After the Rainの2人が“春音”とともに迎えた新しい季節 ダイナミックな演出でも沸かせたさいたまスーパーアリーナ公演

After the Rain、たまアリワンマンレポ

 有観客による“オフライン”ライブは2019年8月開催の『After the Rain 2019~真夏のそらまふ大発生!!@富士急ハイランド~』以来、実に3年8カ月ぶり。しかも、様々な規制が緩和され、声出しが解禁されたタイミングだ。After the Rainの最新ツアーとなった『After the Rain Tour 2023 - 春音 -』。それはまさに、そらるとまふまふの2人がユニット名に込めた意味を象徴するように、辛い我慢の時が明け、新たな始まりを鮮やかに告げるライブとなった。

 全4公演となるツアーの初日、4月30日のさいたまスーパーアリーナ(スタジアムモード)は約2万8000人の観客で埋め尽くされていた。期待を煽るオープニング映像に続き、10からのカウントダウンがスタートする。数字が0になった瞬間、大歓声に導かれてそらるとまふまふがステージに登場。1曲目「セカイシックに少年少女」から圧巻のパフォーマンスを見せながら、人懐っこく手を振ってみたり、激しく煽ってみたりと、会場を心地よく掌握していく。広大なステージを端から端まで移動し、隅々にまで極上の歌を届けた「アイスクリームコンプレックス」を経て、最初のMCへ。緊張と感動からか瞳を潤ませながらきっちり挨拶をするまふまふに対し、「固いな! ビビッて泣いてた? 俺はサイコー! って感じなんだけど」とそらるが余裕を見せる。その微笑ましいやり取りに会場が大きく沸く。

「今まで溜まってた鬱憤をまとめて全部吐き出して、俺たちにエネルギーをぶつけて、最後まで楽しんで帰ってください!」(そらる)

 続くパートでは「装備アイテムとして、こいつがないとね」と嬉しそうなまふまふと、「俺は不慣れなんだけど」と困り顔のそらるが2人揃ってギターを抱え、ロックテイストのナンバーを連発していく。無数の炎が立ち上る中、ヘビィな表情を見せつけた「負け犬ドライブ」。桜の映像とともにセンチメンタルなボーカルを届けた「10数年前の僕たちへ」。切なさを秘めた疾走ロック「夏空と走馬灯」。心の琴線を揺さぶる強力なメロディが光る「わすれられんぼ」と、多彩な表情をもった楽曲で会場の熱量をぐいぐいと高めていく。

  「みなさんに1曲プレゼントがありまして」というそらるの一言に続いて初披露されたのは、未発表曲「ナイトクローラー」。そらるがハンドマイクで客席を煽り、まふまふはギターをかき鳴らしながらスタンドマイクで最高の歌声を響かせる。

 中盤からは「恋の始まる方程式」「モア」「アイスリープウェル」「四季折々に揺蕩いて」といったAfter the Rainの人気曲が立て続けにプレイされていく。楽曲の根幹を支える力強さを持ちながらも、端々に切なさや憂いのニュアンスを秘めたそらる。時に叫ぶような歌を放ったかと思えば、儚げな表情で聴き手の胸を締めつけるまふまふ。真逆とも言える2人の歌い手としての個性が1曲の中で融合していくことで、楽曲の世界、そしてAfter the Rainとしてのライブは無尽蔵な広がりを見せていく。

 バンドによるインスト「コンティニュアム」を挟み、ライブは後半戦へ。衣装チェンジをしたそらるとまふまふの2人はメインステージから伸びた長い花道を楽し気に歩きながら、キャッチ―なポップチューン「1・2・3」を歌っていく。向かい合った2人が〈キミにきめた!〉のフレーズを叫び合うラストで観客のテンションは大きく跳ね上がる。ジャジーな雰囲気を纏った「ネバーエンディングリバーシ」に続き、「脱法ロック」ではそらるとまふまふがそれぞれクレーンに乗り込み、アリーナの上空をゆっくり旋回しながらパフォーマンス。本ツアー随一の大規模会場ならではのダイナミックな演出に大きな歓声が沸き上がった。

 高所での歌唱を経て、「ちょっと怖かった……」とビビるそらるに対して、「次からヤダなと思ったら言ってください。ナシにできるから」と余裕をかますまふまふ。ライブ冒頭での立場がコロッと逆転していたのが可笑しい。その後は「脱法ロック」に続き、“歌ってみた”シリーズとして「ロキ」をカバー。目に見えるほどの猛烈な熱気を生み出し、ライブはいよいよクライマックスへと突入していく。和の雰囲気を感じさせる幻想的な世界を生み出した「折り紙と百景」。エモーショナルなロックサウンドの上で春の季節を彩る切ない物語を紡いだ「夕刻、夢ト見紛ウ」。そして、ステージ後方のスクリーンに大きな満月が浮かび、客席がペンライトのピンク色で染まる中、言葉ひとつ一つを丁寧にメロディへとのせ、美しい感情とともに観客一人ひとりの胸へと届けた「桜花ニ月夜ト袖シグレ」でライブ本編は幕を閉じた。

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