椎名林檎、演出家 根本宗子との対談に表れた“ものづくり”の核心 デビューから25年経ってもブレない音楽への思い
演奏も圧巻だった。名越由貴夫(Gt)、鳥越啓介(Ba)、林正樹(Pf/Key)、佐藤芳明(Acc)、石若駿(Dr)という屈強なバンドメンバーと共に、1曲目は着物姿で「私は猫の目」を披露。2曲目は、林原めぐみに提供した「命の息吹き」を、チュチュのついたドレス姿でセルフカバー。そして、3曲目は根本が対談で「自分で作ったものが床に捨てられてしまう、みたいな想いになったときに『ありあまる富』を作ってくださってありがとうございます(と思った)」と語った「ありあまる富」。
根本の言葉を踏まえながら歌詞をかみ砕くと、ひと言ひと言が五臓六腑に染み渡る。〈もしも彼らが君の何かを盗んだとして/それはくだらないものだよ/返して貰うまでもない筈/何故なら価値は生命に従って付いている/ほらね君には富が溢れている〉――自分自身が表現するものこそが富、もっと言えば、自分自身で在ることが富、そう私は受け取った。まるで、ものづくりの方向性に行き詰まったとき、もしくは、生きていく道に迷ったとき、そっと姿勢を正してくれる歌、というような。椎名林檎自身も、この姿勢を大切にしながら、25年間を生き抜いてきたのではないだろうか。だからこそ、彼女の歌は、表現こそ様々に変われど、まっすぐに響いてくるのだと思う。
「ありあまる富」の最後、ありったけの感情を込めて歌い終えたような表情で椎名は深々と頭を下げ、高々と手を挙げて、バンドメンバーより一足先に帰っていった。石若の華麗なドラミングや、名越のディストーションギターが響き続けるなか、苦しみながら、喜びながら、一貫して誇りを持ってものづくりを続けてきた彼女の歩みに想いを馳せた。その信念に触れられる、スペシャルな番組だった。

























