連載「lit!」第59回:Ayase、エイハブ×A4、Ado×ユリイ・カノン……夏のボカロイベント開催を前に聴きたい注目曲

「ラグトレイン」ボカロP16人でアレンジしてみた

「ラグトレイン」ボカロP16人でアレンジしてみた

 アレンジキャラクターとしてのCM起用も話題となった歌愛ユキだが、実はVOCALOIDとしての誕生は2009年と意外にもその歴史は長い。小学生女児の声というコンセプトにやや似つかわしくない擦れを帯びた退廃的な響きに近年はフォーカスが当たることも多く、彼女のそんな歌声の魅力が堪能できる代表曲のひとつとして、やはり稲葉曇「ラグトレイン」の存在を欠かすことはできないだろう。本作の投稿3周年の節目に際して制作された、今回のアレンジリミックスメドレーに名を連ねるボカロPは16名。活動歴の浅いクリエイターも多い一方で、創意工夫の凝らされた各パートには才能の原石独特の粗削りさと煌めきを感じさせる側面も。こういった場における新たな才覚の発掘もまたシーンの一興だ。

Ado×ユリイ・カノン「アタシ×I×MY∴理想論」

Ado×ユリイ・カノン「アタシ×I×MY∴理想論」

 2023年7月初旬に開催された投稿祭企画『ボカデュオ2023』に際し制作された1曲。すでにシーンを越えたネームバリューを誇る両者のタッグであることはもちろんだが、今作においてはAdoが自身の歌唱でなくVOCALOID・初音ミクの調声担当という異色のクレジットで携わったことも特筆すべきポイントだ。Adoによる初音ミク調声作品は実は今回が初ではなく、昨年投稿された自身の歌唱も交えた平田義久「東京は夜」カバーに続き今作で2作目となる。唯一無二の声でなくとも確かにAdoイズムを感じさせる初音ミクの調声と、元よりダークで音圧の高い世界観を得意とするユリイ・カノンの楽曲の相性の良さは言わずもがな。シンガー・Adoの普段とは異なる一面も、作品を通じて楽しむことができる。

初音ミクの海外人気はどのように確立された? ジョナス・ブルー、ポーター・ロビンソンらの楽曲に見るボカロとの親和性

いまや日本発の音楽カルチャーを代表する存在となりつつある初音ミクとボーカロイド。初音ミクの海外コンサートシリーズ『MIKU EX…

きくお×クリプトン佐々木渉『VRUSH UP!』シリーズ対談 多方面なカルチャーと有機的に結びついてきたボカロシーンの変遷

2013年にCDリリースされた、特定のボカロPの楽曲を様々なクリエイターがリミックスした企画作品『VRUSH UP!』シリーズ、…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる