音楽原作プロジェクト『響界メトロ』、“少年”の登場でスリリングな展開に 6月配信曲から紐解く、物語とリンクした歌詞の謎

『響界メトロ』6月配信曲を紐解く

 2023年2月に始動した、音楽原作プロジェクト『響界メトロ』。“「声優」「歌い手」と「ボカロP」のタッグでおくる音楽でストーリーを紡ぐプロジェクト”と銘打ち、ボーカルとCVは声優の内田真礼、秋奈、そして歌い手のkonocoが担当。コンポーザー陣にはGiga & TeddyLoid、じん、Chinozoなどボカロ/ネット音楽シーンで活躍する作家名を連ねている。

 6月は「青春は亡霊 feat. イツカ(CV:秋奈)」「Q&[ ] feat. カナタ(CV:わかばやし)」と新たに2つの楽曲/MVが公開。秋奈演じるイツカが歌う「青春は亡霊」についてはこれまで同様、楽曲とキャラクターにまつわるショートボイスストーリーも公開された。もう一曲の「Q&[ ]」は、オーディションでカナタ役を掴んだ歌い手のわかばやしが歌っている。オーディションはTikTokでの1次審査、オンライン面接での2次審査、最後にスタジオでの歌唱審査を通して行われ、結果は5月22日に発表された。

 今回はこの2曲にフォーカスする形で、『響界メトロ』6月の進展を振り返りたい。

 「問題。誰かの役に立つことが、願いであってはいけないか。」という“出題”とともに公開された「青春は亡霊(読み:あおはるはぼうれい)」。作詞は既発表曲と共通してRUCCAが、作曲は「グッバイ宣言」などを代表作とするボカロP・Chinozoが担当した。

 この曲の展開もさることながら、歌詞の内容やMVの描写に驚かされたファンは多いだろう。というのも歌詞は幽霊目線の内容となっており、MVのイツカの頭には輪っかが浮かんでいる。この急展開を象徴するように、楽曲も先の読めない構成が続く。チルアウト系のAメロから、オーケストラ曲の前奏のようなロールドラムが印象的なBメロで少し怪しげな空気を演出。サビでは一気に盛り上がるオケに対して、四七抜きの和風なボーカルラインが際立つ。透き通る秋奈の歌声と、成仏していく幽霊視点の歌詞、和メロがマッチして、消えてしまいそうな切なさを感じさせる楽曲に仕上がった。

青春は亡霊 feat. イツカ(CV:秋奈)【Music Video】

 6月20日放送の「響界メトロ ミニ生放送(キャスト:秋奈)」(※1)で明かされた、本楽曲の制作エピソードを1つ紹介したい。レコーディングはかなりスムーズに終わり、サウンドプロデューサーの廣澤優也(HANO)はその後、収録できたボーカル音源に合わせて、再度楽曲へアレンジを加えていったことを明かしている。完成音源を聴いた秋奈は、自分の知っているオケと全然違うことに驚いたそうだ。

 前回のコラム(※2)で書いた通り、『響界メトロ』の楽しみ方はまず楽曲を聴き、その後投稿されるショートボイスストーリーでストーリーを読み解いていくことだ。今回のショートボイスストーリーを見てみると、イツカがいる学校は「大災害」による地縛霊の巣窟であることが明かされる。メトロの謎を追うカナタと出会い、念願だった文化祭を成功させたイツカは、級友たちとともに成仏する。

 こうしたストーリーを読んだ後に再度楽曲を聴いてみることで、〈私だけを 置いて行かないで〉〈次に出逢えることがあったら/やっぱ君とは ともだちに…なりたい〉といった歌詞にまた違う深みを感じられることだろう。

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