星野源、マカロニえんぴつ、BTS V、INI、AI、新しい学校のリーダーズ……注目新譜6作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は星野源「生命体」、マカロニえんぴつ「悲しみはバスに乗って」、V「Love Me Again」、INI「Moment」、AI「WORLD DANCE(feat.ちゃんみな)」、新しい学校のリーダーズ「狙いうち(50th anniversary special cover)」の6作品をピックアップした。(編集部)
星野源「生命体」
陸上選手の桐生祥秀、乃木坂46を卒業したばかりの齋藤飛鳥、世界的ダンサーのTHE D SoraKiなどが出演したMVも話題を集めている星野源の1年ぶりの新曲「生命体」。『世界陸上ブダペスト』『アジア大会 中国・杭州』のテーマソングとして制作されたこの曲のレコーディングには、星野源(Vo/Pf)のほか、mabanua(Ba/Pf)、石若駿(Dr)、武嶋聡(Sax)、コーラスとハンドクラップで長岡亮介、UAが参加。圧倒的な躍動感に溢れたゴスペル経由のR&Bサウンドもすごいが、しなやかな身体性に貫かれたメロディラインとボーカル表現は明らかに新機軸だ。〈自我の糸 解ける場所へ〉に象徴される、自分自身の意識を越えて、真の自由な状態へとリスナーを導くようなリリックも聴き返すたびに深みを増す。(森)
マカロニえんぴつ「悲しみはバスに乗って」
抑制と解放、悲しさと希望。メジャー2ndアルバム『大人の涙』のリード曲「悲しみはバスに乗って」は、アンビバレントな要素がナチュラルに共存する、多面的な魅力を備えた楽曲だ。冒頭は淡々としたビートと鍵盤、〈ぼくなら順調さ 心配は要らない〉。言葉の響きを活かした心地よいフロウとともに、今はいなくなってしまった“ばあちゃん”や“あいつ”に思いを馳せながら、まだまだ人生半ばの自らの現在をどこか俯瞰的に描き出す。いつか命は必ず尽きるけど、ぼくらは悲しみをバスに乗せて走るーーはっとり(Vo/Gt)の死生観が滲むこの曲は、『大人の涙』と題されたアルバムの中軸を担うことになるだろう。今どき珍しいフェードアウトのエンディングも、“Life goes on”感があってしみじみしてしまう。(森)
V「Love Me Again」
BTSのVによる1stソロアルバム『Layover』(9月8日リリース)の先行配信曲。ゆったりとしたチル系R&Bトラックのなかで、官能的な匂いをたっぷりと注ぎ込んだメロディが漂い、リスナーの心と身体を惹きつける。決して大仰にならず、感情の深い部分に訴えかけるような歌声からは、特に低音域、中音域の響きに注目すると、ボーカリストとしてのVの奥深い表現力を感じ取ってもらえるはずだ。もう一度愛してほしい、君がいなくて寂しいというストレートな歌詞も、20代後半になったVの色気を滲ませる歌声を際立たせている。同時に配信された「Rainy Days」は、雨の音、ジャジーなピアノ、聴く者に語り掛けるような等身大の歌が一つになったミディアムチューンだ。(森)