PEDRO、新体制で奏でる“生活が続いていく素晴らしさ” 3人で語り合う再スタートの経緯&アユニ・Dが一番綴りたかったこと

PEDRO、再スタートの経緯

「BiSH、PEDROをやって、生きていることの素晴らしさに気づいた」(アユニ)

――では、曲についても聞ければと思うのですが、「飛んでゆけ」に関してはどういう着想から作り始めた曲なんでしょうか。

アユニ:今までだと、自分が何を表現したいかとか、表現者として何を音楽にしたいのかっていうのがあまりわからなくて。考えれば考えるほどわからない状態だったんですけど、それは暮らしとか生活をおざなりにしてた部分があったので、なかなかインプットできていなかったからでもあって。BiSHをやって、PEDROをやって、生きていることの素晴らしさに気づきはじめて、暮らしってすごく美しいなって思うようになったんです。毎日続いていくものこそが生活だし、生活は切っても切れないものだなっていう気づきがあった中で、生活に寄り添うというか、生活感があふれてる音楽を作りたいって、新生PEDROとしては特に思いました。その第一弾というか、暮らしをテーマにして書きましたね。

――リリックにしても部屋の中の話だし、朝起きて夜寝るまでの話である。地に足がついたものがやっぱりモチーフとしてはすごく大事なものであった、ということなんでしょうね。

アユニ:そうですね。どれだけ泣きじゃくっても、どれだけ明日来ないでって願ったとしても、地球は回ってるし、明日は来るし。今までは明日なんか来ないで、朝なんて来ないでって思ってたんですけど、こうやって大好きなお二人と表現者として関わることができる幸せに触れ合ってからは、もう明日が来ることに希望しかない日々で。それがPEDROとしての私が今一番大きく思っていることなんで、そういう日々を綴りたいなと思いました。本当は再結成後の第一弾シングルだったので、もっと万人受けするようなポップなサウンドで、万人受けするような歌詞で作った方がいいんじゃないかとか、葛藤はあったんですけど。でもアユニ・Dのソロプロジェクトとして今まで好き放題やらせていただいて、そこで自分が表現したいものは何かという輪郭がはっきりしてきた中での、再始動一発目だったので。この機会は自分が好きなものをギュッと詰め込んだ一曲にしようと思ってでき上がった感じですね。

PEDRO

――メロディや曲調に関しては、生活感のあるものというイメージから自然に出てきた感じでしょうか。

アユニ:本当にそうで、温かい、温度のある曲を作りたいと思って作りましたね。今まではBiSHでもやってきたパンクとかロックとか、私の甲高いギラついた声に合わせて尖ったサウンドを結構やってきてはいたんですけど。でも自分で曲を作るようになってから、温かい曲を作りたい、真心が感じられるようなサウンドにしたいって思うようになって。今はその表現の形が一番やりたいものだし、これからも温かい曲を作っていきたいです。

――アレンジは田渕さんが進めていったということですが、デモのような形で、アユニさんから田渕さんに曲の原型が渡されたのでしょうか。

田渕:はい、そうです。ギターと歌とリズム、あとイントロとか間奏のメロディも入ってて。そこからある程度まで進めて一回聴いてもらったり、やり取りをしながら進めました。

――このデモを受け取っての印象と、そこから曲を膨らませていくにあたってのイメージにはどんなものがありましたか?

田渕:もらった時点で、アユニさんが言ってたような温かさのある曲という印象を受けたので、これをめちゃくちゃ元気な曲にするとか、すごくロックっぽい曲にするとか、そういうことではなく、デモの感じとガラッと変えない方がいいかなと思ってました。

PEDRO / 飛んでゆけ [OFFICIAL VIDEO]

――刺々しさよりは包み込むようなテイストのある曲調で、あえてジャンルで言うとドリームポップ的というか。でも、きちんとPEDROがやってきたことの延長線上にあるものだし、いわゆるオルタナティブな根っこは変わらないものがあるという感じはしました。ゆーまおさんは、この曲を受け取って、レコーディングに参加していくまでの感触ってどんな感じでした?

ゆーまお:今おっしゃってた話を僕も感じていて。最初にデモをいただいた時は、ドリームポップとまでは思わなかったですけど、軽い感じで聴きやすい、足取りの軽いポップスと思って挑んだ方がいいのかなと思ってたんですよ。でも、一回演奏してみた時に「違う、オルタナだ」と思って。「ロックじゃないと、パワーがないといかんのじゃ!」と思って、思考を変えて、僕の中で90年代とか2000年代初期にいろいろ聴いていた、主に海外の音楽を頭の中に浮かべました。例えばですけど、Jimmy Eat Worldとか。

――なるほど、紆余曲折があったんですね。

ゆーまお:ありました。僕の最初のイメージみたいに受け取れる曲にも仕上がってるかもしれないので、それはそれで全然構わないんですけど、演奏する側としては、これはがっつりアプローチしてあげないといけないものだって感じました。

――今ゆーまおさんがおっしゃってたこと、アユニさん的にはどうですか?

アユニ:たしかに、性格的にも自分は足取り軽く日々を歩める人間ではないので(笑)、そういう部分が自然と曲に出てたのかなって思うのと、あとやっぱり自分の音楽のルーツというか、原点であり頂点がNUMBER GIRLなので。どうしても自分はチルい曲とかベッドサイドミュージックをやろうとしても、それにはならないんだなって。自分の中にある土台というのは変わらないということに気づいていただけたのはすごく嬉しいです。

PEDRO

「活動休止前に書いた『さすらひ』はむしろ今しっくりきている」(アユニ)

――カップリングの「手紙」に関してもお聞きしたいのですが、これは田渕さんが先に曲を作って、それにアユニさんが歌詞をつけたという流れだったんですか?

アユニ:そうですね。

田渕:自分が曲を作る時は、バンドっぽい曲なのか、アコースティックギター1本で弾き語りができるような曲なのか、みたいなイメージで大きく分かれるんですけど、どっちかというとバンドっぽい曲で、ベースがかっこいい曲がいいなと思って作ってた記憶があります。

――それぞれの楽器に見せ場があるような。

田渕:そうです。ギターを厚く重ねるというよりは、ライブと音源のイメージがそんなに変わらないくらいのギターの量で、ベースとドラムもかっこいい。そういう3ピースのバンドっぽい曲です。

――この曲を作った時には、ゆーまおさんが叩くことは決まっていたんでしょうか。

田渕:いや、この曲を作ったのは、実は3~4年くらい前なんです。

アユニ:最初にいただいた時は、ものすごくかっこいい曲で、オルタナティブで、ひさ子さん節が出てるなっていう印象でした。入ってた仮歌もすごく素敵で、お気に入りの曲だったんですけど、出す機会がなくて。今回カップリングにこの曲を入れたいってお話しした時に、サビの部分を当時の歌メロから変えてくださったんですよ。今のPEDROとしてやりたい音楽性は、こっちの歌メロの方がいいと思うって。

――田渕さんとしては、3~4年前に作った時と今と、どういう変化をPEDROに感じたんですか?

田渕:この曲をやるっていうお話をいただいてから、デモを作り直したんです。その時はゆーまおさんが叩くって決まった後で。私の中でゆーまおさんのドラムと毛利さんのドラムの違いは、毛利さんはロックドラマーなイメージで、ゆーまおさんは音に情緒があるみたいなイメージだったんですよね。歌メロも、もっと勢いのある、ちょっとシャウトしちゃうようなイメージだったんですけど、『後日改めて伺いました』の流れからだとちょっと違う感じがして。歌メロをサビだけ変えました。

――それを受けて、アユニさんとしては歌詞を書く時にはどう進めていった感じでしたか?

アユニ:さっきの「飛んでゆけ」と同じで、人と触れ合って自分が育って生きていってるんだっていうことを書きたいっていうのはあったんですけど、もしひさ子さんが歌メロを作り直していない前の状態だったら、もっと棘のある歌詞を書いてたかもしれないなって今思いました。温かい気持ちを忘れたくない、大事にしていきたいという思いを表現するようになってから、ひさ子さんもそこを理解して、サビのメロディを変えてくださったと思うので。今の気持ちを素直に書けた感覚がありますね。

――「飛んでゆけ」が現在だとすると、「手紙」には過去のイメージがありますね。モチーフとしてはすごく似通ったところはあるけれども、2曲あることで時系列が感じられるような並びにもなっているかなと思います。

アユニ:そうですね。過去にあなたから救われたから、今は「飛んでゆけ」で、私が救いにいくよっていう曲ができたと思います。

――活動休止前の最後に発表された曲である「さすらひ」についても聞かせてください。これはその時期に書いた曲なんですよね。

アユニ: そうですね。BiSH解散を決めて、PEDRO活動休止を決めた時です。

PEDRO / さすらひ [OFFICIAL VIDEO]

――あの時に書いた曲を実際に新代田FEVERでやって、曲の意味とか感情がアユニさんの中で上書きされたり、新しくなるような感覚ってありましたか?

アユニ:むしろ今しっくりきました。前に書いた時は「きっと解散したら、活休したらこういう気持ちになるんだろうな」っていうのを想像して書いてたんです。なので、PEDRO活動再開の一発目で歌った時に、今の自分の素直な気持ちとすごく一致してると思って。ちゃんといい方向に来れたのかなって、ちょっと自信が湧きましたね。

――答え合わせみたいな感じだったんですね。

アユニ:はい。それまであまり将来のことを考えてこなかったりとか、明日を生きるために必死みたいな感じで、自分で自分を追い詰めて、何かに急いでた部分があったんですけど。BiSH解散から先はPEDROとして生きていくぞって腹を括った時に「さすらひ」を書いて。もっと未来に光を集めなきゃと思って書いたので、よかったです。

――『後日改めて伺いました』と『後日改めて伺います』では、どういう変化が生まれたと思いますか?

アユニ:個人的には、本当に全部まるで違う曲になったなっていう印象で。音楽って、演奏する人、表現する人、作り出す人が違うだけでこんなに変わるんだっていうのを私は初めて体感したので。バンドってすごいな、深いなって思いました。音もめちゃめちゃかっこいいし。あと、BiSHと並行している時はスケジュール的に詰め込んでやってたので、レコーディングも時間をかけられなくて。でも今回の再録は時間をかけてこだわり抜いて探求したものなので。めちゃくちゃかっこいい仕上がりですね。

PEDRO

――実際聴いていても、同じ曲なのに、刹那的であるか、続いていくものであるかっていう違いが鳴ってる音から伝わってくる感じがあって。不思議だなって思いました。活動休止前のPEDROにはいい意味で刹那的なところがあったと思うんですけど、今はバンドとしての未来が見える感じがある。アユニさんとしてもそういう意識はあったんじゃないでしょうか?

アユニ:そうですね。自分は技術面ではまだペーペーですし、わからないことだらけですし、壁ばっかりなんですけど、いろいろ人生経験させていただいて、腹を括った中での制作だったので、そういうのも出ているでしょうし。あとはお二人が経験してきた音楽人生の厚みが出た再録だなって思いました。そこは、このお二人と演奏できたからこその強みなんじゃないかなと思います。

――この先はしばらく全国ツアーです。前にも田渕さんにツアーをやることでバンドが変わっていくという話を聞きましたが(※1)、この3人のPEDROが本当の意味でバンドになっていく過程はこの先にある感じがしますね。

田渕:ライブを重ねるとまた変わってくるでしょうね。

ゆーまお:楽しみですね。24本もライブできるんで。絶対変わりますよ。

アユニ:まるっきり違うことになってると思います。

※1:https://realsound.jp/2021/11/post-904584.html

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<締切:9月15日(金)>

■リリース情報
PEDRO
New Single『飛んでゆけ』
2023年8月23日(水)発売

ダウンロード/ストリーミング
https://lnk.to/PEDRO_ty

・初回生産限定盤
価格:¥11,000(税込)
形態:SG+Blu-ray+LIVE CD
<収録内容>
Single
01 飛んでゆけ
02 手紙
Blu-ray
LIVE MOVIE
2023.6.30 新代田Fever 「午睡から覚めたこどものように」収録
活動再開に向けたオフショット・インタビュー映像作品収録
Live CD
2023.6.30 新代田Fever 「午睡から覚めたこどものように」収録

・映像付通常盤
価格:¥6,600(税込)
形態:SG+DVD
<収録内容>
Single
01 飛んでゆけ
02 手紙
DVD
LIVE MOVIE
2023.6.30 新代田Fever 「午睡から覚めたこどものように」収録

・通常盤
価格:¥1,100(税込)
形態:SG
<収録内容>
Single
01 飛んでゆけ
02 手紙

■配信アルバム情報
New Album『後日改めて伺いました』
各種配信サービスで配信中
https://lnk.to/PEDRO_gaum
<収録曲>
01 さすらひ
02 人
03 魔法
04 吸って、吐いて
05 ぶきっちょ
06 死ぬ時も笑ってたいのよ
07 安眠
08 いっそ僕の知らない世界の道端でのたれ死んでください
09 万々歳
10 おバカね
11 雪の街

■公演概要
『PEDRO TOUR 2023 FINAL「洗心」』
2023年11月26日(日)開場 17:00 / 開演 18:00
会場:日本武道館
チケット料金:7,000円(税込)

◆PEDROモバイル会員先着先行
*FC限定チケット/数量限定/翌日(11/27)開催予定のスペシャルライブへの招待他、特典あり
【受付期間】8/25(金)21:00~8/26(土)23:59
◆PEDROモバイル会員先着先行
*FC限定チケット/翌日(11/27)開催予定のスペシャルライブへの招待他、特典あり
【受付期間】8/27(日)21:00~8/28(月)23:59
◆PEDROモバイル会員抽選先行
*通常チケット
【受付期間】8/29(火)12:00~9/1(金)23:59
◆チケットぴあ抽選先行
*通常チケット
【受付期間】9/2(土)12:00~9/6(水)23:59
https://w.pia.jp/t/pedro/
◆チケット一般発売日
*通常チケット
【受付期間】9/16(土)10:00~
https://w.pia.jp/t/pedro/

■ツアー詳細
『PEDRO TOUR 2023「後日改めて伺いました」』
8/27(日) Zepp Osaka Bayside【大阪】17:00 / 18:00
9/1(金) Zepp Nagoya【愛知】17:30 / 18:30
9/3(日) Zepp Fukuoka【福岡】17:00 / 18:00
9/7(木) Zepp Sapporo【北海道】17:30 / 18:30
9/9(土) 仙台GIGS【宮城】17:00 / 18:00
9/10(日) 新潟LOTS【新潟】17:00 / 18:00
9/15(金) 松山WStudioRED【愛媛】17:30 / 18:30
9/16(土) festhalle【香川】17:00 / 18:00
10/5(木) 青森Quarter【青森】17:30 / 18:30
10/7(土) KLUB COUNTER ACTION MIYAKO【岩手】17:00 / 18:00
10/8(日) 郡山Hip Shot Japan【福島】17:00 / 18:00
10/14(土) 岐阜CLUB ROOTS【岐阜】17:00 / 18:00
10/15(日) Live House浜松 窓枠【静岡】17:00 / 18:00
10/19(木) 広島CLUB QUATTRO【広島】17:30 / 18:30
10/20(金) CRAZYMAMA KINGDOM【岡山】17:30 / 18:30
10/22(日) 神戸Harbor Studio【兵庫】17:00 / 18:00
10/23(月) 京都FANJ【京都】17:30 / 18:30
10/28(土) 長崎DRUM Be-7【長崎】17:00 / 18:00
10/29(日) 熊本 B.9 V1【熊本】17:00 / 18:00
11/2(木) 函館club COCOA【北海道】17:30 / 18:30
11/4(土) 旭川CASINO DRIVE【北海道】17:00 / 18:00
11/5(日) 帯広MEGA STONE【北海道】17:00 / 18:00
※沖縄、東京公演は終了。

<チケット金額>
【通常チケット】¥4,800(税込・ドリンク別)
【通常チケット(2階指定席)】¥5,800(税込・ドリンク別)※Zepp公演・SENDAI GIGS公演のみ
【中高生無料チケット】¥0(ドリンク別)※9/7(木) Zepp Sapporo公演のみ対象

一般発売中:https://w.pia.jp/t/pedro/

PEDROオフィシャルHP

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