モーニング娘。やAKB48を育てたダンスプロデューサー・夏まゆみが残した功績と受け継がれる伝統

 6月21日、モーニング娘。やAKB48を育てたダンスプロデューサーの夏まゆみが、がんのため亡くなった。夏はこれまで、300組を超えるアーティストの振り付けなどを考案。キャッチーで覚えやすく、楽曲の世界観を的確に表現した振り付けで、多くの楽曲やアイドルグループの爆発的なヒットに貢献し、日本のアイドル文化の拡大に一役買ってきた。

 本稿では、そのような夏の功績をあらためて振り返りながら、彼女が日本の音楽シーンやアイドルシーンに残したものに思いを馳せたい。

 イギリスへの留学をきっかけに、ヨーロッパやアジア、北米、南米で多様なジャンルのダンスを習得してきた夏。彼女はその圧倒的な数の引き出しをもとに、多彩な振り付けを生み出し、多くのヒット曲誕生に貢献してきた。

 夏はこれまで、本当にさまざまなアーティストの振り付けを手がけてきたが、そのなかでも特に代表的なのは、モーニング娘。とAKB48だろう。

 モーニング娘。には、立ち上げ期のメンバー育成から携わり、メジャーデビューシングル「モーニングコーヒー」の振り付けも担当。特に、社会現象となった「LOVEマシーン」は、彼女のダンスプロデュースの真骨頂と言っても過言ではない。イントロの異国風の動きを取り入れたダンスは、意識せずとも目線が思わずステージに向いてしまうパワーを持っているし、〈EVRY BODY〉の部分はリズムとサウンドをしっかりと捉えた振り付けが非常にクールだ。

モーニング娘。 『LOVEマシーン』 (MV)

 その一方で、サビのダンスは誰もが覚えやすく、真似しやすい。この楽曲が流行った当時、筆者は小学生だったが、休み時間のたびに同級生が〈日本の未来は(Wow×4)/世界がうらやむ(Yeah×4)〉と歌いながら、L字型の形を作った手を振り上げて踊っていた姿を、今でもよく覚えている。当時はYouTubeなどがなかったため、動画による社会への拡散は起こらなかったが、このように子どもたちがそこかしこで踊っていたという現象は特筆すべきであり、“踊ってみた動画”が当たり前となった現在のカルチャーの基盤を作ってきたと言えるかもしれない。

 「恋愛レボリューション21」も、イントロで観客の目線を集めつつ、〈泣いちゃった〉〈腹へった〉の印象的なフレーズでわかりやすい振り付けを用い、歌詞の世界を的確に表現。そして、かわいいだけではない、かっこよくて美しい、10代~20代の女性が持つ魅力を存分に引き出したダンスで、同楽曲のヒットに貢献した。

モーニング娘。 『恋愛レボリューション21』 (MV)

 また、〈恋をするなら この次は/あんた名義の恋をしな〉という歌詞が印象的な「シャボン玉」では、ダークでクールなサウンドのなかで、恋愛を前に大きく揺れ動く女心を、頭を振る、足を蹴り上げる、何かを求めるように手を差し伸べるといったダンスで表現。モーニング娘。'23のメンバーに今なお歌い継がれ、ライブで盛り上がる名曲として親しまれる礎を作ったと言えよう。

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