chilldspot、音楽を鳴らす楽しさに満ちたステージ 『around dusk』楽曲もいち早く披露したLIQUIDROOMワンマン

chilldspot、LIQUIDROOMワンマンレポ

 chilldspotが3月5日、『One man live "around dusk"』を恵比寿LIQUIDROOMにて開催した。昨年10・11月に行われた初ワンマン&追加公演、そして前月の梅田CLUB QUATTRO公演を経て行われたバンドにとって4度目のワンマンライブだ。

 chilldspotは比喩根(Vo/Gt)、玲山(Gt)、小﨑(Ba)、ジャスティン(Dr)からなる4人組バンド。結成は2019年12月で、高校在学中の2020年11月に1st EP『the youth night』を、そして2021年9月に1stアルバム『ingredients』を発表している。Spotifyの「RADAR:Early Noise 2021」やYouTube Musicの「Foundry」 に選出されるなど、飛躍が期待される新人として今注目されているバンドだ。この日のフロアもchilldspotの魅力にいち早く気づいたファンたちによって満たされていて、メンバーがステージに出てきた時の熱い拍手から観客の高揚感が伝わってきた。

 chilldspotのメンバーは4人とも2002年生まれ。ストリーミング配信が浸透した2010年代に思春期を過ごし、あらゆる国籍・時代の音楽をフラットに吸収してきた世代だ。R&B、ファンク、ソウル、ブラックミュージックなど様々な背景を感じさせる音楽性はそういった環境も相まって育まれたもの。グルーヴィーでメロウなサウンドに“10代らしからぬ”とうっかり言いそうになるが、むしろ時代の申し子的なバンドがいよいよ現れたと言った方が正しいかもしれない。

 さて、この日のライブタイトルは「One man live"around dusk"」。3月30日にリリースされるEP『around dusk』と同名であり、リリース前の新曲含め、EP収録曲が全曲披露された。早速1曲目は、昨年11月に配信され同EPにも収録される「music feat.LINION」。とはいえ、音源と同じような流れで曲が始まるのではない。比喩根の歌をきっかけに手拍子が起こると、手拍子と同形のリズムのリフをメンバーが鳴らし始め、やがてセッションへと結びつく。バンドサウンドがクレッシェンドしていった先で比喩根が「chilldspotです。今日はよろしくお願いします!」と挨拶。その後テンポを一気に落とし、耳なじみのあるギターカッティングから「music feat.LINION」が始まった。

chilldspot(写真=domu)

 そんなオープニングも象徴的だったが、全体的にライブアレンジを積極的に施すタイプのバンドのようだ。この日のライブでは、生ならではの偶発性を面白がりながら、みずみずしい感性で以って音楽をいきいきと楽しむ4人の姿を確認することができた。ライブの在り方としては“アグレッシブな演奏で内なる衝動を解放させる”といったいわゆるロックバンド的な感じではなく、ジャズをはじめとした即興芸術のそれに近い。例えば、細やかなハイハットワークが光るジャスティンは、ジャズマナーをはじめとしたクラシカルな要素を上手く取り入れながらユニークなドラムを叩いているし、「未定」の間奏で「Sing, Sing, Sing」を引用する遊び心もジャズに根ざしたアプローチと言えた。

 仮に即興芸術的な意識が根底にないとすれば、リードギターの佇まいもあのようにはならないだろう。例えば「ネオンを消して」は、ギターがある種バンドから独立しながら、泳ぐように独奏する様が印象的だったのだ。そんなギターを弾く玲山はジャズがルーツにあるかと思いきや、過去のインタビューで名前を挙げているのはRADWIMPSやBUMP OF CHICKENといった邦楽ロックバンドで、むしろジャズをルーツに挙げているのは他のメンバーなのがこのバンドの面白いポイント。4人が互いに作用し合いながら、あるいはバンドの外にあるものも貪欲にインプットしながら、現在のchilldspotの音楽性が形成されたことが演奏を聴いているとよく分かる。逆に言うと、だからこそ、若い彼らはここからもっと変わっていける可能性も秘めている。

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