SO-SO、ソロアーティスト/DJとして提案するダンスミュージックの楽しみ方 ハウスフォーカスのEP『Red』を構築したアイデア
SO-SOはヒューマンビートボックスシーンに彗星の如く現れたマルチプレイヤーだ。世界大会『Grand Beatbox Battle 2019』のループステーション部門で前回王者を下し日本人初のトップ4入り、2021年にはRUSYと組んだSORRYとしてタッグ部門で1位、RUSY・KAJI・KoheyとのSARUKANIとして挑んだクルー部門で2位を獲得。今年の日本大会にもクルー部門への出場を控えている。
近年、SO-SOの存在感はバトルだけに留まらず、アーティストやDJとしても才能を発揮。先日リリースしたEP『Red』も独自の世界観でまとめたハウスミュージックが詰め込まれた作品だ。
今回は発表から約1カ月が経つ本作についてSO-SOが初めて口を開くインタビューをお届け。ロジカルに構築したという楽曲たちに張り巡らされる伏線を丁寧に回収していこう。(小池直也)
ソロのSO-SOとしてはSARUKANIとは別のプレゼンテーションをしていきたい
――先日、SARUKANIとしてのツアー『SARUKANI 2nd JAPAN TOUR 2023 "IROHANIHOHETO"』を終えたばかりですが、今はどうお過ごしですか。
SO-SO:ツアーが終わった後も制作がバタバタしていて、落ち着きません(笑)。ライブと制作は使う頭が全然違いますが、僕はパフォーマンスをする方が好きですね。曲は人前で演奏するために作っているので制作が過程、ライブが目的という感じ。「ビートボックスで自分を表現する」というよりも人を楽しませたいという思いの方が強いんですよ。だからSO-SOとしての活動では曲にメッセージ性があるというよりは、盛り上げることに重きを置いたスタイルですね。
――ではSARUKANIとソロ活動はどのように棲み分けを?
SO-SO:SARUKANIを始めた当初はこんなに大きなプロジェクトになるとは思っていませんでした。正直「Zeppでツアーをやってる……」という不思議な感覚です。僕のなかではソロ活動がメインで、SARUKANIはメンバーとのプロジェクトだと考えていますね。だから両者には違いを出し、別のプレゼンテーションをしていきたくて。ようやく最近は差別化ができてきた気がします。SARUKANIだったらマイクを持ち、ソロならDJやループステーションなどの機材も駆使する、みたいな。
――では、EP『Red』、そしてDJセットである『Red Mix』について聞かせてください。まず1曲目「Feel My House Groove」というタイトルが開幕宣言というか、このEPのすべてでもあると思いました。そもそも、なぜ「Red」なのでしょう。
SO-SO:今年は「Color EP Series」として作品をリリースするつもりで、本作はその第1弾となります。僕のキャラクターとしても“赤青黄緑”というイメージが強いのもあり、これまでもアルバムはマルチカラー、EPは単色というアートワークの区別をしてきました。そのなかでも最初にくるのが赤かなと。
あとMixバージョンを出したのは、僕がDJもできるということを知らない人が多いと最近感じたからでもありました。今回は東京タワーの見える場所で撮影した楽曲の動画もリリースして、世界観を出しながら、「DJもできます」という名刺代わりのつもりです。
――ハウスミュージックにフォーカスした理由も教えてください。
SO-SO:ジャンル毎にEPを作りたかったんですよね。日本では本格的なダンスミュージックは他の国に比べると馴染みが薄い。しかし、アンダーグラウンドなクラブミュージックをポップに昇華して多くの人々に届けたいという思いがあります。なので本シリーズでは、それぞれの音楽の楽しみ方を紹介しよう、と。なかでも4つ打ちは盛り上がりやすく、聴きやすいので第一弾にふさわしい気がしました。あとハウスのBPMは歩くテンポに近いので、散歩しながら聴くのもオススメです。
ビートボックスを始めてから、そういった音楽にハマったんですよ。特に自分でも作りたいと思ってからは歌やメロディだけではなく、ドラムやベース、コード進行を意識するなど聴き方が変わりましたね。僕の人生でいうとJ-POPを聴いていた期間が長いですが、濃度や密度でいうと圧倒的にダンスミュージックが大きいです。
――自身が一番影響を受けたアーティストは?
SO-SO:カナダでDJやプロデューサーとして活動するREZZですね。始めて聴いた時に「これだ!」と思いました。色々な音楽を紹介しているYouTubeがあって、そこでたまたま流れてきたんですよ。あとはスクリレックスも、ほぼすべてのジャンルの作品を作っているのでバイブル的な存在。ちなみに今はSpotifyやApple Music、SoundCloudで音楽を掘ることが多いです。
――本作もすべて自分の声で制作を?
SO-SO:だんだんと信じてもらえなくなっていますが、そうです。動画のコメントでも「自分も作っているのでわかりますが、これは音源ですね」という人もいて。本当に自分の声のみなので、信じてください(笑)。もちろんエフェクトもかけたりしているので完全な生音を使っているわけではないものもありますが、元の音はすべて自分の声です。
“伏線回収”を意識した作品づくり
――EP収録曲のなかで最初に制作した曲はどれでしょう。
SO-SO:「2023」ですね。去年から元旦に曲を作ろうと決めていて、完成したものに「20〇〇年」とつけています。去年作ったのがMix版にも収録した「2022」です。テーマは「時間」で、どれもBPM=120で時計(BPM=60、正確に言うと2倍)と同じテンポにしました。「2023」は去年作ったものよりも明るめな曲調で、コロナ禍が実質的に明けてきたという希望をメジャーキーで表現し、音色はシリーズ共通なものも多いですね。
ドロップ部分のレイドバックしたメロディは当時の僕の好みです。グリッドから外れていた方が乗りやすいというか、最近のダブステップだと拍に合わせないものが少し前からトレンドで、そこは意識しました。実際の作業はDAW上でファイルを後ろにズラして貼りつけていますが、ライブの時はシンセの部分だけ生演奏でパフォーマンスしてみたいですね。
――『Red Mix』には「Curiosity (from NHKアカデミア) 」も収録されています。
SO-SO:テレビ番組『NHKアカデミア』のために作りました。僕の曲をBGMに山中伸弥教授や椎名林檎さんが話すのが興味深かったです(笑)。きっかけはプロデューサーの方からの「知的好奇心を煽る曲にしてほしい」というオファー。僕の曲からはそういうエッセンスを感じるそうなんですよ。だから歌はピッチを上げて、子どもが興味深々な様子を〈I wanna know more〉といったフレーズで、音色は理科室をイメージしながら水泡の「ゴボゴボ」という音などを使いました。
――過去の「Interview 2.0」などをはじめ、SO-SOさんは英語のワードセンスがキャッチーで素敵です。英語も堪能なのですか?
SO-SO:英語は少しだけ。メロディに英語をはめる感覚は、普段から聴いている洋楽から来ていると思います。話者が多いので、一番広く伝わりやすい言語として使っていますね。日本語は美しいですが、英語は語呂がいいので音楽的にノリやすいというイメージ。言葉は「Curiosity」のようにテーマがはっきりしていると浮かぶのが早いですね。
――「時間」や「知的好奇心」といったテーマが音楽や歌詞などにまで波及していくのが興味深いですが、その創造力はどのように培われたのかが気になります。幼少期劇団に所属していたことも関係しているのかなと。
SO-SO:僕はアニメが好きで、特にコロナ禍になってからハマっているのですが、「伏線回収」を自分の作品でもやりたいと考えることが多いです。聴けば聴くほど「だからこの音を使っているのか!」と分かってもらえるような、ロジカルに作るのが好きですね。YouTubeの動画でも仕掛けをよく仕込んでいて、コメントで正解の人にハートを押してます。
劇団に入っていた頃は「エチュード」という即興芝居が得意でした。瞬時に自分が誰か、何歳でどこにいるのかを考えて伝えるプロセスを重ねた経験は、今の世界観の構築方法と関係あるかもしれません。あとは中学生の時は美術部でマンガも描いていたこともあって、小さい時から何かを作ることが大好きでした。