管理、広報・PR面なども考えながら、番組を統括していく立場になります。
ーー2019年の特別番組から約4年携わられてきましたが、最初はSixTONESについてどのような印象を持っていましたか?
長濵:初々しさと情熱あふれる若者たちだなと思いました。放送外のところでも、ラジオへの想いをすごく熱く語ってくれて、「僕たちはラジオをやりたいんだ」と常に言っていましたね。僕は、喋り手や作り手の熱量が大切だと思っているので、ラジオ好きな人がパーソナリティを担当するべきだと思っています。だから彼らがラジオを好きだという気持ちを伝えてきてくれたのはとても嬉しかったですね。
ーーたしかに、『SixTONES ANN』 はSixTONESのファンだけでなく、『オールナイトニッポン』のリスナーからも愛されている印象を受けます。それはやはり、彼ら自身がラジオを好きだからというのもあるのでしょうか。
長濵:『オールナイトニッポン』という枠を担当するとなった時に、最初に彼らは「お邪魔します!という気持ち」と言ってくれました。「僕らがいて、僕らのファンが聴きに来るだけではなくて、 『オールナイトニッポン』という長い歴史のある番組のリスナーがいるところに僕らがお邪魔しているのであって、幅広いラジオリスナーに楽しんでもらえるような番組でありたい」というのは本人たちも思ってくれていました。彼らの“ラジオが好き”で“楽しませたい”という姿勢はリスナーにも徐々に伝わっていったと思います。
6人のラジオパーソナリティとしての魅力
ーー『SixTONES ANN』がレギュラーになったタイミングでメインMCを田中樹さんに固定し、週替わりで別のメンバーが出演するという形になります。田中さんについて、ラジオパーソナリティとしての魅力はどのように感じていますか?
長濵:状況判断に優れている人だと思います。目の前にいる週替わりメンバーだけでなく、マイクの先にいる大勢のリスナー一人ひとりを頭に思い浮かべ、スタッフ陣ともコミュニケーションをとり、アイコンタクトをしながら番組を進行する。MCとして優秀な人です。自分の話だけをするのではなくて、一歩引きながら、相手の魅力を引き出していくことも長けている人なので、そこは非常に信頼感を持っていました。
ーー田中さんにはもともとラジオパーソナリティとしての才能を感じていたのでしょうか。
長濵:素養はあったと思いますけど、放送回数を重ねながら引き出された部分もあると思います。 『SixTONES ANN』はレギュラー放送が6人全員で華々しく始まって、2回目からいきなりリモートでの放送となりました。コロナ禍での緊急対応ですが、スタッフとの関係もまだ十分に築けていない状況の中で、かなり難しかったと思います。彼にも非常に負担をかけました。でも、そういう状況から始まったからこそスタッフとのコミュニケーションの大事さを田中さんも感じているように思います。
ーー先ほども触れた通り、普段の放送は田中さんに加えてメンバーが週替わりで登場する形になっています。それぞれのメンバーのラジオパーソナリティとしての魅力はどのようなところにあると思いますか?
長濵:髙地(優吾)さんに関しては安心感があります。田中さんが自分の話もしたいと思うのは髙地さんがいるときかなと思っていて。いつも相手を引き出すことを考えている田中さんが、自分の話も聞いてほしいと思うとき、自分を預けられる存在が髙地さんなのかなと。目配りや気配りもできる人で、幅広い世代のリスナーも心地よく安心して聴ける存在だと思っていて、『ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』(視覚障がい者支援のチャリティキャンペーン。毎年、クリスマスイブから24時間特別番組を生放送している。SixTONESは3年連続でメインパーソナリティを担当した)で、多くの大人リスナーが聴いている朝の時間帯を彼に任せたのはそういう部分があるからだと思います。
京本(大我)さんはおもちゃ箱みたいな人なんですけど、どんなおもちゃが出てくるのかなというワクワク感を一番持っている人だと思います。『ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』内の『オールナイトニッポン』の枠で単独MCを務めましたが、好きな音楽とかもはっきりしていて、ミュージシャンとして、そして俳優としての京本さんも出すことができる。非常に艶がある人だなと感じていますね。
松村(北斗)さんは、学者みたいな人だなと思っていて。常に考えることが多い人なんだなというのをずっと感じています。アーティスト・俳優とは違う自分の一面をここで見せようという思いが感じられます。 彼は特に『オールナイトニッポン』を聴いてきた方なので、『オールナイトニッポン』での自分はこうでありたいという思いを持ってやってくださっていると思います。あとは、どうしてもトークが長くなるところがあるんですが(笑)、それは伝えたいことがたくさんあるということだと僕は思うので、それをまとめていけるところが備わると、もっともっと素敵な存在になるんじゃないかなと思っていますね。
ーーとはいえ、松村さんのフリートークが短くなってしまうのは寂しいというリスナーの方も多いように感じます。
長濵:色々なことを考えている方なので、本当に面白いと思うところまでどんどん掘り下げていくことになって、結果オチまでたどり着かないということもありますが(笑)。それはそれで魅力なのかもしれないですね。
ーーグループの末っ子、ジェシーさんと森本慎太郎さんについてはどうでしょうか。
長濵:ジェシーさんは、何と言っても“SixTONESの太陽”と言われるぐらいですから。彼の声が聴こえてきたら本当に元気になれるというか、色々なことを忘れさせてくれるという意味では本当にすごい力を持っていると思っています。一番特徴的なのは「アハハ!」という笑い声だと思うんですけど、それがこちら側の企画と田中さんとの掛け算で、「イヒヒ!」に変わって、最後には「ウフフ!」に変わるとだいぶ面白い放送になったなと思っています。彼の笑い声が響く限り、心の太陽は沈まないだろうなと思っています。
森本さんは、当初、フリートークのネタを打ち合わせの時にたくさん提示してくれて、短いネタをたくさん話すタイプだったんですけど、ドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)で南海キャンディーズ・山里亮太さん役を演じたことが一つの大きい転機になったと思います。ラジオを愛するパーソナリティでもある山里さんの人生を演じる中で、山里さんが憑依してきたというか、格段に話の構成が上手くなったと思います。これだと思ったものを掘り下げて、面白く転がしていけるようになったところにすごく成長を感じていますね。
ーー改めてお話を伺うと、本当にそれぞれ異なる個性を持っているように感じます。ここまでタイプの異なるメンバーが週替わりで登場するというのは面白い反面、番組を作る上で苦労した点もあるのではないでしょうか。
長濵:最初のうちは、今週聴いてくれたリスナーさんが翌週は聴いてくれないんじゃないかとか、不安な部分もありました。メンバーの自主性を引き出すという観点に加えて、当該週の担当メンバー以外も出演するかも? という要素を持たせる「ジングルオンエアバトル」という企画も放送しました。今でいうと、先週のプレイバックジングルをオンエアしているのもそういった工夫の一つです。
田中さん以外のメンバーは一度放送に出演したら次は数週間後になってしまいます。先週聴いたメンバーのファンの人が今週も聴いてくれるためにどうしたらいいのかは、常に課題です。ただ、それがちょっとずつ変わってきたと感じるのは、個人のファンやグループのファンだけではない番組リスナーが育ってきたからですかね。他の仕事現場でお会いする方々からも「面白いね」という声をかけられることが増えました。