リアルサウンド連載「From Editors」第11回:『ウルトラマンブレーザー』前に観たい! 『UNFIX』は特撮センス満載の逸品

『UNFIX』のハード&コミカルな作風は『ブレーザー』への予習に?

 『UNFIX』では、ウルトラマンシリーズのように派手な事件が起こるわけではなく、日常の中で地球外生命体と接したり、調査していく過程がドラマ性重視で描かれます。だからこそ光るのが会話劇のシーンなんですね。居酒屋で宇宙人を説得するシーン、自衛隊員が慣れない合コンに出かけるシーン、任務の空き時間に屋上で流しそうめんをしたり、ストレッチしたりするシーン、輸送車の中で食べる冷えた昼食に文句を言うシーン、宇宙人と団子を食べるシーン……など、特外隊としてのハードな任務以上に、印象に残るのはそういったシュールでクスッと笑えるシーンだったりします。どこまでが脚本で、どこまでがアドリブなのかわからない第4話「ソレの名は」では、そうしたシュールさが爆発していて本当に最高です。

『UNFIX』第4話「ソレの名は」

 しかし、ダラッと物語が続くのではなく、日常の裏で着実に宇宙人の陰謀が進んでいきます。少しずつ隊員の周りに危険が迫っていく過程はゾクゾクするし、『仮面ライダーアマゾンズ』を彷彿とさせるような突入シーンは抜群にカッコよく、第12話あたりでは『クローバーフィールド/HAKAISHA』を思い出したりもしました。田口監督ほどセンスのある方が作り、小柳さんの知見も入ることで、低予算の自主制作でもここまで面白いものが作れるんですね。

 こうしたシリアスとコミカルのバランスは、『ウルトラマンブレーザー』でも期待できそうです。そういえば、『ウルトラマンブレーザー』のテーマは“コミュニケーション”だと明かされていますが、こうした会話劇主体で“組織と人間”にフォーカスした特撮作品は、田口監督が手がけておきたいものだったのかもしれません。

 『UNFIX』は1話あたり10分ほどで観られる点もオススメですし、青柳尊哉さん、ねりお弘晃さん、しおつかこうへいさん、須藤叶希さん、百川晴香さんなど、田口監督と所縁のあるウルトラマンシリーズキャストたちの活躍も見どころ。田口監督が『ウルトラマンZ』の制作に突入した2020年以降は更新がストップしており、いいところで物語も止まっているのですが、監督曰く近々再開されるとのこと(※1)。『ウルトラマンブレーザー』同様、『UNFIX』の進展にも期待しておきましょう!

『UNFIX』特報2020

※1:https://twitter.com/TaguchiKiyotaka/status/1668532860503097344?s=20

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