chilldspot、全国各地のステージを経たバンドとしての成長 オーディエンスと心を一つにした『Road Map』ツアーファイナル

chilldspot、2ndワンマンツアーファイナルレポ

 今年5月に2ndフルアルバム『ポートレイト』をリリースした4人組バンド・chilldspotが、ワンマンツアー『chilldspot 2nd One Man tour “Road Map”』を開催。6月29日に東京・恵比寿LIQUIDROOMにてファイナル公演を行った。

 本ツアーは5月9日、東京・渋谷CLUB QUATTROを皮切りに13カ所14公演で行われたもの。全国各地をまわり、自分たちの拠点・東京へ戻ってきての言わば「凱旋公演」となるこの日、数々のステージをこなしたくましく成長した彼らの勇姿を見ようと会場は多くのオーディエンスで溢れかえっていた。

 定刻となり、まずは玲山(Gt)の歪んだギターがボサノヴァ調のリズムを刻む、アルバム『ポートレイト』の冒頭曲「crush」からこの日のライブはスタートした。少しハスキーな比喩根(Vo/Gt)のアルトボイスが響きわたり、思わず息を呑む。抑制の効いたそのアンニュイなボーカルが、バンドアンサンブルの緩急に反応しながら熱を帯びると、フロアのボルテージもそれに合わせて次第に上がっていくのが分かる。一方ギターソロでは玲山が単音の速弾きをしながらペグをぐりぐりと回転させ、まるで時空がねじ曲がったような光景を目の前に展開させてみせた。

 「ありがとうございます」とクールに挨拶を済ませ、すかさず演奏した「Heart Jack」では一転、キュートなハイトーンボイスでオーディエンスを魅了する比喩根。赤いレフティのエレキギターを抱えたその姿も印象的だ。2022年の3rd EP『Titles』に収録された「Ivy」は、小﨑(Ba)とジャスティン(Dr)が繰り出すヘヴィかつソリッドなリズムセクションの上で、エッジの効いた比喩根のバッキングギターとフリーキーな玲山のリードギターが絡み合う。おそらくPixiesあたりのUSオルタナに影響を受けて作られた楽曲だが、そこに比喩根のソウルフルな歌声が乗ることで、chilldspotならではのオリジナリティを獲得している。まるで獣の咆哮を彷彿とさせる、玲山によるエモーショナルなギターソロが宙を切り裂くと、会場からは大きな歓声が上がった。

 また「music」では、音数を絞り込んだソウルフルでグルーヴィーなバンドアンサンブルの上で、ファルセットを巧みに織り交ぜながらメロウな旋律を狂おしく歌い上げる。続いて披露した「line」は、サビで披露する比喩根の伸びやかなハイトーンボイスはもちろん、楽曲の展開に合わせてラップとボーカルの合間をスムースに行き来し、猫の目のように歌のニュアンスを変えていくスキルが圧巻だった。

「次はアルバム『ポートレイト』から、爽やかでキラキラした楽曲を聴いてください」

 そう言って披露したのは、「Girl in the mirror」。〈他人の中に潜んでる私の目〉、つまり自分自身が勝手に作り出した「鏡」を壊して自由になろうと訴えかける、ガールエンパワメントな要素もあるメッセージソングだ。ギターをザクザクとかき鳴らしながら、「自信を持って!」と叫ぶ比喩根の姿に思わず熱いものがこみ上げる。かと思えばチルアウトな「夜の探検」を経た「supermarket」では、オーディエンスに難易度の高いハンドクラップを無茶振りしつつ、コール&レスポンスも同時に要求して会場をざわつかせるお茶目な一面も。新人とは思えぬくらい、ボーカリストとしての圧倒的な表現力でバンドを牽引しながら、飾らない天真爛漫な姿を曝け出す彼女が同性から圧倒的な支持を得ているのもうなずける。

 もちろん、そんな比喩根の魅力を引き出すバンドの演奏力、アレンジ能力も見逃せない。ストロボライトが4人を照らし出す「full count」では、ディスコ調のダンサブルなアンサンブルを披露。そして間髪入れずに演奏された「please」では、The Strokesを思わせるようなタイトなシャッフルビートと乾いたギターアンサンブルが、コブシを効かせた比喩根のボーカルを盛り上げた。

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