石崎ひゅーい、出会いによって研ぎ澄まされたポップスの醍醐味 『宇宙百景』は10年分の想いを届ける手紙のような1枚に

石崎ひゅーい、手紙のような1枚

 石崎ひゅーいが5thアルバム『宇宙百景』を7月26日にリリースした。

 『宇宙百景』はメジャーデビュー10周年の集大成として制作されたアルバム。アルバムから先行配信された「邂逅」は石崎が敬愛する槇原敬之からの提供曲で、石崎が自身のSNSアカウントで楽曲制作中のLINEでのやりとりを公開したり、紙にマッキー(油性ペン)で“邂逅”と書く動画をアップしたりとヒントを小出しにしていたものの、まさか槇原が石崎に曲を提供する日が来るなんてと驚いたファンがほとんどだったろう。

 さらにアルバムでは、これまでにも共演やコラボ経験がある盟友・尾崎世界観(クリープハイプ)や、“師匠のような存在”としてリスペクトする(※1)長澤知之からの楽曲提供も実現した。槇原の「大好きなアーティストである石崎ひゅーい君に楽曲を提供する機会をいただき、本当に嬉しかったです」「彼の声が僕の声には無い素敵な響きをもっている事と、最近彼のヴォーカルがアップデートした様にも感じていたので、その声で歌ってほしい曲を作ってみました」(※2)というコメントから窺えるのは、同業のミュージシャンの創作欲を喚起するほどの魅力が石崎の音楽にはあるということ。思えば石崎の歌やソングライティングは以前からアーティストや俳優をはじめとしたクリエイターからの支持が厚く、中には、ツアー『、&』東京公演で共演したあいみょん、「花瓶の花」がこの世で一番好きなラブソングだという菅田将暉のように(※3)、石崎から影響を受けていると公言する人も出るほどだった。今回、豪華ミュージシャンによる楽曲提供が実現したのは、いわば“ミュージシャンに愛されるミュージシャン”である石崎ひゅーいのアルバムだからこそだろう。

石崎ひゅーい - ワスレガタキ / Official Music Video

 『宇宙百景』には他アーティストからの提供曲に加え、石崎が菅田に提供した「虹」「ラストシーン」や、矢部浩之(ナインティナイン)の歌手デビュー曲として提供した「スタンドバイミー」のセルフカバーも収録。石崎がこれまで出会ってきた人たちとの“縁”から生まれた楽曲が収められた。自作の新曲「宇宙百景」で〈たった一つの出会いの中に/僕は百の景色を見たんだ〉と歌っているように、一つひとつの出会いから刺激を受けながら、自由に、いきいきとイマジネーションを膨らませる石崎の姿がこのアルバムに刻まれている。

崎ひゅーい 5th Full Album『宇宙百景』/ 全曲Trailer

 また、石崎がこの10年で出会ったのはミュージシャンの仲間だけではない。アルバムは〈今僕の机の上には/タバコとサプリと落書きのメロディ〉と曲作り中の描写から始まるが、おそらく1曲目の「宇宙百景」はこの10年で出会ったリスナーに宛てた曲だろう。今年開催されたライブシリーズ『キミがいるLIVE』のタイトルに合わせて、二人称が〈キミ〉という表記になっていることからもそう読み取れる。メジャーデビュー曲「第三惑星交響曲」と同様、星や宇宙をモチーフとした曲であるのもポイント。何万光年も離れたところにあるのに、いつでも私たちを見守ってくれている星と同じように、音楽も、時間や距離を飛び越えて、聴く人の心に寄り添うことができる。そんな想いの下、音楽に希望を見出そうという意思はこれまでの楽曲でも歌われたが、この「宇宙百景」には〈見上げてごらん そばにいるよ〉というフレーズが。10年分の経験を重ねた今の石崎だからこその、やわらかくも無駄のない、奥深くも普遍的な言葉選び。その上で、〈欠片を不揃いに並べても/けして綺麗とは呼べないかな?/それでいいよと笑いながら受け取っておくれ/そして会いにいくよ〉と自身の気持ちも素直に歌っている。

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