WANDS、『Version 5.0』で示した“第5期の真価” 柴崎浩×上原大史のタッグが確立する90年代と現代をクロスしたロックサウンド

WANDS第5期の“真価”

 WANDS第5期から2年半10カ月ぶりとなるオリジナルアルバム『Version 5.0』が届けられた。

WANDS 「Version 5.0」全曲紹介

 上原大史(Vo)、柴崎浩(Gt)、木村真也(Key)によるWANDS第5期(2019年~)としての前作『BURN THE SECRET』は10曲のうち4曲がセルフカバー(「Secret Night ~It's My Treat~」「明日もし君が壊れても」「もっと強く抱きしめたなら」「世界中の誰よりきっと」の“WANDS 第5期ver.”)。今回は12曲中10曲がオリジナル曲という構成になっており、WANDS第5期の音楽的アイデンティティが強く示された作品に仕上がっている。

 前作アルバム以降、2021年にシングル『カナリア鳴いた頃に』、『YURA YURA』(アニメ『名探偵コナン』オープニングテーマ)、2022年に配信曲「愛を叫びたい」(株式会社EMシステムズ 企業TVCM主題歌)、「世界が終わるまでは…」(WANDS第5期ver.)、2023年にシングル『RAISE INSIGHT』(アニメ『名探偵コナン』オープニングテーマ)をリリース。“作詞・上原大史×作曲・柴崎浩”によるソングライティングを軸に、WANDS第5期としての独創性を追求してきた。「もっと強く抱きしめたなら」「時の扉」などヒット曲を連発してきた90年代のWANDSのイメージを引き継ぎながら、現代的なロックサウンドを取り入れることで、現体制によるWANDSの音楽性を確立するーーその最初の到達点が、本作『Version 5.0』と言えるだろう。

 では、アルバム『Version 5.0』に収録された新曲の聴きどころを紐解いてみたい。

 アルバムのオープニングを飾る「We Will Never Give Up」は、柴崎のギターリフ、上原のボーカルを軸にしたロックナンバー。柴崎のルーツの一つである80年代のハードロック、ヘビィメタルを想起させるギターフレーズ、そしてアグレッシブな勢いをまとった歌声からは、現在のWANDSのストロングポイントがはっきりと伝わってくる。テクニカルな構築美を感じさせる長尺のギターソロもこの曲の聴きどころだ。

 2曲目の「GET CHANCE GET GROW」は気持ちいい疾走感をたたえたビート、大らかに開放されるサビのメロディが印象的なアッパーチューン。ずっしりとしたヘビィネスと軽やかな“抜け感”を同時に感じさせるギター、楽曲に彩りを与える鍵盤のフレージング・音色のバランスも絶妙。洗練されたアンサンブルと派手なインパクトを兼ね備えているところが、この楽曲のポイントだろう。中心を担っているのは、やはり上原のボーカル。〈言い訳無用 Go Ahead!〉に象徴されるポジティブなフレーズも、彼の声のキャラクターによく似合っている。

 「WONDER STORY」は、作詞・作曲・編曲を上原大史が担当。“人生=WONDER STORY”をテーマに掲げ、“限りある時間のなかで、あなたと何が出来るだろう?”という思いを表現した歌からは、上原の独創的なソングライティング・センスが感じられる。往年のスタジアムロックの雰囲気を醸し出しながら(個人的には80年代のU2を思い浮かべた)、現代的なロックサウンドへと導くアレンジのセンスにも注目してほしい。

 イントロはなく、クリーンな響きのギターと〈乾いた心に 水をやりながら〉というラインではじまる「空へ向かう木のように」は、抒情的な思いを綴ったミディアムチューン。背景にあるのはおそらく、希望が見えづらい現代の社会。過酷な状況が訪れても、“空へ向かう木のように”生きていたいという願いを込めた歌は、初期WANDSをリアルタイムで聴いていた40代以上の大人のリスナーの共感を集めそうだ。オーガニックな手触りのサウンド、そして、間奏におけるブルージーなギターとオルガンの音色、上原のフェイクも素晴らしい。

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